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小池百合子氏インタビュー(上)

小池百合子が語る「リーダーの覚悟」

2016/7/29
出馬表明に当たり、「(都議会の)冒頭解散」「利権追及チーム」「舛添問題の第三者委員会設置」の3つの公約を掲げた小池百合子候補。都政の透明化のために何をするつもりなのか、東京を世界一にするためにどんな戦略があるのか。男社会での勝ち方、リーダーとしての覚悟とあわせて話を聞いた(全2回)。
後編:「東京を世界一にする戦略」

内部告発の活用

──都議会の透明化、正常化のために最も大事だと思っていることは何ですか。

小池:まず情報をオープンにすることです。

今は都民のみなさんの都政に対する関心が低い。それは情報が十分に出ていないからだと思います。

予算の無駄がないか、東京オリンピック・パラリンピックの予算は適正なのか。そうした山積する課題に関して、情報公開を徹底していくべきだと思います。

──利権の追及も行うと明言しています。

そのためにも、まずは情報を入手しなければなりません。

たとえば、今はメディアが情報公開を要求しても、文書の肝心なところが黒塗りになっていることもあります。今後は、知事の権限の基に、情報を明確に出していきます。

ただ、情報公開の基準をあんまり細かくつめていくと、それに時間をとられてしまって、実行が遅くなってしまう。

ですから、すべての情報を出して、そこからみなさん調べてください、という形ではなくて、テーマや的を絞った形で情報を公開するようにしていきます。知事には情報公開の権限がありますから、そういう形で進めていくのが妥当です。

利権については、巷間で言われていることは多いですが、「具体的にどうか」という点は、当事者から情報を得ないと判断できません。利権の話は、当事者でないと具体的にならないと思います。

小池百合子(こいけ・ゆりこ) 1952年兵庫県芦屋市生まれ。1976年にカイロ大学文学部社会学科卒業。アラビア語通訳を経て、「ワールド・ビジネスサテライト」などでキャスターを務める。1992年、政界に転身し、参議院議員1期、衆議院議員8期当選。環境大臣、防衛大臣を歴任

小池百合子(こいけ・ゆりこ)
1952年兵庫県芦屋市生まれ。1976年にカイロ大学文学部社会学科卒業。アラビア語通訳を経て、「ワールド・ビジネスサテライト」などでキャスターを務める。1992年、政界に転身し、参議院議員1期、衆議院議員8期当選。環境大臣、防衛大臣を歴任

そのためには、英語でwhistle-blower(ホイッスルブロワー)と言いますが、内部告発者のような形がひとつ考えられます。

目安箱を置いて、匿名であれ実名であれ、情報を寄せてもらうのが、いちばん効果的なのではないかと思っています。もちろん、ある会社がライバルの会社を陥れるために内部告発を行うこともありえますので、情報の精査はしっかりやります。

都議会議員は、国会議員と違って、現業に近いという点で位置づけが異なる。それだけに、行政も議会も国政以上に透明性が求められます。

ボス化する内田氏

──小池さんは、自民党都連幹事長の内田茂氏を筆頭に、自民党都連の現在のあり方も問題視していますが、都政がブラックボックスになったそもそもの原因はどこにあると考えていますか。

やはり情報公開です。情報が閉ざされていることが大きい。

そして、都連の権威が高まりすぎてしまったのではないでしょうか。その一因は、基本的に、知事がしょっちゅう代わってしまったことにもあります。

──知事の力が弱いので、都連、都議会の力が強まってしまったということですか。

そう思います。

いろんな方に言わせると、(利害調整などの)交通整理をしていたのも内田茂さんだそうです。

一般的な話として、議会は予算の執行に対してストップをかける大きな権限があります。そのため、それぞれの局が予算を通したいときは、議会の承認を早く得るために、何らかの利便を図るケースがありえます。

幹事長の内田さんは、議員の公認権を持っていますから、国会議員でも内田さんを抑えられるような人はいません。今の内田さんはボス化してしまっているという人は多いです。

何よりも、内田さんが、(2009年の都議選で落選して)議員バッチを外していたときでさえ、幹事長を継続していたというのは驚愕です。

──現在のような「ボス化」を防ぐために、将来、「ボス化」を再発させないために、システムや仕組みとして何が必要ですか。

情報を外に出していくということだと思います。

たとえば、わたしは都連の会議に出席していません。そもそも、会議の日時・場所すら知らされていないので、行けるわけがないのです。そうしたことも含めて、情報をよりクリアにしていかないと、閉ざされた密室政治になるのではないでしょうか。

──今の時代に合っていないと?

