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ピッカーからの質問に対する回答は

【椎木里佳×奥田愛基】SEALDsの“功罪”と若者の政治参加を考える

2016/7/9

7月10日、第24回参議院議員通常選挙が行われます。いわゆる「18歳選挙権」が導入されてから、初めての国政選挙としても注目されています。

NewsPicksコミュニティチームでは、若者の政治参加や18歳選挙権について、椎木里佳氏の新著『大人たちには任せておけない! 政治のこと 18歳社長が斬る、政治の疑問』から、SEALDs・奥田愛基氏との対談を【椎木里佳×奥田愛基】同世代対談「18歳の選挙」がはじまる!として、転載。

コメント欄で二人に対する意見を募集する企画を行いました。

その結果、SEALDsの活動に対する疑問などを中心に、数多くのコメントが集まりました。

奥田氏は近著『変える』でも自身の政治活動などを振り返っていますが、今回、改めて椎木氏と奥田氏に、寄せられた質問に答えてもらいながら、若者の政治参加について語り合ってもらいました。

SEALDsの功罪

――前回の記事には、たくさんの反応がありました。そこで寄せられた質問を中心にして議論する形式にしたのですが、コメント欄はご覧になりましたか。

椎木:見ました?

奥田:見ました。何か大変な感じになっていたなというか……。

椎木:あはは。そういえば、NewsPicksに記事が出る前に、奥田君に連絡したんですよ。そうしたら、結構心配していて。私も炎上するだろうなと思っていたら、案の定というか。

奥田:僕と対談したことで、椎木さんに迷惑がかからないか不安です……。

椎木:全然。私も見ましたけど、「いろんな意見を持つ人がいるな」ということが一番ですね。一番印象に残っているのは、徐東輝(そぉ とんふぃ)さんとたかまつななさんのコメントだった気がします。

奥田:僕に対しては、細かいポイントを聞く人もいましたけど、基本的には「デモや批判のやり方が気に入らない」「調子に乗らないでほしい」「若者の代表みたいに言わないでほしい」というところですかね。

――今回、最も反響を呼んだのは、椎木さんからも名前が挙がった、とんふぃさんのコメントでした。「SEALDsによって前進した点は何か。また後退した点や衆愚も生み出したのではないか」などの質問が寄せられましたが、この点から教えてください。

奥田:前進した点は、これまでは政治に対して傍観者だった人が自分の意見を言ってみたり、もっと調べたりする動きが生まれたことじゃないでしょうか。立憲主義について高校生が考え始めるなど、リテラシーが高まった点はあると思います。

弊害で言うと、僕らの意図とは別に「SEALDsがこう言っている」というように、僕らがメディアなどで“使われる”ことも起きてしまったことです。

それがデマで拡散されたり、まとめサイトに載ったりして、どんどん広がっていきました。だから、まとめサイトを読む人たちは、僕らを害悪だと感じていると思います。

タイトルだけ煽る記事も多くて、そこだけ見て批判してくる人も多い。酷い時には、「それが実はデマでした」と終わる場合もあって、そんな記事あっていいのかと思うこともあります。

陰謀論とかもすごいですからね。ネットで検索すると、CIAの手先で、ロシアともつながっていて、共産党のスパイで、とか。

奥田愛基(おくだ・あき) 1992年生まれ、福岡県出身。明治学院大学国際学部卒業。東日本大震災の支援活動を経て、政治運動について考える学生団体「TAZ」、「SASPL」などを設立。2015年5月に、「SEALDs」を結成した。同年12月、政党への政策提言などをおこなう一般社団法人「ReDEMOS」を設立し、2016年夏の参議院議員選挙をもって「SEALDs」は解散すると発表。現在は、大学院で政治学、政治活動などについて研究している。著書に『変える』(河出書房新社)、共著に『高橋源一郎×SEALDs 民主主義ってなんだ?』(同前)、監督・製作した映像作品に『生きる312』(2013年、国際平和映像祭でグランプリほか受賞)などがある。

