風変わりなスタンプとフィルター

 韓国城南市盆唐区で開発され、アジアで人気の「SNOW」は「Snapchat」と瓜ふたつのアプリだが、風変わりなスタンプとフィルターを武器に世界進出を狙っている。
 SNOWは、Snapchatの機能をほぼそのまま複製したアプリだが、「踊るタコ」や「スーパーサイヤ人の髪」など、何百種類ものスタンプやフィルターを無料で利用できる。Snapchatの場合、提供しているのは毎日更新される数十種類のフィルターのみだ。
 SNOWのキム・チャンウク最高経営責任者(CEO)は自社のイベントで「世界の市場でサービスを提供し、成功を収めたい」と野心を語っている。「まずアジアのトップを目指したのはそのためだ」
 SNOWのプロジェクトが始動したのは2015年。インターネット検索事業を展開するNAVERの技術者たちが、Snapchatがアジアで苦戦していることに気づいたことがきっかけだ。技術者たちは、もっと良いものをつくることができないかと考え、一致団結してSNOWの開発に取り組んだ。
 NAVERの株価は11月18日、3.5%上昇し、77万1000ウォン(約7万2760円)の値を付けた。

ダウンロード数は8000万回超える

 アプリに関するデータを収集するアップアニーによれば、SNOWのダウンロード数は8000万回を超え、日本とシンガポール、韓国では2016年、iOSとAndroidのダウンロード数で1位または上位につけている。
 さらに、Snapchatがブロックされている中国にも進出。百度やテンセント、アップルの「App Store」を含む代表的なサードパーティーのアプリ市場でトップ100に食い込んでいる。
 カンター・グループのデータ・コンサルティング部門、カンターTNSでコンサルティング副責任者を務めるパク・ジュンフンは「ダウンロード数が爆発的に伸びているのは事実だ」と話す。
 「かわいいだけでなくどこか風変わりな視覚効果が、単なるカメラアプリではない面白い何かを求める若者たちの心をとらえているのだろう」
 一方のSnapchatは、1日当たりのユーザー数が6000万人を超える。開発したSnap(同社は、社名をSnapchatからSnapに変更)は米国ロサンゼルスに本拠を置き、直近の資金調達ラウンドでは180億ドルと評価された。早ければ2017年の新規株式公開(IPO)を視野に入れている。
 ただしアップアニーによれば、アジアでは成功とはほど遠く、日本と韓国の直近1週間のランキングでは、iOSとAndroidのダウンロード数が450位以下だったという。

NAVERのプロジェクトとして誕生

 SNOWが、メッセージングアプリ「LINE」で有名なNAVERのプロジェクトであることは偶然ではない。
 2016年にIPOを行ったLINEも、ユーザーがダウンロードしてやり取りできるスタンプを大量に提供し、同じようなニッチ市場を開拓。広告やスタンプの売り上げなどによって利益を出している数少ないメッセージングアプリのひとつだ。
 SNOWも順調にユーザーを獲得しているが、現在のところ、そこから利益を得る計画はないようだ。
 「まずは面白い機能やフィルターを追加していきたい」とキムCEOは話す。「今とはまったく異なるアプリへと変化していくだろう」
 テクノロジー関連情報を扱うTechCrunchによれば、フェイスブックやテンセント、アリババ・グループがSNOWに関心を示しているという。
 「確かに、多くの企業が関心を示している」とキムCEOも認めるが、同CEOは独立路線を貫くつもりのようだ。
 NAVERはソフトバンク・ベンチャーズ・コリアと共同で、コンテンツ分野の企業に出資する500億ウォン(約47億円)規模のファンドを創設。キムCEOは投資アドバイザーを務めることになっている。

ビジネス拡大か、一時的な流行か

 ライバルたちも手をこまねいているわけではない。Snapchat以外にも同様のアプリが次々と登場し、人気を獲得している。
 シンセン・リャンメン・テクノロジー(Shenzhen Lianmeng Technology)が開発した顔認識カメラアプリ「Faceu」や、自動メイクや動くステッカーなどの機能を満載したテンセントの「Pitu」は最近、中国の主要なアプリ市場でSNOW以上にダウンロードされている。
 カンターTNSのパクは「今のSNOWは、メッセージングアプリというよりはカメラアプリに近い。そうした単一機能では不十分かもしれない」と分析する。
 「ビジネスを拡大しなければ、一時的な流行で終わってしまうかもしれない」
原文はこちら(英語)。
(執筆:Hooyeon Kim記者、翻訳:米井香織/ガリレオ、写真:filadendron/iStock)
©2016 Bloomberg News
This article was produced in conjuction with IBM.