保護者に新たな価値を提供するスタートアップ「KidGuard」に話を聞き、同社のサービスを試してみた。

子どもの安全と保護者の安心が目標

最近の親たちにとって、オンラインの安全性はジレンマの種だ。子どもたちを、詐欺や性犯罪、ネットいじめ、そして自身の邪悪な本能から守りたい。しかし一方では、デジタルの世界に親しんでほしくもある。
インターネットのスキルはいまや、仕事に就くうえで読み書きの能力と並ぶ必須条件だ。わが子にインターネットを使わせなければ、将来のキャリアを左右する知識を十分に養えず、将来生きていくうえで競争に勝ち残れない。
子どもにオンラインの世界を経験させつつ、彼らの安全を確保するにはどうすればよいのだろうか。
その答えになるかもしれないのが、「KidGuard」だ。テック分野の起業家ローレンス・ウンが立ち上げたこの野心的スタートアップは、子どもの安全と保護者の安心を第一の目標に掲げている。
同社のサービスは、保護者が子どものオンライン活動を監視し、実世界での居場所を追跡するための情報とツールを提供する。
「テクノロジーの発達は、あらゆる人の脆弱性を高めた。顧客データや企業秘密を保護する技術に巨費が投じられる一方で、子どもたちを守る技術にはほとんど費用が投じられていない」と、ウンは話す。
「われわれはこの問題の個別要素に対処するだけでなく、より根本的な解決策を提供したいと考えている。その解決策とは、最も危険度が高いプラットフォーム、すなわちモバイル上で子どもを危険から未然に守るツールを保護者に提供することだ」

ソーシャルメディア利用も監視できる

子どもは、自分の身に起きていることすべてを親には打ち明けない。恥ずかしい気持ちが勝ったり、仕返しを恐れたりするためだ。こうした秘密主義は、弱い子どもを狙う性犯罪者やいじめの加害者にとって非常に好都合だ。
さらにソーシャルメディアは、脆弱な状態にある子どもを見つけだし、標的にする格好の手段となっている。わが子の様子が以前と違う、何かあったのは確実なのに、それが何なのかわからない──そんな理由で親が眠れぬ夜を過ごすのはよくある話だ。
筆者もサービスを試してみようと、KidGuardの無料体験版に登録してみた。
「KidGuard Phone Monitoring」サービスを利用すると、保護者は子どもの携帯電話での活動をタブレットや自身の携帯電話から追跡できる。
具体的には、子どものテキストメッセージを読んだり、GPSで居場所を確認したり、通話の相手をチェックしたり、参加しているチャットの内容を閲覧したりすることが可能だ。
そのほかソーシャルメディアの利用を監視し、ブラウザの閲覧履歴やインストールしているアプリ、連絡先を表示する機能もある。子どものデジタル活動の全貌を詳しく把握できるため、トラブルが発生した場合には適切に対処することが可能だ。

ネットでの適切な行動を教える必要性

子どもの携帯電話を監視するのは気が引けるという人は、以下のことを考えてみてほしい。
・12~17歳の3人に1人が、ネットでいじめや嫌がらせを経験したことがある。特に女子は被害に遭う確率が高い。
・ティーンエイジャーの5%が、ネットで知り合った相手とひそかに会う約束をした経験がある。
・10~17歳の46%が、知らない相手に個人情報を渡した経験がある。
米連邦捜査局(FBI)は保護者に対して、子どものインターネット活動を注意深く監視し、またオンラインでの適切な行動について継続的な指導を行うよう呼びかけている。
KidGuardも先日、「オンラインの安全性に関する保護者向けガイド」を公開し、保護者が備えるべき知識として、事実や統計に基づくデータから具体的な対処法までを紹介している。
同ガイドでは、ネットユーザーとして適切に振る舞い、安全なオンライン行動をとる方法について子どもたちに教育することの重要性を強調している。
いじめ問題に取り組む非営利団体「Pop Culture Hero Coalition」の共同創設者、キャリー・ゴールドマンは次のように述べる。
「子どものデジタル活動に注意を払うことは、いまの時代に子どもたちを健全に育成するうえで非常に重要だ。KidGuardは、家庭が子どもの安全を守るための予防と介入のツールを提供している」

子どもの内面で起きている問題を把握できるか

また、危険がつねに外からやってくるとは限らない。
うつ病はティーンエイジャーに多くみられ、特に15~17歳の女子の割合が高い。カリフォルニア州全域を対象とした調査で、ティーンの女子におけるうつ病の経験率は深刻なレベルにのぼることが明らかになった。
なかでも11年生(日本の高校2年生に相当)の女子と、伝統的な学校ではない場所で教育を受けている女子のリスクが高く、33~50%超が抑うつ的な気分を経験したことがあると回答している。
男子は女子に比べてやや数字が低く、ほとんどの地域において抑うつ気分の経験率が19~29%の範囲にとどまっていた。
この年代の子どもはそもそも気分が不安定で、家族と多くの時間を過ごしたがらないため、深刻なうつ状態に陥っていても保護者が気づきにくい場合がある。交友関係や閲覧しているサイトがわかれば、子どもの内面で起きていることを把握するのに役立つ。
精神的な問題が深刻化すると、子どもの学業や生活にも影響が及び、正常な人間関係を築くことが困難になりかねない。うつ病や不安感から、薬物乱用や自傷行為、非行といった破壊的行動に走るおそれもある。
適切なタイミングで介入し、専門家の助けを借りることが、子どもが道を踏み外すのを防ぐ手立てになる。

緊急事態に短時間で居場所を特定する機能も

子どもの居場所がわからない、電話にも出ないという緊急事態に陥った場合、KidGuardのレポート機能「Situation 360」を使えば、子どもが最近立ち寄った場所や話をした相手、送受信した画像などが一目で把握できる。
短時間で詳細な情報が手に入るため、わが子の居場所を特定し、友人に連絡して息子に電話に出るよう伝言を頼んだり、飲み会に参加している17歳のわが子を迎えに行ったり、警察に助けを求めたりと、すぐさま適切な行動をとるのに役立つ。
親は子どもを真っ先に守る存在だが、オンラインの危険から子どもを保護することは困難に思えるかもしれない。子どもを四六時中見張っていることは不可能だからだ。
しかし、KidGuardを利用すれば、子どもがオンラインや実世界のどこにいるかを含め、必要な情報をすべて把握できる。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Shazir Mucklai記者、翻訳:高橋朋子/ガリレオ、写真:BrianAJackson/iStock)
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This article was produced in conjuction with IBM.