奥田愛基(おくだ・あき)
1992年生まれ、福岡県出身。明治学院大学国際学部卒業。東日本大震災の支援活動を経て、政治運動について考える学生団体「TAZ」、「SASPL」などを設立。2015年5月に、「SEALDs」を結成した。同年12月、政党への政策提言などをおこなう一般社団法人「ReDEMOS」を設立し、2016年夏の参議院議員選挙をもって「SEALDs」は解散すると発表。現在は、大学院で政治学、政治活動などについて研究している。著書に『変える』(河出書房新社)、共著に『高橋源一郎×SEALDs 民主主義ってなんだ?』(同前)、監督・製作した映像作品に『生きる312』(2013年、国際平和映像祭でグランプリほか受賞)などがある。

椎木:みんな好きですよね。そうやってつなげたがるの。

奥田:それに、元々批判的だった右の人たちだけでなく、左の人もSEALDsに寄りかかってきてしまった。

たとえば、東京新聞は、高校生未来会議の参加者募集に関する記事を出したときに「シールズ高校生版に対抗?」と見出しをつけ、主催者側を「首相シンパ」と書いたんです。

主催したのはリビジョンという団体の斎木陽平君。安倍首相に近い考え方で、僕とは方向性が違うんですけれど、SEALDsの名前を出して、そんな書き方をしなくてもいいじゃないですか。ちゃんと取材をしたのかなと思ってしまう。

そこには色んな学生が参加していて、みんな考え方は違います。女子高生未来会議をつくった町田彩夏さんも疑問の声を上げていたけれど、こういうことをされたら政治に関わりたくないと感じてしまう。

何で日本の政治参加が難しいかと言ったら、色々言われるので割に合わないんですよね。何もせずにネットに書き込んでいる方が楽だから。

椎木:確かに、自分が「この政治家が好きだ」とツイッターで書いたら、それだけでネット上で右翼だとか左翼だとか言われてしまう。そういう風潮をなくすためには、右や左というくくりをなくすことが大事だと思います。外国ではセレブや芸能人が支持を表明することは普通だけど、日本の芸能人が発言できないのは「右翼だ、左翼だ」などの批判を気にしているからだと思います。

奥田:あと、SEALDsや安倍政権を「好きか嫌いか」だけでジャッジする人が生まれたかもしれません。安倍政権が嫌いな人の中には、「それは当てはまらないんじゃないの?」という批判をする人も出てきてしまったと思います。

椎木:メディアを通してしか判断できない人の中には、SEALDsを肯定的に扱っているニュースを見て「SEALDsは素晴らしい!」って、何も考えずに全面的に受け入れちゃったケースもあるんじゃないかな。それは、ちょっと違うなと感じます。メディアを鵜呑みにするのは結構危険なことだと思っていて、情報を取るのはいいけど、その後に自分の頭で考えて、情報を疑う作業も必要だと思います。

でも、こういうことはSEALDsの問題に限らないと思うんですよね。

たとえば、舛添都知事の件をみても、「続投で良い」と報じるメディアは本当に少なかったし、テレビで発言する人もほとんどいなかった。そういうとき、「メディアがダメだと言ったから」と、そのまま鵜呑みにしてしまう人は一定数います。

だから、SEALDsのせいで衆愚が増えたというよりも、報道だけを見て信じてしまう人が、メディアに引きずられてしまったんじゃないかと思います。

椎木里佳(しいき・りか) AMF代表 1997年生まれ、東京都出身。中学3年生(15歳)で株式会社AMFを創業し。以来、全国70名からなる女子中高生マーケティング集団『JCJK調査隊』の企画運営や、スマホアプリの開発などを手がける。現在、慶應義塾大学在学中。著書に『女子高生社長、経営を学ぶ』(ダイヤモンド社)、『大人たちには任せておけない! 政治のこと 18歳社長が斬る、政治の疑問』(マガジンハウス)がある。

椎木里佳(しいき・りか)
AMF代表
1997年生まれ、東京都出身。中学3年生(15歳)で株式会社AMFを創業し。以来、全国70名からなる女子中高生マーケティング集団『JCJK調査隊』の企画運営や、スマホアプリの開発などを手がける。現在、慶應義塾大学在学中。著書に『女子高生社長、経営を学ぶ』(ダイヤモンド社)、『大人たちには任せておけない! 政治のこと 18歳社長が斬る、政治の疑問』(マガジンハウス)がある。

「嫌い」で終わりにしたくない

――コメント欄では、SEALDsに批判的な意見も多く、「SEALDs大っ嫌い」というコメントが反響を呼びました。

椎木:多くの人が、色んな人間がいることを個性としてとらえればいいのにと思います。

私は「嫌い」というワードをあんまり使いたくなくて、「SEALDs嫌い」ってバリアを張るんじゃなくて、「こんな若者もいるんだな」って言える人が、どうして少ないんだろうと思います。

