余暇の充実はココロの充足
【プロピッカー・山野智久】遊びの選択肢をITの力で最大化する
2016/7/22
事業は3本柱
7月からプロピッカーに任命頂きました、アソビュー代表の山野智久と申します。
アソビューという会社は、プラットフォーム事業として、BtoC領域では、遊びのマーケットプレイス「asoview!(アソビュー)」の運営、メディア事業として遊び、旅行の情報を掲載するasoview! NEWS、asoview! TRIPの運営、BtoB領域では、satsukiというレジャー施設向けのバックエンドシステムの提供を3本柱としています。
その中でも我々の事業の割合として一番大きいサービスが「asoview!」です。
インターネットが誕生してから、モノの販売を行うマーケットプレイスはAmazonやヤフーショッピングなどがあり、宿泊や飲食店の予約をインターネット上で行うサービスECも存在していました。
ただ、”遊び”という分野でのマーケットプレイスは存在していませんでした。我々はここに目をつけ、事業を行っています。
累計30万部のフリーペーパー
私は千葉の柏という街で、大学の2年のときから、サブカル・ファッションを中心とした「En’s」というフリーペーパー事業をやっていました。
当時は、大手メディア企業が主にクーポンをコンテンツにしたフリーペーパーを展開していました。
しかし、居酒屋でアルバイトをしていた私は「クーポンでお客さんに来てもらっても、リピーターにそこまで繋がっていないし、利益率を圧縮している。それに読んでいてもあまり面白くない」と感じたんです。
そこで「地域密着のストーリー性や取り上げるお店のオーナーの独自性、デザインのクリエイティビティがあれば、もっと読まれるフリーペーパーになる」と考えたことが、事業を起こすきっかけになりました。
実際に作ってみたら人気が出て、累計30万部を発刊するまでになりました。我々のフリーペーパーには編集方針があり、オーナーのこだわりやセンスが見えるようなコンテンツしか掲載しないと決めていました。
また、読み物系のコンテンツも大事にしていて、2004年にスマトラ沖地震が発生したときは、すぐに現地に行って取材し「柏の街としてできることは何か」という記事を掲載。メンバーは学生が中心ではありましたが、ライター、デザイナー、営業と分野別にスタッフがいて、「プロ意識」をもって取り組んでいました。
その中で、私は代表として、営業、企画、取材、編集、マネジメントなど出来ることは全てやっていましたね。
起業するからには人生を賭ける
フリーペーパーをやっていたころは、事業全体を自分の意思決定のもとで動かせ、やりがいもありました。
収入も、アルバイトで得られる稼ぎ以上はあったのですが、このままでは「我流でレバレッジが効かないのではないか」という思いがあり、社会に大きな価値を提供できないと考えるようになりました。
そんなとき、「社長輩出企業」と呼ばれていた”リクルート”に出会い、3年で辞めて起業すると決めて入社。主に「リクナビネクスト」に関わりました。
そして退社後、2011年3月にカタリズムという会社を作ったのです。(2014年3月にアソビューに社名変更)
この時点では、具体的な事業内容は定まっていませんでした。ただ、起業するからには人生を賭けて、志を持ってやりたいと考えていました。
そこで事業を検討するにあたり、
「世の中にない価値を提供する」
「社会の役に立ち、人々が幸せになれるような事業をする」
「成長産業(IT分野✕◯◯)で勝負する」
という3つの軸で考えてみることにしました。
人の幸せとは、モノとココロの両面が満たされている状態だと思います。今の日本は経済成長しているということもあり、モノは満たされていますが、一方で必ずしもココロが満たされているとはいえません。
しかし欧米に前例があるように、経済成長が進むとココロを満たしていきたいというニーズは必然的に高まると考えました。
では、ココロを満たすためにはどうすればいいのか。人々が自由に使える時間、つまり余暇の充実がココロの充足に繋がるし、日本の経済にも良い影響があるのではないかと仮説を立てました。
そして余暇の過ごし方の代表格とも言える「旅行」を軸に100人にアンケート調査をしたところ、9割以上の人が「旅行先で何をすれば良いか分からない」と答えたのです。
確かに、旅行の際の交通手段や宿泊地、現地でのグルメは簡単にインターネットで検索することができますが、現地で何をするかは中々探すことができません。
日本は豊かな自然や多様な文化といった魅力にあふれているのに、それが十分に情報発信されていない。そこから、「asoview!」の構想が生まれました。
起業家の中には天才的な閃きを持っている人もいますが、私はそのようなタイプではなく、仮説を持って一つ一つ事業に落とし込んでいくタイプだと考えています。
