【新浪剛史×楠木建】日本の企業には“後継者育成計画”がない

2017/3/30

「俺の首、取るなよ」

新浪 たとえばトップのマネジメントひとつをとっても、日本の企業にはサクセッションプラン(後継者育成計画)がないですよね。自分の次をどうするかよりも、むしろ「俺の首、取るなよ」という感じが強い。そういう、アメリカ企業と比べた時の日本のやり方の違いは、随所で感じています。
楠木 でも、日本のやり方では通じない部分も多いでしょうけど、全部が全部やりにくいわけではなく、なかにはアメリカ流のほうがこちらからしてもやりやすい点もあるでしょう。
たとえば、優秀な人材をすぐに採ってこれる点もそうですよね。あるいは、毅然と力をもって対抗すれば、向こうもちゃんと従ってくれる土壌もあります。
ただ、それを遂行するとなると、経営の体幹の強さみたいなものがどうしても必要になる。サントリーが買収したビーム社に話を戻しますが、買った時点では典型的な「アメリカンな経営スタイル」だったようですね。
新浪 そうですね。もともと上場企業をデリスト(非上場化)したわけで、四半期ごととか、非常にショートタームでものを考える会社でした。
これがたとえば、日本のウイスキーメーカーであれば、原酒を長期間寝かせていくわけですが、向こうではそんな悠長なことは言っていられません。まず、株主が待ってくれないですからね。