私は、自分と考え方が違っても、「世の中にはこういう人もいるよね」と、あんまり気にしていないです。

奥田:僕も自分とは政治的な考えが全く違う人とも話しているんです。小林よしのりさんとか。だけど、会うと普通に話せるし、共通の話題もある。もちろん、SEALDsについては「許すまじ」と思っているだろうけれど(笑)。

僕は考え方なんて凸凹でいいと思います。誰かの発言を聞いて、気に入らないときもあるだろうけれど、色んな人が色んな形で政治に参加することが一番大事ですから。

「嫌い」だけで終わっちゃうのは、悲しいなと思います。
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「若者代表」ではない

――「若者=SEALDs」という見方に違和感があるという声がありました。また、椎木さんが対談で「同世代の子たちは、かなりSEALDsの影響を受けてる」と発言したことに対して、「同世代で影響を受けてない」というコメントも寄せられました。

椎木:年上の人たちが、私たちを若者の代表としてくくりたがっているようにも思います。それを見た人が「椎木や奥田みたいなのをメディアは扱いたがる」「話題性ばかり気にしやがって」と勝手に解釈して批判してるんじゃないかなあ。私たちにはそんなつもりはないんですけど。

奥田:きっと、日本の若者の政治参加が少ないからSEALDs=若者という見方をされてしまうんだと思います。

僕が外国特派員協会で話した時は、外国人記者の方に「何でこの活動が注目されているのか分からない」と言われました。外国ではデモをすることや、政治的な立場を表明することは一般的だからです。もっと色んなグループがいれば、大勢の一部だったと思います。

僕としても、若者をひとくくりにしたり、されたりするのは一番嫌だったことです。

だから、SEALDsが若者代表であると言ったことはありません。地元の友達の中には「奥田君、何やっているの」「デモなんか意味ないじゃん」という子もたくさんいますから。

デモにおいても「我々は!」と訴えるようなスピーチはしたくありませんでした。参加者一人ひとりが違うんだから、我々とくくりたくない。SEALDsのメンバーにもいろんな人がいます。「奥田と一緒にするな」と言う人もいるくらいです(笑)。

そこで、スピーチするときの主語は“私”にしようと言っていました。

椎木:影響については、そもそもあの記事を読もうと思ったり、SEALDsを意識している時点で、何らかの影響を受けているんじゃないかと思います。

――「意識高い系」というコメントもありました。

奥田:それは、あるかもしれないですね。ただ、もっと多様な面があると思います。僕は「テレビに出て目立ちたいんです」と言う気持ちもないですし、何より“日常が大事”なんです。

実際、去年の9月からは卒論と院試の準備で忙しかったので、テレビの取材もほとんど断っていました。他のメンバーも、大学生なので、デモよりバイトや就活を優先することも多いんです。

こう話すと「普通のことを言いますね」と言われるんですけれど、あまりにも自分と違う人たちだと思いすぎているんじゃないかな。SEALDsのメンバーを何人か集めたら、「こいつ、自分の近くにいるかも」って思う人がいるはずです。

デモ批判に対する答え

――「批判だけしている」「批判をするなら代替案を出すべき」というコメントも目立ちました。

椎木:その点は、確かにそう思いますね。私が父から受けた教えもそうなんです。子供の頃、物事や人に対して「あれはダメ、好きじゃない」と言うと、「じゃあどうすれば、それが改善すると思う?」といつも聞かれていました。

その時、私が「わかんない」と言うと「だったら、そんなこと言わない方が良い」と教えられたんですね。その通りだなと今も思っているので、代替案が思いつかなかったら批判はしないです。
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奥田:安保法制で言えば、あのときに具体的な代替案を出していた人もいたと思うけれど、「まずはちょっと冷静になって。もう一回考えてみませんか」と訴えたのも一つの代替案だったと考えています。実際、審議の時間を伸ばすことはできたと思います。

日本の国会の審議における制度が、もっと政策が大幅に修正されるように機能していればいいと思うんですけれどね。議会で多数派を占めていると多少は修正されるけれど、基本的にはそのまま通ってしまいます。

