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地震対策こそ最優先だ

もしホリエモンが、都知事になったら

2016/7/27
今の東京が抱える「最優先課題」は何か。堀江貴文氏が提言する

地震対策を急ぐべき

小池さん、鳥越さん、増田さんの3人の候補者の中では、小池さんがマシじゃないですか。相対的に、小池さんがまともですね。

ほかの候補者は、ジャーナリストの上杉隆さんや、幸福実現党の七海ひろこさんのように、まともなことを言っている人もいますが、全体的にひどいという印象です。今回の選挙を見ていると、舛添さんをわざわざ代える必要はなかったという気もします。

政策面の話をすると、今の東京は儲かっているので、東京をよくするためというよりは、東京のダメな部分を改善することに力をいれたほうがいい。

喫緊の課題は、地震対策です。

地震はかなりの確率で東京にくるはずなので、これだけは、わりと早くやらないとダメです。

具体的には、下町の木造住宅。現在の耐震基準を満たしていない古い木造住宅は、地震が来たら必ず倒壊して、火災でかなりやられてしまうと思います。そうしたら、たくさんの人が死ぬことになる。
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それなのに、耐震化が遅れているのは、「木造住宅の人たちに無理やり耐震対応させるのはかわいそう。個人宅だから手を付けられない」と思っているからでしょう。本気でやろうとしていない。これはリーダーシップの問題です。

だから、規制を強化して、都がお金を出してでも、すべての建物を、耐震基準を満たす建物につくり直すべきです。東京都の予算に余裕があるのであれば、お金をかけてやればいい。

もっと言うと、規制を強化してガスを使えなくすればいいし、代わりに電磁調理器などを使えばいい。そして電気設備が古い木造住宅は、電気がショートして発火するリスクがあるので改善すべきです。

結局、阪神・淡路大震災でも、家屋が倒壊してなくなった人たちよりも、火災でなくなった人たちのほうが明らかに多かった。

逆に、地震が起きても、横揺れで高層ビルが倒れたことはありません。それは過去の歴史で証明されています。

都心の高層マンションは、もともと耐震構造だし、食料も十分備蓄されている。六本木ヒルズに至っては、自分たちで発電までしています。ガスタービンの発電機が1階にあって、排熱も利用している。だから、地震が起きてもびくともしません。

すべての住宅がヒルズのようになっていれば、地震どんとこい、ですよ。

自家発電を行う六本木ヒルズ。電気の販売も手がけている

自家発電を行う六本木ヒルズ。電気の販売も手がけている

首都高をリノベせよ

小池さんは、「住宅の耐震化・不燃化を2020年までに加速させる」と公約で掲げているので、その点は期待しています。

もうひとつ、小池さんが強調しているのが、電柱の地下への埋め込みです。これを小池さんは10年ぐらい前から言っています。

僕は、小池さんが環境大臣時代に実施したクールビズの政策を高く評価しています。

なぜかというと、クールビズというワンフレーズで、都心のサラリーマンの服装をガラリと変えたからです。これまで誰もできなかった、「スーツを脱ぐ」「ネクタイを締めない」ということを、全くお金をかけずにやったからです。この功績はすばらしい。

当時、そうしたことをブログに書いたら、小池さん側が喜んで、話をぜひ聞きたいということになった。そのときに、「電柱の地下化をやりたい」という話を小池さんから聞いて「ぜひやりましょう」ということで盛り上がったんです。

しかし、電柱の地下化に関しても、「できない言い訳」ばかり聞こえてくる。お金がかかるとか、業者が足りないとか、時間が足りないとか、絶対無理だと言う人もいる。

僕は、電柱の地下化はすごくいいと思うし、小池さんが提唱している「町会・消防団の機能を高め、支援する」という政策もいいと思う。やると決めたらやれるはずです。

もうひとつ大事なのは首都高です。

もともと老朽化が進んでいる上に、結構、お堀の上に建っている。建設当時、首都高は建てる場所がなかったから、ウルトラCで河川の上に建てることになったのです。

これは、防災的にも、景観的にもよくないので、首都高もある程度お金をかけてリノベーションすべきでしょう。

堀江貴文(ほりえ・たかふみ)   1972年福岡県生まれ。実業家。ライブドア元CEO。民間でのロケット開発を行うSNSのファウンダー。東京大学在学中の1996年、23歳のときにオン・ザ・エッヂ(後のライブドア)を起業。2000年、東証マザーズ上場。2006年1月、証券取引法違反で逮捕され懲役2年6カ月の実刑判決を下される。2013年11月に刑期を終了し、再び多方面で活躍する。

堀江貴文(ほりえ・たかふみ)  
1972年福岡県生まれ。実業家。ライブドア元CEO。民間でのロケット開発を行うSNSのファウンダー。東京大学在学中の1996年、23歳のときにオン・ザ・エッヂ(後のライブドア)を起業。2000年、東証マザーズ上場。2006年1月、証券取引法違反で逮捕され懲役2年6カ月の実刑判決を下される。2013年11月に刑期を終了し、再び多方面で活躍する。

