【鳩山×鎌田】「君の名は。」のヒットが意味すること

2017/2/18

こってりばかりでは飽きる

──2016年は「君の名は。」と「この世界の片隅に」が話題を呼びました。インフルエンサーマーケティング、ブロックバスター戦略という点で、この2つは何かを象徴しているのでしょうか。
「君の名は。」はそれほどCMもやっていなかったのですが、口コミでどんどん広まりました。また、「この世界の片隅に」もクラウドファンディングでお金を集めて制作しています。単館系でスタートした後、こちらも口コミで広がり、ヒットしました。
鳩山 大きい変化は、そんなに感じません。このようなヒットも必ずあります。でかいコンテンツばかりだと飽きてしまうのですよ。それは毎日こってりしたものを食べているような感じです。
メジャーなコンテンツが大きくなればなるほど、メジャースタジオが中小のコンテンツに投資する額は減ります。
かつてはメジャースタジオが、大きいものも中も小も満遍なくカバーしていました。それが今はブロックバスター戦略ばかりやっていて、中と小をメジャーがやらないのです。ですから、その分インディーズがヒットする可能性は高まっていると言えるのかもしれません。
鳩山玲人(はとやま・れひと)
1974年生まれ。鳩山総合研究所代表取締役。スタンフォード大学客員研究員。元サンリオ常務取締役。青山学院大学を卒業後、三菱商事に入社。2008年にハーバードビジネススクールでMBAを取得。同年、サンリオに入社。サンリオで海外事業を拡大し、サンリオメディア&ピクチャーズ・エンターテインメントのCEOとして映画事業にも従事し、2016年6月に退任。DeNA、LINE、ピジョン、トランスコスモスの社外取締役を歴任。現在、シリコンバレーのベンチャーキャピタルであるSOZO VENTURESのベンチャーパートナーや、YouTuberを束ねるUUUMのアドバイザーも務めている。
あと、「君の名は。」のプロデューサーである川村元気さんは、「君の名は。」に限らず「肉食系じゃない、草食系の現代人の恋愛を描きたい」とずっと言っていましたが、「君の名は。」もその1つかなと思います。
昨年末にヒットしたドラマの「逃げるは恥だが役に立つ」も、草食系のピュアな感じを世の中が求めていることの象徴かもしれません。
ただ、「君の名は。」は面白いですが、あれがアメリカでヒットするかはわかりません。アメリカ人だと「二人の間に恋愛感情があったのかどうかわからなかった」という印象を受ける人も多いでしょう。ああいったプラトニックな感じのコンテンツは、独得な恋愛感情であり、日本やアジアでないと作れないコンテンツだと思います。
「君の名は。」2016年(配給:東宝)

社会的強制力はすごい