もちろん、制度的に間違っているものをより良くした代替案を出すことには賛成です。

僕らは、去年の12月に一般社団法人「Re:DEMOS」を立ち上げて、政策提言についても考えています。

――デモという方法に対する批判のコメントも目立ちました。

椎木:賛否あるだろうけど、SEALDsがいなければ、安保法制の問題があれほど騒がれなかったのは断言できると思うんです。デモは「時代錯誤」だというコメントもありましたけど、ネット上だけで活動していたら、何の話題にもならなかったと思います。

アナログなデモをやりながら、ラップを使ったり若者らしいやり方を取り入れたりすることで、大きく注目されたと思います。

奥田:先進国では、現政権の議席数と個別のイシューに関する世論の間で、かい離がある場合にデモが起きることは普通です。野党も信頼できない中で、自分たちが思っていることを伝える手段だと思います。

それに、国内で100個イベントをやったとしても、あのような大きな動きにはならなかったと思います。

日本でデモが起きにくいのは、政治は政治家に任せるというのが強いからじゃないでしょうか。

ただ、議会制民主主義とデモを対立させているわけではありません。議会制民主主義の前提でデモをやっているので、声を上げること自体は悪いことではないんじゃないかという感じです。

――SEALDsは「近寄りがたい」「なぜ過激な文句を使ったのか」という指摘もありました。

奥田:僕も最初はデモに違和感はあったから、そう思う気持ちは分かります。原発デモも「どうなんだろう」と思っていましたから。

僕自身のことで言うと、安倍首相は権力を持っている立場だから「辞めろ」とは言いますが、「人間を辞めろ」とか「死んでくれ」といったことは一度もありません。

コールする人によっては「安倍辞めろ」と絶対言わない人もいるくらいです。

それに、デモ中は全員が叫んでいるわけじゃなくて、半分くらいは聞いているだけなんですよね。

デモには多様性があるんだけれど、それが伝わっていないのかもしれません。

――デモを続ける中で、考え方に何か変化はありましたか。また、そこで得たものは。

奥田:僕たちは元々デモばかりやっていたわけでもなくて、「デモという方法もあり」と考えていました。実際、国会の閉会後は、その周辺でデモをしていません。

ただ、デモをやる中で、色んなことを考えてきました。「どうやってスピーチをしようか」と練習したり、「どの問題を訴えようか」と勉強会を開いたり、ネットの情報発信の仕方も取り組むなかで、ノウハウがたまってきました。

そこで積みあげられた“見せ方”は、デモ以外にも転用可能だと思います。SEALDsは野党共闘を支援していますけど、選挙演説やHPのレイアウト、ツイッターの活用などにも使えるなと感じていますし、実際に取り入れています。

政治家によっては「まずは演説の日程をツイッターで流しましょう」から始まることも多いですけど(笑)。
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――政党をつくらないのかというコメントもありました。

奥田:今のところは、誰かが奇跡的に当選しても、一人では影響力が持てません。それよりも、社会に対する影響力を持ちながら、自分たちが考えている政策を与党なり野党なりに訴えて通していく方が現実的だと思っています。

投票だけでなく、主張する必要性

――お二人の情報発信力について評価する声もありました。「18歳選挙」もスタートしますが、同世代に伝えたいことはありますか。

椎木:「まずは投票に行こう」ということ。これは奥田君も共通していると思うんですけれど。

私は政治や政治家に何か言いたいんだったら、「投票行ってから色々言おうぜ」って思うんです。70年ぶりに選挙権年齢が改正されて、今年から18歳選挙が始まるわけだから、歴史的な瞬間に立ち会おうという気持ちでもいい。みんなで盛り上げていこうと伝えたい。

240万人の有権者が増えたからといって、ものすごく影響があるわけではないけれど、今回の18歳、19歳の投票率がめちゃくちゃ高くなったら、政治家の態度も変わると思います。「高齢者向けの政策だらけの政治が嫌なら行こうよ」って思います。

奥田:そうですね。あと、椎木さんを見ていて感じたのは、「政治のことを考えようよ」というメッセージが普通に言える世代になってきたということ。この変化は、本当に良いなと思います。これまでだったら政治の本を出すと「椎木さんそっちに行っちゃうの?」となったと思いますから。

