“ヤマト運輸vsアマゾン”の動向と、消費者がすべき5つのこと

2017/5/2
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。
2日は、イー・ロジット代表の角井亮一さんが出演。「『ヤマト運輸vsアマゾン』どうなる値上げ交渉」(PRESIDENT Online)を題材に、今後の動向や私たち一人ひとりが注意すべきポイントについて解説しました。

“宅配ドライバー問題”が発端

サッシャ 今日は、「『ヤマト運輸vsアマゾン』どうなる値上げ交渉」というトピックにフォーカスです。
寺岡 解説してくださるのはNewsPicksの公式コメンテーター「プロピッカー」の角井亮一さんです。
角井さんは、戦略物流コンサルタントで通販物流の代行会社イー・ロジットの代表です。同社は、日本の物流会社で唯一アマゾンとシステム連携をしています。おはようございます。
角井 おはようございます。
サッシャ 今回の話は、要するにヤマト運輸とか宅配業者が「この値段じゃ無理です」と値上げをする流れなんですよね。
角井 根本の話で言うと、宅配ドライバーが「これ以上運べません」とパンクしてしまったことにあります。
そこで「働く時間を短くできませんか」となった後に、値上げの話も出てきたんです。
サッシャ ドライバーを休ませるなら、もっと雇わなければならない。すると、人件費がかかり、値段も上がるということですか。
角井 そうです。
サッシャ ここまでの流れをどう感じてますか?
角井 流れ的に言うと、値上げに関しては色んな企業や個人も含め、「大変さは分かっているので、ヤマト運輸に協力しよう」という感じだったと思います。
しかし、値上げ幅が大きかったことで、風向きが変わってきました。
サッシャ 具体的にどれくらいですか?
角井 一般消費者は140円から180円の値上げになります。
結構大きいので、私自身は世論が「ヤマト運輸、それは上げ過ぎじゃないの?」となってきていると、コメントをしていて感じます。
サッシャ 「便乗値上げだ」と感じている人がいるということですか?
角井 そうですね。あともう一つは「他にできることがあるんじゃないの」ということなんです。つまり、再配達の件ですよね。
宅配ドライバーが運ぶ荷物のうち2割が再配達で、体感値的では3割5分なんです。
これはどういうことかというと、朝に届けて不在だった場合は不在票を入れて、当日の午後などに再配達するので、結構な回数を同じ場所に運んでいるんですね。
「その回数を下げる努力も必要ではないか」と言う人も多いです。

再配達は負担が大きい

サッシャ そのなかで、僕はアマゾンプライムの会員なんですけれど、ヤマト運輸が当日配送のサービスから撤退するという話も出ているんですが、これはもう決定ですか?
角井 決定ではないですね。ヤマト運輸が当日配送を減らしていこうという流れなんです。なんでこれが起こっているかというと、やはり再配達の負担なんです。
アマゾンが当日配送を実施する前だと、ドライバーは夜などの時間帯は多少の余裕がありました。チームの中で「今日は、お前早く帰っていいよ」と言えたんです。
ところが、当日配送が始まると、そのしわ寄せは夜の時間帯になりますよね。そうなると、全員が働くしかなくなり、帰宅時間も11時や12時になってしまいました。それが大きな問題です。
これを何とかしようということで、ヤマト運輸の経営陣が当日配送を減らすことを打ち出したのだと思います。
ただ、当日配送をやめるとは正式に発表していなくて、「徐々に減らす」と一部の方が言っているということです。
サッシャ ちらつかせているということですか。
角井 そういうことになりますね。
サッシャ Amazonプライム会員は、年間3,900円を払うと当日配送なども含めて無料の場合があります。そうなるとテリー(寺岡)、気になるのは値段だよね。
寺岡 そうですね。ヤマト運輸が値上がりするということは、他の会社も値上がりしたり、アマゾンで注文した商品自体の送料も上がったりすることもあるんですか?
角井 アマゾンの送料が上がる可能性はあると思います。あとは、Amazonプライム会員の値段が上がる可能性もあります。
ただ、アマゾンとしては、Amazonプライム会員の数を増やしたいので、急に値上げをして会員数を増やせないのは戦略上よくないので、控えるだろうと思います。