2階建て電車とホームを導入せよ

ほかに、小池さんがいいことを言っていると思ったのは、「満員電車をゼロにする」という話です。

そのためにどうするかというと、複々線化はあまり現実的ではない。だから、まずは、時差出勤とか、残業ゼロとか、ワークライフバランスとか、働き方の改革が大事になります。クールビズ的な発想で、働く時間を変えていくわけです。

たとえば、在宅勤務やテレワーク的な流れを取り入れていくことも大事だし、都心に住むと税金が安くなるような仕組みを入れるのもありだと思う。

以前、ライブドアでも、会社の近くに住むと家賃を半額補助するようにしたら、近くに住む人が増えました。これを都の規模でやって、都心に住むと有利になる税制、システムをつくればいい。

満員電車ゼロのためには、「2階建て車両の導入」も効果的でしょう。

世界では2階建て車両は珍しくない(写真は、スイスの2階建て車両)

世界では2階建て車両は珍しくない(写真は、スイスの2階建て車両)写真:iStock.com/Christa Brunt

さらにドラスティックなアイデアとしては、2階建て電車にあわせて、ホームも2階建てにするという考えもあります。世界で最初の2階建てホームをつくればいい。

路面電車を復活せよ

電車の運転間隔をもっと短縮することもできます。

実は、今の鉄道は安全マージンを多くとって運転している。いまだにプリミティブな信号方式をとっています。

鉄道の信号は区間信号になっていて、一定の区間内に、列車が1本しか入らないという仕組みになっている。そのため、必然的に、運転間隔が長くなってしまいます。しかし、最新の技術を使えば、ピーク時の運転間隔を短くすることは可能です。

その意味でも、都心には路面電車を復活させていいと思う。

路面電車やLRT(次世代型路面電車)には、いわゆる鉄道の信号がないので、運転間隔を短くできます。そうして、LRT、専用道路などがそろってくると、運転間隔が短くなって公共交通の利便性が上がるので、どんどんそちらを使うようになるはずです。

シドニーの街を走るLRT(次世代型路面電車)。世界中の街でLRTが増えつつある

シドニーの街を走るLRT(次世代型路面電車)。世界中の街でLRTが増えつつある

ほかに、交通システムと言えば、自動運転車の導入も進めるべきです。

東京都は、山手通りの内側を、「自動運転以外は乗り入れ禁止」にしてもいいと思う。時期尚早という人もいますが、結局は、やるかやらないかの問題です。山手通りの内側が難しければ、明治通りの内側だけでもいい。

最後に、高速道路もETCがあるので、時間帯などに応じて値段を変えることもできる。

こうした一連のやり方を組み合わせたら、満員電車はきっとなくなると思う。

横田基地を利用せよ

ほかに重要なテーマは、やっぱり待機児童の問題です。

解決のためには、設置基準を緩和して保育園を増やしやすくして、人材面でも「保育士でないとダメ」というルールをゆるくすればいい。

さらには、ウーバー、AirbnbのようなP2Pのマッチングアプリを作って、保育関連の新しいサービスを始めることもできるはずです。

加えて、世界から東京にどんどん優秀な人が来るように、税金を安くしたほうがいい。所得税、法人税を下げて、企業や個人を呼び込んでいかないといけません。

世界からの旅行客を増やすためにも、羽田空港をもっとよくする必要があります。ビジネスジェットはやはり羽田の相性がいい。

すでに羽田は国際化していますが、まだ成田空港との綱引きがある。ただし、これまでは、米デルタ航空など、成田に利権をもっている米国の航空会社のロビー活動もあって苦戦していましたが、今度やっと、アメリカ東海岸路線が羽田に昼間に就航することになりました。

航空分野に関連して言うと、横田基地問題、横田空域問題も重要です。

石原慎太郎さんも言っていましたが、横田基地を軍民共用化すればいい。横田基地には、4000メートルぐらいの立派な滑走路があるので、横田基地を軍民共用化すれば、多摩地区の経済発展にもつながるはずです。

多摩をコンパクトシティ化せよ

横田空域問題の歴史は長くて、石原さんの時代に一部が返還されました。しかし、まだ多くは米国の占領下にあります。ほかに、無線にも米軍の周波数帯があって、電波もまだ占領されています。

つまり、空域と電波をかなり米軍が持っているので、それは返してほしい。もう米軍もいらないでしょうから。それと、多摩地区には米軍のゴルフ場もあるので、それも返してほしい。

ただし、もし横田基地の軍民共用化や返還が進んでも、多摩地区のこれからの見通しは厳しい。多くの候補者が多摩地区と23区の格差を問題にしていますが、それを解決するのは難しいでしょう。

結局、多摩地区はコンパクトシティ化を進めるしかありません。ある意味、「もう山奥にはインフラを整備しない」と言い切って、強制移住に近いことをする必要が出てくるのではないでしょうか。

今は、都心では容積率が緩和されたり、空中権の売買が認められたりして、都心のリノベーションが進んでいます。その結果、都心に人口をもっと集積させることが可能になってきています。

交通網とか渋滞という点でも、東京は非常に優れています。世界中を旅行していても、世界の都市の渋滞はすごいですが、それに比べると、東京は全然渋滞していないと感じます。

とにかく、東京はもうすでに世界一になっていますが、もっとよくできる。東京がもつポテンシャルは、本当に大きいですよ。

(写真:遠藤素子)

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