椎木:確かに、そうかもね。

奥田:ただ、個人的に18歳選挙権については、最近少し考え方が変わってきたんです。大事だとは思うんですけど、「そんなにいいことなのか」って。ちょっと挑戦的ですけど。

要は、テレビなどの報道では、若い人に対する政策が全然議論されずに、政局の分析だけされている。このテーマが話題になるときも、新しく生まれる240万人という有権者の数しか見られていない。

そう考えると、国やメディアから「若い人には特に何もしないけれど、政治には頑張って参加しろよ」と言われているようで、違和感もあるんです。権利だけは拡大されましたけど。

だからこそ、SEALDsも安保法制のことだけじゃなくて、若い世代の生活環境についても訴えたいと思っています。選挙に行くだけじゃなくて、自分たちが思っていることを伝えないと「選挙に関心があるんだね」で終わっちゃう。

そうすると、与野党どちらを支持するに関わらず、どの党も若い人に何もやってくれないですから。
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日常に政治の要素を取り込む

――政治に対して関心を持つようになるためには、どうすれば良いと考えていますか。

椎木:私は、ぶっちゃけ24時間365日政治のことを考えている人なんていないと思うんですよ。政治家だって難しいくらい。普通の若い人だったら、1か月に1時間考えればいいところじゃないかな。

だから、気張らなくていい。自分の近いところに関わっている政治的なことに触れればいいと思います。たとえば自分の地元の周りで行政が何かをつくったり、街を開発していたりすることはよくありますよね。

それに対して、「本当に必要あるんだっけ」「今のままでもいいんじゃない」って考えることも政治参加だと思います。

奥田:全面的にその意見に賛成です。日常の中で政治について考えられる要素をどれだけ取り込むかが大事だと思います。

ツイッターで政治家をフォローするのもいい。普段はタイムラインで流れているだけでも、選挙が近づいたらチェックするとか。

そういう機会を意図的に、でも緩やかに取り入れて行く。僕がいま着ているシャツも「DON’T TRASH YOUR VOTE」(あなたの一票を無駄にしないで)って書いています。

これは、選挙のたびに売っている店があるんですけど、こんな服を着るだけでも、少しは考えるきっかけになる。

政治について、考える時も考えないときもあっていい。ずっと考え続けるよりも、考える瞬間をつくることが必要なんじゃないですかね。

――「若い世代だけで固まるのではなく、異なる世代と協力することも必要ではないか」といったコメントもありました。椎木さんは上の世代の経営者と一緒になることも多いですが、心がけていることはありますか。

椎木:バリアを張らないことですね。若い子はダメだと言ったり、年寄りは聞く耳持たないと言ったりしてバリアを張るのは危険じゃないですか。身近な人の意見として取り入れることが大事だと思います。

私は小さい頃からおじさんにかわいがられるタイプだったので、最初から上の世代とは、仲良くすることができました(笑)

でも、同世代で起業した人の中には「おじさん・おばさん世代が怖い」と言う人もいます。そういうときは、「若い子から教えてくださいって言われたら、相手は絶対嬉しいから」ってアドバイスしています。

起業してから、「女子高生だから部活感覚でやっているんでしょ」って言われることはありました。でも、少しずつ結果が出てくると周囲も変わるし、自信もついていく。その意味で、まずは若い時からやり続けることが大切だと思います。
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――奥田さんも様々な年代の人と活動していますが、いかがですか。

奥田:信頼関係だと思います。最初は僕の話を聞いてくれなかった上の世代の人たちも、SEALDsの活動が広がって、デモの人数が増えたり、注目が集まったりすると少しずつ変わりました。

もちろん、一緒に何かをするときは、タフな交渉も求められます。その時に大事なのは、「お互いに感覚が違うこと」を、前提として持つことだと思います。

そうすれば、相手を気遣うことができるし、「自分が出来ないことをやれる人たちなんだ」というリスペクトの気持ちも生まれます。

この前提がないと、大体失敗します。同じ考えだと思ってしまうと、「なんでお前分からないんだよ」となる。そうじゃなくて、「違う人同士なんだから、わからないところから始めよう」ということが大切じゃないでしょうか。

与野党ともに課題がある

――奥田さんは安倍政権を批判的に見ていますが、対談記事では「一理あるな」と感じるところもあると話していました。「どこに一理あるなと感じたのか」という質問もありました。

