【加藤出】遂に露骨な株価操作。日銀、主要企業の大株主へ
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麻生太郎財務相が記者会見で「(日銀が)最大限の努力を続けることを大いに期待している」と踏み込む環境の中で決まった今回の追加金融緩和。9月に期待を持たせて市場と政府の失望を避けながら、マイナス金利の深堀り、国債購入増額、ETF購入増額という3つの柱の内でもっとも「軽い」ものを今回は選んだという印象です。
国債の大量購入で幅広い金利をマイナスにまで抑えつけ、日銀の国債保有は既に発行残高の30%、GDPの80%(米国FRBは25%)です。日銀が長期金利を金融政策の実質的な目標にすることにもう誰も疑問を感じません。しかし、企業の経済活動の土台である長期金利を日銀が直接操作することは、もともと禁じ手だったはず。
社債を買って、一般的な長期金利どころか個別企業の調達金利に直接影響を及ぼす禁じ手も簡単に乗り越えて、今では疑問の声も薄れています。
流石に個別企業の株式を買うところまではやらないまでも、ETFを買っていざともなれば個別企業の経営に直接的に嘴を挟みかねない状況まで生まれてしまった。
カンフル剤は一度始めると簡単には止められない。2年の心算で打ち始めたカンフル剤がずるずると量を増し、日銀が株価を金融政策の目標にしていると思われても仕方がないところまで行きついたのが今回の追加緩和です。
「現在の日銀の政策は、「痛み止め」の麻酔効果は非常に強いのだが、それゆえ我々が本来取り組まなければならない改革への意識は高まらないという弊害を招いている。数十年にわたって勢いを失った経済が、金融政策だけで持続的な復活を遂げた実例は世界に存在しない。」
記事が指摘する通りだろうと思います。アメリカ経済が80年代までの低迷から起き上がったのも、イギリスのサッチャー改革やドイツのシュレーダー改革も、現在の日本とは違い高めのインフレ率の中での改革であった点は見逃せません。経済の体温が真逆の状態でたとえ改革が順調に進んだとしてもこれらと同様の成果は望めないでしょう。だからこそ現在の日本では、環境整備のためにデフレからインフレに転換する必要があり、先進国平均並の経済成長をさせていく必要があるかと。そしてそのためには広義のヘリマネに近い経済政策が必須。インフレ期にはタブーでも、デフレ期では特効薬になり得るわけですから。ただ、先週の日銀金融政策決定会合でのETF買入額倍増は様々な憶測を呼んだ上に、2.7兆円と量的緩和の年総額80腸炎からすると小粒であったことは否めず、実体経済への波及もかなり限定的なものに止まるでしょう。その意味では追加緩和しないよりはましですが、本当は国債買入額の増額、量的緩和の拡大にまで踏み込んでほしかったところ。ただ、次回、9月の会合でこれまでを総括しつつ追加緩和も辞さない構えである旨を黒田総裁が会見でおっしゃっているので、そこでの動きに期待したいものです。