ホテルに荷物が先に到着
旅行の際のパッキングの悩みが、近年、数多くのアプリやサービスを生み出してきた。その多くは、靴下や携帯電話の充電器など忘れ物を防ぐためのチェックリストが欲しいというユーザーのニーズに応え、成長している。
だがいま増えているのは、ユーザーのスケジュールやクローゼットにまで入り込む、よりパーソナルなサービスだ。
パッキングをすべて行い、スーツケースをホテルに届けてくれるコンシェルジュサービスもある。空港のベルトコンベヤーから流れてくるスーツケースを引き上げる必要もなく、空の旅につきまとうストレスを抱えることもない。
カリフォルニア州テメキュラで心臓疾患の研究をしているデビ・マッコールは、コンシェルジュサービスを提供している「DUFL(ダフル)」を初期から利用している。
気に入っているのは、化粧品をそのままの容器で旅先に持っていけることだという。DUFLは愛用しているフェイスクリームをいつもの容器のままパッキングしてくれる。
年に何十回と出席する医療関係のカンファレンスの際には、ホテルにチェックインすると自分の荷物がすでにフロントデスクに届いているという。
DUFLの利用料は往復旅行1回につき99ドル。服などを保管するストレージ代が月9.95ドルだ。
ユーザーは自分のスーツケースにパッキングする必要がなく、DUFLに任せればいい。
2015年にサービスを開始した同社は、現在は保管用倉庫を3つの都市に構える。ユーザーの服を洗濯し、アイロンをかけ、化粧品や洗面道具をパッキングするスタッフは30人いる。
(Caitlin O'Hara/The New York Times)
旅行は1960年代のまま
利用者は旅が近づいてきたら、DUFLのウェブサイト上かアプリで同社のストレージにある自分のクローゼットの中から必要なものを選ぶ(全アイテムの写真がアップロードされている)。すると、DUFLが選ばれた服を洗濯もしくはドライクリーニングして、パッキングしてくれる。
マッコールいわく、好き放題買い物をしているような感覚だ。「すべてが紙に包まれていて、いつも小さな試供品を入れてくれる」
DUFLの代表のビル・ラインハートが同社を創業したのは、IT企業家として出張の機会が多く、自分自身が煩わしさを感じていたから。
「自分の荷物を航空会社に預けるのは絶対に嫌だったので、いつもこの大きな赤のバックパックを持ち歩いていた」と、ラインハートは言う。
アリゾナに暮らすラインハートは、金曜日に出張先のニューヨークから自宅に戻り、翌週の月曜日にまた東海岸に出張するまでに、衣服を洗濯しなければならないときの慌ただしさについて語った。
「もっといい方法があるはずだ。今は電話を使ってほぼすべてのことが手に入れられるようになった。だが、旅行となると1960年代のまま。改善されたのはかばんに車輪がついただけで、それ以外は手間がかかる」
そうしてDUFLが誕生した。
ユーザーは洗濯やパッキング、荷物のチェックインのために列に並ぶ時間を省けるため、3~5時間を節約できるとラインハートは言う。同社のユーザーの90%はビジネスでの旅行者だ。
ラインハートによると女性ユーザーは全体の35%程度とみられ、高い支持を得ている。ヘアドライヤーに枕、その他の持ち物を定額料金でパッキングできるのは、男性よりも女性にとってありがたいからだという。
パッキング嫌いの旅行者が利用できる荷物のコンシェルジュサービスは他にもある。
マッコールは以前、「Luggage Forward」というサービスも利用したが、クリーニングや洗濯を自分でしなければならなかったのでやめたと話す。UPSのサービスも試したが「料金がとても高かった」と振り返る。
(Caitlin O'Hara/The New York Times)
行き先と日程でチェックリストを自動作成
誰かにパッキングをしてもらうためにお金を払うことは、旅行を頻繁にしない人にとっては現実的ではないかもしれない。月額料金を支払い、保管するための服も用意しなくてはならない。
そして、パッキングのストレスから解放されるためにコンシェルジュサービスを利用するのは、無駄遣いのように思えるだろう。
そんな人たちが利用しているのが、「PackPoint」などのアプリだ。
同社の創業者のベン・ギレンウォーターによると、2013年にこのアプリを開発し、昨年はユーザー数が210万人に達したという。ビジネス旅行者をターゲットにしたプレミアム版アプリ(2.99ドル、通常版は無料)には新機能を投入し続けてきた。
例えば、忘れ物がないようにユーザーにチェックリストを提供するだけでなく、ビジネス旅行者に支持されている別の旅行計画アプリ「TripIt」のユーザーを取り込んでいる。
「TripItはビジネスの旅行者の間で人気があり、PackPointがユーザーの特定の日の特定の旅を把握して、自動的にパッキングリストを提供できたら素晴らしいと思った」と、ギレンウォーターは言う。
TripItのアカウントと連動させると、PackPointがユーザーの新たな旅行プランに応じて新しいパッキングリストを作り、「『バルセロナにはこれが必要だよ』とか『インドに行くならビザを持っていって』などと教える」と、ギレンウォーターは言う。
忘れっぽさが増すだけ?
ロサンゼルスでIT系スタートアップ企業向けのビジネスディベロッパーをしているチャールズ・チャンは、月に何度も出張があり、PackPointを初期から利用していたという。
当初は一般的なチェックリストとして使うだけだったが、現在はPackPointによって旅行前の準備すべてを効率化している。
「家でやっておくことのリストもPackPointにある」とチャンは言う。「スプリンクラーのスイッチをオフにして、窓の鍵を締め、ゴミの日が近ければゴミを出し、賞味期限が近いものを冷蔵庫に残して帰宅時に臭くならないようにするよう、教えてくれる」
ニューヨークのブロガーでマーケティング会社の役員を務めるパメラ・シャイン・マーフィーが利用しているアプリは「Travel List」(1.99ドル)だ。
シンプルなフォーマットが気に入っているという。充電器から下着まで、パッキングが完了したアイテムはチェックリストから消える仕組みだ。
「すっきりしていて使いやすい」と彼女は言う。「私はコンタクトレンズなしでは生きていけない。これなら絶対に忘れない」
一方、ブログ「One Bag」で旅行の荷物を少なくする方法について書いている旅行専門家のダグ・ダイメントは、パッキングアプリは忘れっぽさをなくすよりも増やしているだろうと指摘する。
「どのアプリも、旅行のタイプごとに異なるリストが必要という考えを助長しているようだ」とダイメントは言う。「良くない考え方だ」
ダイメントが考える良いパッキングとは、中身が一定で、行き先の天気によってわずかに変えるというものだ。
しかし、PackPointを利用しているチャンは、パッキングアプリは時代を物語っており、今後不可欠になるだろうと言う。
「私たちはみな携帯電話に依存していて、それによって注意力が低下していると思う」とチャンは言う。「何か忘れたらどうしようと心配になったとき、それに備えてくれるアプリを使えばいいのだとわかると助かる」
(執筆:Tammy La Gorce記者、翻訳:中丸碧、写真:Caitlin O'Hara/The New York Time)
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