奥田:僕は安倍政権じゃない方が良いとは思うけれど、安定した政権であることは評価せざるを得ないと思います。それに対して野党が……というのも良くわかる。

また、自民党と野党が一緒になって作った法律の中には良いものもあると思います。安保法制に関しては、国民とのコミュニケーションで問題が多かったと思いますが、自民党の地域に根差して有権者と向き合う姿勢や組織力は、野党も見習った方がいいと感じます。

――野党がダメだなと感じているところはあるんですか。

奥田:滅茶苦茶ありますよ。たとえば民進党は、今は多少良くなっていますけれど、地方に行くと地盤が全然ない。だから、「選挙の時だけ良いことを言っているんでしょ」と思われても仕方ないところがある。

スピーチや見せ方などの伝え方も、まだまだですよね。自民党の議員は最後まで握手をしたり、一人でも手を振っていたら車から降りて挨拶したりしている。それに対して……というのはある。きちんとメッセージを伝えられる人がいないのかなと感じます。

そうしたところからも、本気で政権を取りにいく気持ちはあるんだろうかと感じます。野党第一党としての姿勢を見せてほしいと思います。

自民党や公明党には固定の支持者がいますけど、「民進党支持です」と言う人はあんまりいないですよね。

――選挙が近づいていますが、お二人は、どんな基準で投票すればよいと考えていますか。

椎木:今回、4人の政治家と話したんですけれど、たとえば民進党の枝野幸男さんは、「人格は顔に現れるから目を見ればいい」と話していました。

また、自民党の石破茂さんは「自分が総理大臣になった時に、誰と働きたいかを考えてみれば、自分事に捉えられるんじゃないか」とアドバイスしてくれました。

すべての人が各政党や候補者の主張まで考えられたり、判断できたりするわけではないので、そういった判断基準もアリだと思います。

奥田:どこに入れるかは難しいですよね。アベノミクスに疑問を感じている人も、野党は……という感じじゃないでしょうか。僕もそうです。

その中で、ベストじゃなくてベター、ワーストよりもセカンドワーストを選ぶべきだと考えています。ベストを考えると難しくなって「どこにも投票するところがないから、選挙に行かなくていいや」と思ってしまう。

また、大きな政局も大事で、今後どの政党に伸びていってほしいかという観点で投票するのもいいと思います。

白票を投じることは意味がないと思います。選挙は一票でも多く獲得した人が勝ちます。よりましな方を選ぶべきじゃないでしょうか。
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主義主張を超えたつながり

――お二人は、前回の対談が初対面とのことでしたが、お会いしてイメージは変わりましたか。

椎木:最初はものすごく過激な人なんだろうなって思ったんです。スーツとかを着てきて「ウッス、奥田ッス」という感じかと思っていたけれど、パーカーで現れて、「えっ、奥田君、こんな感じなの!?」といい意味で普通だった(笑)。

奥田:僕は、どんな感じで話す人なんだろう、どんな話になるんだろうという感じでした。テレビに出ているのを見ていて「絶対に会うことはないし、話も合わないだろうな」と思っていたんです。

椎木:えっ、うそっ。それ最初に会った時に言ってなかった(笑)。

奥田:いやいや(笑)。でも、政治に対する疑問とか、考え方に共通するところもあって、普通に話せたことが嬉しかったですね。当たり前のことなんですけれど。

だから、きっと安倍首相も、会ったらいい人なんじゃないかと思います。ただ、政治的な意見が違うというだけで。

実は明日、若者で政治に取り組んでいる人たちみんなで、ハチ公前に集まる計画があるんです(編集部注:対談翌日の6月26日、東京・渋谷で、若者らによる提言「PROPOSAL2016」共同記者会見が行われた。参考:【記者会見全文要約】奥田愛基、斎木陽平ら主義主張を超えた若者による提言「PROPOSAL2016」)。

これまで立場を超えて顔をそろえることはなかったから、一つのきっかけになるんじゃないかと思います。

そこで、みんなと話す機会がありました。リビジョンの斎木君とは、やっぱり政治的には意見が合わない(笑)。でも、一生懸命に将来の日本について考えているところは同じで共感するんですよね。

だから、今回の対談もそうですけど、同世代で、これからも一緒に何かできればいいんじゃないかと思っています。

椎木:そうですね。そうやって色んな人がつながって、広がって行けばいいなと思います。
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(写真:後藤麻由香)