【遠藤乾】欧州複合危機はつづく。天王山はフランス大統領選
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Newspicks「2017年大予測」に寄稿しました。5000字で言い尽くせないことが多いので、食い足りない向きは中で言及した中公新書『欧州複合危機』を参照くだされば幸いです。
追記:NHK-BS「国際報道2016」の今年初回放送(明日1月4日(水)夜10時~)で、同類の特集「シリーズ『2017世界は・・・』①右派台頭・欧州はどこへ」で解説を試みます。ご関心の向きはどうぞ。もともと経済統合だったEUが、いわゆるエリートであるEU官僚が何でもかんでも規制し、それを押しつけられる側の国民の我慢の限界に達しているということです。これは、我々日本人でも理解できる事象です。
それも漁業や林業のような産業に直結するものだけではなく、例えば、ゴム手袋の質、掃除機の吸引力みたいなものまで規制を作って押し付けてきます。スーパーで売られているバナナときゅうりは曲がっていてはいけない、みたいな規制まであるそうです。こんなしょーもない規制があるために、ヨーロッパの掃除機の吸引力は弱く、だから掃除がはかどらない。
「何でヨーロッパの掃除機はあんなにものを吸わないのか」
と愚痴っていた海外駐在経験者の不満はすべてEUの規制によるものと言えます。
こんな意味不明な規制を押しつけれられてもなお、EUに残りたい、と思う方が少数派になってきたのではないかと思います。2017年は先行きの不透明感の度合いからいうとトランプ新政権の政策動向以上に欧州の政治イベントの趨勢を注視しておきたいですね。
本記事で指摘されているフランス大統領選挙やドイツ議会選挙はもちろん、これらに先んじて行われるオランダ議会選挙や年内に行われる可能性が取りざたされているイタリア総選挙についても気にしておきたいところ。
今年早々にEUへの離脱通告、交渉入りが予定されている英国についても、この離脱通告が予定通り行われるかどうか、また行われて離脱交渉入りしたとしてリスボン条約50条に則って2年という期間が定められている中で交渉は順調に進捗するかどうかも注意深く見ていく必要があります。
ここにきてEUは構造的な欠陥が露呈してきてしまっていますね。崇高な理念とともに加盟国の政治的思惑を孕んで場当たり的な対応をしてきたことのツケを払う時期に差し掛かってきたようです。そもそもマクロ経済政策に焦点を当てても、金融政策のみ統一通貨ユーロを作ったが故にECBに一元化したものの、財政政策はいまだに各国ごとにバラバラに行うという体制では手詰まりとなって当然といえるでしょう。今年はとくにユーロ瓦解の端緒の年となるかどうかですね。
欧州の政治日程は以下の通り。
1〜3月 英国がEU離脱通告→離脱交渉入り
3月 オランダ議会選挙
4〜5月 フランス大統領選挙
6月 フランス議会選挙
8〜10月 ドイツ議会選挙
? イタリア総選挙