実際に「asoview!」のサービスを展開する中で、実は地元の人にも知られていない魅力がまだまだ日本中に埋もれていることに気付き、旅行の時だけではなく、より身近な「休日の過ごし方」を解決するサービスへと成長させることとなりました。
また、フリーペーパーを運用していた時もリクルートで働いていた時も、起業した後も変わらないことがあります。それは、クライアントの課題とユーザーの課題、その双方の課題を解決することで収益になるモデルが自分にとって一番しっくり来るということです。「asoview!」のビジネスモデルにもその概念を落としこんでいきました。
最新のIT対応をアソビューが担う
具体的にやったことは、まず各地域のレジャーの紹介を「asoview!」の中に掲載し、統一フォーマットで比較検討できるようにしました。それまで各地域のレジャーのサイトは90年代後半から更新されていないようなものも多く、見ていても疲れるし、比較検討も難しい。
実際に統一フォーマットとして掲載することにより、事業者、ユーザー双方からのいい反応がありました。
昔はIT対応といえばホームページさえ作ればよかったのかもしれませんが、インターネットの技術が発達すると、SEO対策やスマホ対応などをする必要があります。
こうなってくると、地域の事業者さんやレジャー産業の人たちでは、なかなか対応が難しい。
それは、仕方がない面もあると思いますし、そもそも地域の事業者さんは本業である接客やスタッフのマネジメントに注力すべきだと考えます。
そういった現状の中で「最新のIT対応をアソビューが担ってくれるなら、こんなに嬉しいことはない」という地域の事業者さんの声を多くいただき、それが実際にビジネスになりました。
我々が提供している「asoview!」の世界は、余暇の課題解決を提供したいと考えています。
では余暇とは何か。私は「生きるために必要な経済活動」「食事」「睡眠」の3つ以外は余暇の時間だと考えています。では、人は余暇の課題解決をどこで行うのか。そのひとつの選択肢として「自分の生活圏外」があるのではないでしょうか。
つまり、都心の人が地域に行った時、地域の人が都心に行った時に余暇の課題解決が行われる可能性がある。これは地域の人々にはチャンスですよね。東京だけでも1300万人の人口がいるわけですから。
最近では、自治体からも「各地域の観光資源を活かしたレジャーや体験を取りまとめて、アソビューの中で発信するようにして欲しい」という依頼をいただくようになりました。
ここから「asoview!」をプラットフォームとして、「地方創生」という展開もどんどん広がってきています。
地域ビジネスに必要なこと
各地域を見る中で思うことは、地方にはアイデアはありますが、実行力と労働生産性が課題となっているケースが多いということです。
例えば、認知・集客を一つ例にあげても、まだチラシで集客をしている事業者が多い。
チラシが悪いとは言いませんが、一定数をインターネットに切り替えることで生産性が上がることは自明です。
現状の生産性が低いということは、伸びしろがあるということでもあります。我々はこういった点からも各事業者にサポートをしています。
例えば、鳥取の浦富海岸にシーカヤックの事業者さんがいるのですが、我々が「asoview!」への掲載、そしてバックエンドのシステム導入でお手伝いをさせていただきました。
すると、集客が昨対比で約2.5倍、システム導入により生産性も2倍ほど向上しました。このような事例が他にもたくさんあります。
我々は現在、80ほどの自治体とビジネスをしています。
地域の資源を活かした観光商品の開発やクオリティの向上、そしてプロモーションだけでなく、時には地域の観光組織の立ち上げ支援やKPIの設定、マネジメントまでご依頼を頂くことがあります。
ただ、成果を出すためには、私たちの力だけでなく、やはり、いかにトップが志を持ち、強いリーダーシップを発揮できるかにかかっています。
その意味でも、プロピッカーで三重県知事の鈴木英敬さん、千葉市市長の熊谷俊人さんなどには注目しています。
プロピッカーとして
今後はプロピッカーとして、専門領域である地域ビジネス、観光やレジャー産業について積極的にコメントをしますが、地方自治にも関わる政治分野にもなるべくコメントをしていきたいと思っています。
ビジネスの世界で政治の話はタブーをされることもありますが、私はやはりそれはおかしいと思うようになりました。特に地方はビジネスと政治が密接に結びついていますし、現場を見ている経営者として、タブーを恐れず自分の意見を言っていきたいと思います。
もちろん、ITや起業、イノベーションといった分野にもITのスタートアップの経営者なのでちゃんとコメントしていきます(笑)。