2020年、完全自動運行をめざす

電動や無人走行による交通革命を加速させているのは、グーグルのラボだけではない。無人船による貨物の海上輸送を2020年から開始しようとしている企業がある。
それはオスロ(ノルウェー)に本社を置く肥料世界大手のヤラ・インターナショナル。ヤラは5月10日、完全電気走行、CO2排出量ゼロの貨物船「ヤラ・ビルケラン号」を来年、ヨーロッパで就航すると発表した。
建造はコングスベルグ・グルッペン社が担当。完成した暁にはヤラの製品である肥料を輸送する。2019年までに遠隔操作での航行を開始、2020年には完全な自動運行をめざしている。
電気自動貨物船の登場は、有害な排気を出す化石燃料を使ってきた海運業界に、大きな影響を与える可能性がある。
陸上では、自動車メーカーが電気自動車ともに無人走行車開発の取り組みを強化している。
フォード・モーターやバイエルン・モーターレン・ヴェルケ、フォルクスワーゲンは、2020年代初めまでに無人走行車の開発をめざし、グーグルの姉妹会社であるアルファベットはすでに技術の試験段階に入っている。

国際海運のCO2排出量を減らす

ヤラの最高経営責任者(CEO)スヴェン・トーレ・ホルセスラーによれば、同社はノルウェーのポルスグラン工場で製造した製品を2つの港(ブレヴィクとラルブィク)に運び、そこから世界中に出荷しているが、そのために1日にディーゼルトラックを100回以上運行している。
同社の見積もりでは、新しい貨物船を使えば、トラック輸送4万回分を削減できる。ヤラの株式は、7.7ノルウェークローネから322.8クローネにまで上昇した。
海上輸送路は陸上よりも交通量が少ないが、海上貿易には自動化を阻む複雑な要素がついてまわる。強い海流、悪天候、一部海域における海賊行為などだ。
この新型造貨物船は、コングスベルグにとって新しい技術を試すチャンスだ。それは世界全体のCO2排出量の約2.3%を占める海運による大気汚染を抑制することができるかもしれない。
気候変動に関するパリ協定は国際海運から排出される温室効果ガスを規制対象にしていない。そのため、国際海事機関は来年、温室効果ガス削減のための初期計画を発表する予定だ。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Jess Shankleman記者、翻訳:栗原紀子、写真:Tryaging/iStock)
©2017 Bloomberg News
This article was produced in conjuction with IBM.