アマゾンは今回の事態を想定

サッシャ 角井さんの立場としては、アマゾンとシステム連携をしているから言いにくいかもしれませんけど、この値上げ交渉はアマゾン側とヤマト運輸側のどちらに“ボール”があるんですか?
つまり、アマゾンが「それなら他の業者を使います」ということなのか、ヤマト運輸が「うちがいないと成り立たないでしょ」となっているのか、どっちなんですか?
角井 私は『アマゾンと物流大戦争』(NHK出版新書)という本を出していますけれど、アマゾンをずっと見ていると、こういう事態になる前に手を打っているんですよ。
サッシャ えっ、そうなんですか?
角井 アメリカでは、2013年にUPSという同国最大の宅配会社が、クリスマスの日に17%の遅配をしたんですね。
その時、アマゾンはUPS以外の地場の会社やアメリカ郵政公社(United States Postal Service)を使うことで補完しています。ネット通販の企業が、アメリカ郵政を使っている例はほとんどないにもかかわらず。
日本も2016年12月に遅配の問題や宅配ドライバーが荷物を投げた事件が起こりましたけれど、アマゾンはその前年からこのような動きを予見していると思います。
ヤマト運輸の件に関しても、ここまでとは考えていなかったと思いますけれど、ヤマト運輸がやめると言ってもできるように全力で動いていると思います。
サッシャ 最終的には、グローバル企業ですから「物流会社をつくっちゃおう」みたいなことは考えていないんですか?
角井 会社をつくらなくても、アマゾンには「カスタマーセントリック」(顧客中心主義)がありますので、「お客さんには迷惑をかけない」「アマゾンの商品は確実に届けるようにしよう」とすると思います。
実際、アメリカでは輸送機を20機リースしたり、トレーラー数千台を購入したりしています。また、シンシナティ近郊に航空貨物ハブもつくります。
寺岡 ええっ、すごいですね。

私たちにできる5つのこと

サッシャ 全体の流れからすると、まだ不透明な部分もあると思いますが、利用者としては値段が上がってほしくはないですよね。
ただ、日本の宅配環境は、ユーザーがかなり甘やかされているところもあると思うんです。外国だったら、こんなにピンポイントな時間で荷物が届きません。
そこで、私たちが「企業を応援するというよりも、自分たちを守るためにできること」は何かありますか?
角井 私自身、消費者の皆さんにお願いしたいことが5つあるんです。
一つ目は、「安易な時間指定をしない」。時間指定をしても、そのときにいないケースが結構あるんです。そうすると、宅配ドライバーはせっかく持ってきたのに残念ですよね。
二つ目は、「安易な再配達の指示をしない」。受け取れないのに「すぐ持ってきてほしい」と言わない。
三つ目は、「受け取る努力をする」。いまはクロネコメンバーズや、ウケトルというアプリなどがあるので、それらを活用するといつ届くか分かります。
四つ目は、「早く自分の荷物を受け取る」。自宅の宅配ボックスやコンビニ受け取りは、それぞれスペースが限られていますから、すぐに受け取る。
そうしないと、荷物が入れられなくなったり、他の人が使えなくなったりして迷惑がかかります。
そして五つ目は、これが一番大事かもしれませんが「お疲れさま、ありがとうを言おう」。宅配ドライバーは肉体的・精神的にもしんどいので、特に雨が降っている日や暑い日には、一言声をかけてあげる。
できたら、冷たい缶コーヒーの1本でも差し入れてもらえると、本当に喜ぶと思うんですよね。
サッシャ 150円の値上げよりは、120円の缶コーヒー、じゃないですけれど、頑張っているのは分かりますよね。
僕は宅配ドライバーと結構顔見知りになっているので、色々話すことがあります。
寺岡 コミュニケーションは大事ですよね。
サッシャ 宅配の便利なシステムを守るために、この一つひとつを大事にしたいですね。角井さん、ありがとうございました。
角井 ありがとうございました。
※本記事は、放送の内容を再構成しています。
今回のニュースをはじめとした角井さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
来週8日はbitFlyer代表の加納裕三さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
番組WEBサイトはこちらをご覧ください