(Bloomberg) -- かつて日本での投資実績があった米ファンド・オブ・ファンズのスカイブリッジ・キャピタルは現在、日本市場で運用するヘッジファンドには投資していない。レイ・ノルト最高投資責任者(CIO)は、「今の環境では結果に自信を持って日本の資産を運用することは難しい」と、その理由を話す。

日本市場で運用するヘッジファンドのことし上半期(1-6月)の運用成績は世界的に悪く、シンガポールの調査会社ユーリカヘッジによるとマイナス5.1%。世界のヘッジファンド全体の平均1.1%を大きく下回った。年明け以降の中国株の急落や世界景気への不安、円高進行などを受け、主な運用先の日本株市場の下落が影響した。

シカゴ拠点の調査会社ヘッジファンド・リサーチ(HFR)によると、日本市場で運用するヘッジファンドの運用額も減少。3月末時点で2015年6月末比14%減の262億ドル(約2兆7700億円)と、昨夏以降は資金流出が拡大している。

TOPIXの年初来騰落率は6月末時点でマイナス19.5%と、世界の主要94指数の中でワースト2位だった。1月には日本銀行がマイナス金利政策を導入したにもかかわらず、中国経済の変調や英国民投票で欧州連合(EU)離脱が選択されたことなどを受け、リスク回避の円高が進行、株価を押し下げた。マン投資顧問・マネジャーリサーチ部の佐藤素行部長は、「日本の株式市場の不振は突出している」と語る。

ロング型は傷深く

日本株運用のヘッジファンドの主流であるロング・ショート戦略は「ある程度の買い持ち(ロング)にポジションを傾けている運用者が多く、全般的には株価下落の影響を受けた」とマン投資顧問の佐藤氏は指摘。さらに「ロングオンリーのアクティビスト(物言う株主)的なファンドであれば、マイナス幅は拡大する」と、ヘッジファンドリサーチの米アクシアでアジア地域を統括する鷲尾学氏は指摘する。

日本株ロング・ショート戦略では、あすかアセットの上半期リターンはマイナス10%、オランダのペラルゴスのファンドは同マイナス2.3%だった。アクティビスト型ではシンフォニー・フィナンシャル・パートナーズのファンドが1-5月でマイナス16%、シンプレクス・ジャパン・バリューアップファンドの上半期収益はマイナス19%と、マイナス幅が一段と大きかった。

ここ数年は超低金利が続き、債券運用の投資家が代替として日本の株式市場でディフェンシブ銘柄や、割高でも値動きが安定した銘柄へ投資する動きが活発化。今年にかけての株価下落でさらにリスクオフの流れが広がり、こうした銘柄の人気に拍車がかかった。このため割安指標が機能しない状態が続いている。

佐藤氏はマイナス金利の環境下で「株式投資の意味そのものが変質した可能性も否定できない」と指摘。今後、債券代替としての投資需要がさらに拡大し、バリュエーションを無視した状況が続くシナリオも想定する。ただ、世界的にリスクオンモードに転じれば、海外投資家の資金が継続的に流入し「バリュー不振の状況は変わる」とみている。

(第7、8段落を追加しました.)

--取材協力: Suzy Waite

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