ボストンのギンコ・バイオワークスは生物学を利用して、香水の成分からいずれはiPhoneスクリーンまで、あらゆるものを製造しようと試みている。

顧客のオーダーで遺伝子を組み替え

ジェイソン・ケリーは、種のなかに工場を見ている。適切な材料を与えれば、種は茎や葉や花をつくり出す。
ケリーが率いる企業「ギンコ・バイオワークス」(Ginkgo Bioworks)は、それをさらに一歩先へと進めようとしている。ほかの生物のDNAを加えて調整したら「種の工場」はどんなものを生み出せるのだろうか。
ボストンを拠点とするギンコ・バイオワークスの望みは大きいが、小さなことから始めている。同社では微生物の遺伝子を組み替え、顧客が求める微生物を開発している。
たとえば、酵母の遺伝子を組み替え、香料業界が望むような桃など特定の香りがする副生成物を産生する酵母を作成する。
そうした酵母があれば、あとは酵母菌株がビールのように醸造されるので、香りを抽出して瓶づめにすることができる。

描くは「生物学を利用した製造工場」

「工場のない製造だ」とケリーは言う。「最初のiPhoneだけをつくっておけば、あとは勝手にiPhoneが自己複製していくようなものだ」
ケリーと共同創業者たち(マサチューセッツ工科大学の博士課程の大学院生チームと担当教授)が思い描いているのは「生物学を利用した製造工場」だ。
たとえば、皮膚に住む細菌から人工香料を製造したり、ゆくゆくは電子機器に使われる素材の製造もできるかもしれない。
ギンコは今のところ、果実の香りに力を注いでいる。香料業界の顧客と協力して、特定の酵母変異株を開発しているのだ。
同社では、カスタムメイドの微生物が生み出す香料が製品化された場合、ライセンス料を徴収することを目指している。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Ellen Huet記者、翻訳:梅田智世/ガリレオ、写真:vadimrysev/iStock)
©2017 Bloomberg News
This article was produced in conjuction with IBM.