洋上風力発電のメリットとデメリットは、どこにあるのか

2017/6/5
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
5日は、レノバCFOのAki Moriさんが出演。「洋上風力発電最大手のDONG、石油開発部門を売却 1180億円」(日本経済新聞)を題材に、今後の洋上風力発電の可能性について解説しました。

洋上風力発電に大きくシフト

サッシャ 今日は、「洋上風力発電最大手のDONG、石油開発部門を売却 1180億円」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」のAki Moriさんです。
Akiさんは、太陽光、バイオマス、風力、地熱といった再生可能エネルギーの開発を行うレノバでCFOを務めていらっしゃいます。
それ以前は、ゴールドマン・サックスで国際的なM&Aやファイナンス案件を取りまとめる、金融や企業財務のプロフェッショナルとして活躍されていました。おはようございます。
Aki おはようございます。
サッシャ まずは、どんなニュースなのか教えて下さい。
Aki これは、デンマークにおける最大手の電力会社DONGエナジーが、彼らのオリジンである石油開発事業を外部に売却したというニュースです。
サッシャ もともと、石油の会社で始まったのに売却したんですか。
Aki はい。DONGエナジーのDONGは、Danish Oil and Natural Gasの頭文字なんです。
寺岡 それがなくなっちゃうんですね。
サッシャ これは、国営なんですか?
Aki もともと国営です。デンマーク王国が株式の過半数を持っていて、2012年にゴールドマン・サックスが第二の株主になっているんです。
サッシャ これは、要するに「洋上の風力発電一本で食っていこう」と決めたということですよね。
Aki 端的に言うと、そういう感じです。
彼らは、自分たちのエネルギーを、グリーン・コンバージョンと言って、洋上風力やバイオマス発電に経営資源を特化して、自分たちのビジネスを行うことを戦略として掲げています。それを表した、象徴的なニュースです。
サッシャ 「化石燃料では稼げない」と踏んだということですか?
Aki おっしゃる通りです。化石燃料だとビジネスリスクが大きすぎるんです。欧州をはじめ世界では、CO2の削減や環境の負荷をいかに下げていくかが大きなテーマです。
この不可逆な流れの中で、いつまでも石炭や石油、ガスでは良くないだろうというのが、根本にあります。

欧州と日本の違い

サッシャ 風力発電と聞くと、日本では民主党政権の時に買い取り価格を上げたけれど、ビジネスにならないと指摘されるなど、近年はネガティブなニュースを聞くことの方が多いです。
ただ、僕がドイツに帰った時には、かなり風力発電が進んでいるような気がしました。欧州と日本では、状況が違うんですか?
Aki 違いますね。日本では陸上の風力、つまり地面や山の上に風車を建てることが一般的です。
欧州はそこから一歩進んで、海の上に風車を建てるビジネスが盛んになってきています。ここには、「兆円級」の投資が毎年行われている状況です。
なぜこうなっているかというと、一つには世界的なグリーンエネルギーに対するニーズの高まりがあります。
そして、もう一つには洋上風力が安くて競争力のある電力源になってきているからです。
サッシャ 陸上よりも安いんですか?
Aki 場所によっては、伝統的に一番安いと言われてきた石炭火力よりも安くなる洋上風力も出てきています。
サッシャ 洋上風力は、イギリスが結構リードしているんですよね?
Aki  おっしゃる通りです。イギリスが世界の洋上風力において一番のシェアを持っています。
寺岡 島国ですから、海がたくさんありますもんね。
サッシャ だから、日本も同じ状況なんだよね。
Aki 洋上風力の世界は、イギリス、デンマーク、オランダ、ドイツなどが先進国です。
場所を思い浮かべると、北海の周りなんです。そこに、東京湾に迫るくらいの大きさの発電所が出来上がっているわけです。
日本だと海岸線が長いので北海とは違う状況ですけれど、場所によっては洋上風力ができるエリアはあります。
サッシャ 洋上風力は、浮上式がメインなんですか?
Aki いえ、基本的には着床式といって、海の中にストローをパチッと刺すような形式が一般的です。

メリットとデメリット

サッシャ なるほど。洋上風力のメリットとデメリットはどこにあるんですか?
Aki メリットは、規模の大きなものをバーンとつくれることです。
サッシャ 土地に制限がないからですか?
Aki おっしゃる通りです。日本だと陸上風力を建てるには、平地でも山でも制限があることに加え、地権者の方が100人以上いるかもしれません。その問題をクリアしなければいけません。
海ですと、法律をはじめとする整備が必要ですけれど、基本的には国のものなので、大きな発電所をつくれる可能性があるのがメリットです。
デメリットは、いまのところ日本では商業化された例がありません。
社会的にインフラが未整備で、工事をする会社や事業を行う会社の経験がまだ少ないので、コストや時間がかかるかもしれない。失敗をするリスクを取らなければいけないところがあります。
サッシャ 洋上だと、メンテナンスが大変そうとか、陸上まで送電するのが大変そうな気もするんですけれど。
Aki そういう問題もあります。ただ、欧州の状況を見ると、洋上風力は完全に証明された技術で、安く、設備は高性能化され、巨大化もされているので、そのデメリットは解消されています。
「欧州でできることが、どうして日本でできないのか」を、考えるべきだと思います。
サッシャ 何で日本にはないんですか?
Aki 日本はもともと、原子力やガス中心で、地域にそれぞれ発電所がありました。東電や東北電力などです。こうした従来型の電力をベースに社会がつくられていました。
それが、2011年の東日本大震災を契機に色んなことが日本で起きて、いまは法案ができるなど、再生可能エネルギーが始まった黎明期なので、これからという感じですね。
サッシャ まだまだ利権も大変だということですね。
Aki まあ、そういうこともあるかもしれない(笑)。
加えて、これからは日本も欧州のように、電力、そして社会に対する発想を少しずつ転換する必要があると思います。
欧州では、再生可能エネルギーが「明日どの地域でどれだけ発電するのか」が、天候や風況の予測で大体わかってきています。
そこに合わせて、足りない分はガスなどの発電所を動かして需給に対応していく恰好です。こうすることで、なせば成るのだと思います。
サッシャ なるほど。Akiさん、どうもありがとうござました。
Aki ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとしたAkiさんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
6日はS&S investments代表の岡村聡さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください