イーロン・マスクの次なる野望は「メガトンネル構想」

2017/3/23
電気自動車のテスラ、ロケット・宇宙船開発のスペースXなど、度肝を抜くイノベーションを繰り返してきたイーロン・マスク。彼が新たに挑むイノベーションは、巨大トンネル建造による「渋滞の撲滅」だ。マスクの壮大な挑戦を描いた、Bloomberg Businessweekの記事を掲載する(全2回)。

「渋滞って本当にイラつく」

イーロン・マスクの宇宙開発ベンチャー、スペースXの本社は、ロサンゼルス国際空港から東に8キロほど行ったところにある。
その駐車場に巨大な穴が掘られたのは、ごく最近のこと。深さ5メートル、一辺15メートルほどの四角い穴だが、横に土の山がなければその存在に気がつかない人も多いだろう。
だが、マスクはこの穴のことをとても誇りに思っている。
きっかけは昨年12月のある土曜日の朝の出来事だ。マスクはロサンゼルス名物ともいうべき渋滞にはまっていた。「渋滞ってほんとにイラつくな」と、彼はツイートした。「トンネル掘削機をつくって、いますぐ掘り始めてやる…」
1時間後、このプロジェクトには名前がつき、マーケティングのプラットフォームができていた。「名前は『ザ・ボーリング・カンパニー(The Boring Company)』だ」とマスクは宣言した。「掘りまくるぞ」
2時間後、マスクはまたツイートした。「これ、本当にやることにした」
マスクは奇想天外なことを宣言しては、それを実行に移してきたが、いつもそうとは限らない。突飛な発言をしてメディアをからかったり、世間の反応をおもしろがるだけのときもある。
2015年にスティーブン・コルベアの番組に出演したときは、火星を人間が住めるくらい暖かくするには、核兵器を落とすのもありだと半分真面目に語った。昨年には、国防総省のためにアイアンマンが着ているような空飛ぶスーツを開発中だとツイートした。
だからトンネルもジョークの1つだと、多くのメディア関係者は考えた。

「やりながら考える」アプローチで

だが、マスクは本気だった。少なくとも、2月初めにスペースXのワシントンDC事務所で行われたインタビューでは、そう語っていた。