時代にまったく合っていないですね。何でも情報を外に出せばいいということではないですが、やはり都民には知る権利があると思うのです。

若い国会議員は小僧っ子

──ボス化が生まれた背景には、自民党の抱える構造的な問題があるのですか。

国会議員のほうが地方議員に指示を受けているという構造があります。都連でもそういう状況です。以前、茨城県に超有名なドンがいて、話題になりましたが、それと似た面があります。

今はちょうど、地方のドンに世代交代の波が訪れているタイミングですが、より早く世代交代が起きたのが、衆議院議員や参議院議員の世界です。

今の衆議院議員や参議院議員は若い人も多い。とくに2012年の選挙で大量当選して、若い議員が増えました。
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そうした議員の中には、留学経験がある人も多く、サイン、コサイン、タンジェントといったお勉強はよくできるかもしれません。しかし、地元の混乱を収拾できるかというと、そうした人間関係のドロドロしたところには手を出さない。政治家としての足腰がまだ弱いのです。

各地域において、地方のドンからすれば、若い国会議員は小僧っ子なわけです。若い国会議員からしても、ドン、ボスのご機嫌を損なうと、やっていけなくなってしまいます。

その結果、地方のボス化が問題になってきているのです。ですから、今の国会議員が、どこまで地元に根ざしたものになるかが、これからの大きなテーマだと思います。

──地方議員だけでなく、国会議員側にも問題があるということですか。

そうです。それを打ち破ろうとしたのが、300小選挙区なのですが、結果として、小選挙区は、地方のボス化を助長したところがあります。

──今の都政は、国政に比べて何年ぐらい遅れていると思いますか。

今の都政は、1964年でしょうか。前回のオリンピックのときから、マインドが根本的には変わっていないように感じます。

──都政が変わらずにすんでいるのは、東京の成長がまだ続いているからですか。

それもひとつあります。

もうひとつ、地方議会は、女性議員の少なさが国政以上に深刻です。国会における女性比率は、193カ国中155位(出典)です。後ろから数えたほうが早い。女性議員の少なさも、透明性の欠如につながる原因ではないかと思います。

なぜ男社会で勝てたか

──自民党という男社会で、これまでどんな苦労をしてきましたか。過去のコラムでも、「永田町を動かすエネルギーと原理は、嫉妬の構造だと言われる。私はこの2文字をオンナ偏からオトコ偏に変えるべきだと以前から主張している。男の嫉妬ほど厄介なものはないからだ」と記しています。男社会を勝ち抜くためには何が大事ですか。

やっぱり、レギュラーなことはきちんとこなして、プラスアルファで競うということだと思います。

かわいこちゃんのうちはまだいいですが、男性と対等の立場のライバルになったとたんに、激しい競争になってしまう。引きずり降ろされかねません。

大事なのは、かわいこちゃんでやっているうちに、いかに、しっかりと力を蓄えられるかです。

──小池さんはなぜ男性に嫉妬されても勝てたのですか?

それは、私がオンリーワンだからかもしれません。

2005年、小泉内閣の環境大臣に就任(Photo by Junko Kimura/Getty Images)

2005年、小泉内閣の環境大臣に就任(Photo by Junko Kimura/Getty Images)

大事なのは、いつも新しい知恵を出したりして、ほかの人にはないプラスアルファを示し、「この人は不可欠だ」と思わせることです。選ぶのは任命権者なので、細かいところまではよくわかりませんが。

──小池さんのように、アラビア語ができるというのはプラスアルファですか。

そうです。オンリーワンを持つことで、この人がいないと困ると言わせることです。

サダト大統領と小泉首相

──リーダーとして参考にしてきた、影響を受けてきた人は誰ですか。

こう言うと首をかしげられるのですが、エジプトのサダト大統領です。サダト大統領は、エジプトのナセル大統領の後継で、わたしはサダト大統領時代にエジプトにいました。

写真:SADATE A JERUSALEM/GAMMA/アフロ

写真:SADATE A JERUSALEM/GAMMA/アフロ

サダト大統領は1977年にエルサレムを訪問し、議会で演説を行いました。要は、イスラエルとの和平に大胆に舵を切って進めていこうとしたのです。結果として、それが原因で、彼は1981年にイスラム原理主義者に暗殺されてしまいました。

何が言いたいかというと、「リーダーは命を落とすことがある」ということです。

──最近、ツイッターで小池さんに対する殺害予告があり、犯人が逮捕されました。

容疑者の人はよく知らないですけど、狙われているだろうなと思っています。

──内田茂氏ら都議会自民党との戦いも激しくなる可能性があります。

そうですね。ただ、私は都民のためになることであれば、本来は互いの利害は共通すると思っています。連携していくことは必要だと思いますし、その過程についても都民にお知らせしたいと考えています。

──小泉純一郎元首相は、田原総一朗さんに「あなたがもし本気で田中経世会と真っ向からケンカする、田中経世会をたたき潰すというなら僕は支持してもいい。ただしそれをやったら、あんた、暗殺される可能性があるぞ」と言われて、「殺されてもやる」と答えたそうです。それと同じ心境ですか。

そうですね。私に胆力があるかわかりませんが、これと決めていますので、ぶれずにやりたいと思います。

*後編「東京を“世界一”にするための戦略」は本日夕方に掲載します。

(撮影:小林正)

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