[ロンドン 8日 ロイター] - 英総選挙(下院、定数650)は8日実施され、出口調査によると、メイ首相率いる与党・保守党の獲得議席は314議席となり、過半数には届かない見込み。政治が混迷し、欧州連合(EU)離脱交渉に遅れが生じる可能性がありそうだ。

政権発足に必要な条件と保守党の過半数割れが確定した場合に想定されるシナリオは以下の通り。

◎どの政党が勝利したのか

多数派与党による政権を発足するには、最低326議席を握る必要があるが、登院しない北アイルランドのシン・フェイン党が議席を有しているため、実際は323議席前後で過半数となる。

保守党が過半数割れとなれば、メイ首相と野党労働党のコービン党首は政権樹立に向けた連立パートナー探しに着手することになる。

保守党は連立政権樹立に優先権を有するが、EU離脱(ブレグジット)に対するメイ首相の強硬姿勢を踏まえると、適当な連立相手を見つけることが困難になる公算が大きい。

◎保守党による少数派政権

メイ首相は少数派与党としての政権樹立を目指す可能性がある。この場合、法案ごとに野党の支持取り付けを図ることになる。

ブレグジットに関するメイ首相の強硬姿勢には他の主要政党すべてが反対しているが、離脱交渉開始への準備は進んでおり、メイ首相が離脱手続きの停止に合意する可能性は低い。

一方、メイ氏が描く離脱は移民や税制など関連法案が議会で成立することに依存しているため、法案成立の阻止や先送りがあれば、ブレグジット後の国境審査体制や対EU通商政策について懸念が生じることになる。

◎保守党率いる連立政権の再来

保守党は2010年に親EUの中道派・自由民主党と連立を組み、15年まで政権運営を共に担った。ただ、ブレグジットに関するそれぞれの選挙公約は差異が大きく、大幅な譲歩がなければ連立政権の再来は見込めない。

具体的には、保守党は離脱交渉で満足のいく条件の合意がなくとも完全な離脱を断行する構えなのに対し、自由民主党は交渉結果を踏まえて離脱の是非を問う国民投票を再実施すると公約している。

選挙で8議席を維持するとみられている北アイルランドのプロテスタント系民主統一党(DUP)に連立を打診することも可能だが、それ以外の選択肢は限られている。スコットランド民族党(SNP)はスコットランド独立の是非を問う住民投票の再実施を求めており、方向性が全く異なる。

◎労働党主導の政権

ハングパーラメント(宙ぶらりん議会)となった場合、労働党は議席数が保守党を下回ったとしても、複数の政策で少数政党と近い立場にあるため、政権獲得の機運が高まることになる。ただ、コービン党首は連立協議を行うことに否定的な見解を示しており、少数派政権を目指す可能性がある。

労働党はメイ首相が掲げるEU離脱交渉での優先項目について、EU単一市場や関税同盟で得ている恩恵を保つことを優先する形に作り変えるとの立場を示しており、コービン党首は交渉決裂を回避し、EUと確実に合意すると訴えている。このような方向性は、自由民主党あるいはSNPと歩み寄ることを容易にする可能性がある。

労働党はまた、インフラ投資に向け2500億ポンド規模の基金創設を約束しており、エコノミストらは、労働党主導の政権により国債発行が大幅に増え、国債利回りが長期的に上昇すると予想する。

また、労働党は法人税率を19%から26%に引き上げ、所得上位5%の層に増税するなど左派政策を鮮明にしている。