[ダボス(スイス) 18日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)の顧問を務めた清華大学の李稲葵教授が、世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に合わせてロイターが開いたグローバル・マーケッツ・フォーラムに参加し、人民元が2017年に5%下落する可能性があるとの見方を示した。

主なやり取りは以下の通り。

──人民元は3年連続で下落しているが、人民銀の抑えがきかなくなる水準はどの辺りか。

「水準は5%安だと考える。5%より大きく下げれば、さらなる資金流出の引き金となる」

──人民銀の外貨準備は14年7月以降に1兆ドル目減りした。為替変動のコントロールにあとどれぐらい使うつもりなのか。

「オンショア、オフショアともに介入するだろう。人民銀が適切に対応すれば、あと2000億─3000億ドルの投下で目標を達成するのではないか」

──資本逃避抑制に向けた最近の措置についてどう思うか。

「これまで資本流出の80%は企業によるものだ。人民銀は企業主導の資本流出の6割に上る実体を伴わない輸出に厳しく対処するだろう。家計の米ドル両替にはそれほど措置が取られるとは思わない」

──中国は今年、「痛みのある」改革を推し進めるために成長鈍化を受け入れると思うか。

「中央政府や最高指導部はそうするだろう。しかし、今年は共産党党大会が開かれる。地方政府の当局者らは昇進へ競い合っており、国内総生産(GDP)が改革推進より分かりやすい。このため、最終的には成長が最優先となる」

──人民銀が年内に引き締め政策を取ると思うか。インフレ率が上昇すれば、金利を引き上げるか。

「企業が低い借り入れコストを切望しているため、金利引き上げは考えにくい。しかし、人民銀は社会融資総量の水準をある程度に維持しようとしており、信用の伸びを注視している。(望ましい信用の伸びは)年率12%を超えないレベルだ」

──人民銀にとって今年最大のチャレンジは何だと思うか。

「トランプ次期米大統領だ。世界の投資家らは最初の半年間、『トランプ経済』に多大で非現実的な期待を抱くだろう。例えば、インフラ、減税、貿易推進といった分野だ。米ドルは上昇して資金が米国に流れ込み、元には問題となる。しかし、そのうち『トランプ経済』が機能するには時間がかかると分かってくるだろう。このため、半年たつと米ドルは下落すると考える」