24年連続最多観客動員。ホークスが目指す日本一のサービス

2017/1/28
研修旅行の行き先はディズニーだ。
福岡ソフトバンクホークスでは2015年より、サービス向上のために本拠地ヤフオクドームの接客スタッフを東京ディズ二ーリゾートへ研修に送り出している。他業種のサービスレベルを肌で感じ、学び取る。初年度は基本的なディズニー哲学、翌年はサービススキルについて学んだ。
今年は2月に行われ、マネジメントがテーマになるという。日程は1泊2日。短期集中で「エンターテインメントの王様」のおもてなし術を吸収する。
参加するのは50~80人ほどの球場の接客スタッフだが、球場内飲食店や案内係、チケットもぎりなど、実際に現場で働くのは球団の委託先である別会社の従業員だ。
「ホークスの球団職員も参加しますが、半数以上はお仕事を委託させていただいている会社の従業員様になります。往復交通費、宿泊費などの費用はホークスが負担します。ヤフオクドームのサービス向上のための研修をしていただくわけですから」
そう語るのはドーム運営部の木下太郎部長だ。
ディズニー研修の参加者が記念撮影
具体的な費用については明らかにしなかったが、それだけの人数だ。100万円は下らないはずである。
ホークスの本気度が窺い知れる。

4つのサービス行動基準

時を同じくして2015年より、ホークスでは「ヤフオクドーム サービス向上プロジェクト」を立ち上げており、今年が3シーズン目となる。
「すべてのお客様に『楽しさ』と『感動』を提供」という理念のもと発足。
選手会長の長谷川勇也がプロジェクトリーダーに就任するかたちで、「Safety」(安心を優先した行動)「Heartful」(心のこもった接客)「Enjoy!」(お客様に楽しんで頂く、お客様と一緒に楽しむ)「Plus One」(あなたが出来るプラスワンのサービス提供)という4つのサービス行動基準を設定。
さらに、毎年新たな施策を導入しており、「委託先様を含むドーム全従業員で更なるサービス向上に取り組んで参ります」としている。
ディズニー研修もある意味でその一環だ。
プロジェクト発足のきっかけについて木下部長が振り返る。
「当時、ソフトバンクグループ全体として『ナンバーワンに挑戦しよう』というスローガンが掲げられたんです。チームは優勝、日本一を目指すのは当然。では、われわれ球団、そしてヤフオクドームでは何を目指すのかとなったときに、やはりサービスだということになりました。つねにより良いサービスの提供、あくなきサービス向上を目指そうというものをプロジェクトというかたちで表したのです」
全従業員の意識づけへ、施策も多岐に及んだ。「お客様とのコミュニケーションアップのため」にスタッフは全員ひらがなの名札を着用。選手オリジナルステッカーを場内係員、警備員、清掃員が携帯して、子どもファンにプレゼントした。
また、身だしなみや服装チェックのためにバックヤードエリアのあらゆる場所に鏡を設置。5回裏終了のグラウンド整備時の球場ダンスでは、スタンドでビール売り子や場内係員もダンスを踊ってヤフオクドームを一生懸命盛り上げている。
意識向上へは各セクションで「サービスリーダー」を選出。「襟元に特別なピンバッジをつけてもらい、他スタッフのサービスレベルアップを牽引してもらっています」と木下部長。
さらにシーズン終了後にはヤフオクドーム全従業員を対象とした「最優秀スタッフ表彰」を開催している。各部門から投票、推薦によって最優秀スタッフが選出される(昨年は25名が選出)。
表彰式には長谷川をはじめ内川聖一や攝津正や千賀滉大らホークス主力選手も出席。後藤芳光球団社長から記念品が手渡され、選手たちとの記念写真に納まることができる。
表彰された売り子の高村俊耀さん(下段中央)

専門的分析で、サービス向上へ

ただ、もちろんサービス向上の施策自体はそれ以前からさまざま行われていた。ミステリーショッピングリサーチ、いわゆる覆面調査もその一つだ。
「専門の業者に委託をして調査をしています。専門的分析をもって点数化することで、客観的判断につながるんです。それに基づき研修や指導を行うこともありますが、年月を積み重ねることで本当に必要なもの、何よりお客様が求めているものが徐々に明確になってきました。それが大きかったなと思います」
「たとえば、元気な挨拶や笑顔といったその基本的なところが最も大切なんです。ヤフオクドームに来場していただく皆様にはチームを愛してほしいし、球場も愛してほしい。主役はもちろんグラウンドです。プロ野球をより楽しんでいただき、またヤフオクドームに来たいと感じていただけるリピーターを増やしていきたいですね」
昨年のヤフオクドームにはホークス主催公式戦だけで249万2983人が来場した。ヤフオクドーム開業以来、24年連続でパ・リーグ最多の動員数を誇る。
また、ホークスのクライマックスシリーズやオープン戦、その他ライブなどの貸館興行を含めれば、その数はまだ跳ね上がる。
サービスにゴールはない。それでもひたすら本気になって、ただただ上を目指す。
野球と同じだ。まさしく常勝チームにこの球団ありというわけだ。
(写真:©SoftBank HAWKS)