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コメント欄で質問を募集します

【椎木里佳×奥田愛基】同世代対談「18歳の選挙」がはじまる!

2016/6/21

選挙権年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる改正公職選挙法が6月19日に施行されました。約240万人が有権者として加わり、22日から公示される参議院議員選挙から適用となります。

18歳選挙権に注目が集まる中で、「イノベ―ターズ・トーク」にも登場した起業家・椎木里佳氏が『大人たちには任せておけない! 政治のこと 18歳社長が斬る、政治の疑問』(マガジンハウス)を出版。現役の国会議員や同世代のキーパーソンと対談を行っています。

今回、NewsPicksでは本書に収録された椎木氏とSEALDs・奥田愛基氏との対談を特別公開。さらに、コメント欄でPickerの皆さんから、二人の対談内容はもちろん、各自の活動に関する質問を募集します。

本記事に寄せられたコメントを中心として、近日二人が改めて対談。そちらの模様を記事化します。

「対談中に○○と言った点について、もっと聞きたい」「女子高生起業家から女子大生起業家になって何をやるの?」「経営は上手くいっている?」「SEALDsの解散後は?」「デモで世の中は変わったの?」……など、是非書き込んで下さい。

コミュニティーチームとして、Pickerのみなさんとの双方向的な記事をお届け出来ればと思います。

※お寄せいただいた質問は、対談でお二人に投げかけるほか、記事化の際に引用する可能性があります。

「18歳の選挙」がはじまる!

椎木:さっきググったんですよ、奥田さんのこと。そしたらスーツ姿の写真がいっぱい出てきたんですけど、意外と普通ですね。

奥田:普段はフォーマルなジャケットなんて着てないですよ。

椎木:今日は「18歳の選挙」が始まる前に、23歳の奥田さんと18歳の私、同世代同士で若者の政治参加についてお話できたらと思います。

同世代の子たちはSEALDsの影響をかなり受けてる

椎木:いま同世代の子たちは、かなりSEALDsの影響を受けてると思いますね。

奥田:マジっすか。

椎木:私もずっと政治に興味がなくて、安保法制のことなんかもちょっと前まで無関心だったんですよ。初めてテレビのニュースでSEALDsを見たとき、自分と同世代の子たちが、こんなに声を上げているんだってことにびっくりした。私自身が安保法制に賛成か反対かはまた別問題なんだけど、政治に向き合って声を上げている若者たちがいるってことに純粋に感動したんですよね。すごい応援してました。

奥田:そう言われると、すげえうれしい。SEALDsは、安保法制のことだけ切り取ったら「反対してんだね」で終わっちゃうけど、この国で声を上げるのは、別におかしくないんですよって伝えたかったから。

椎木:うん。SEALDsのおかげで、若者が政治に対して何か物申してもいいんだって知れた。やっぱり「ファースト・ペンギン」がいないとね。

奥田:椎木さんも15歳で起業したのは、自分がファースト・ペンギンになってやろうというか、先陣を切ろうみたいな気持ちがあったんですか?

椎木:最初はそんな大きなことは思っていなくて、ただただ周りを「見返してやろう」という反骨精神から(笑)。

奥田:その「見返してやろう」っていう気持ちが大事なんじゃないかと思います。

椎木:やっているうちに、「椎木さんを見て起業家になりたいと思いました」と言ってくれる子たちに出会うこともあって、いまは行動してみてよかったなと思ってます。

奥田:行動してみると、全部がうまくいくとか、全部が変わるわけではないけれど、思ったよりは変えられるんだなっていう実感はありますよね。

奥田愛基(おくだ・あき) 1992年生まれ、福岡県出身。明治学院大学国際学部卒業。東日本大震災の支援活動を経て、政治運動について考える学生団体「TAZ」、「SASPL」などを設立。2015年5月に、「SEALDs」を結成した。同年12月、政党への政策提言などをおこなう一般社団法人「ReDEMOS」を設立し、2016年夏の参議院議員選挙をもって「SEALDs」は解散すると発表。現在は、大学院で政治学、政治活動などについて研究している。著書に『変える』(河出書房新社)、共著に『高橋源一郎×SEALDs 民主主義ってなんだ?』(同前)、監督・製作した映像作品に『生きる312』(2013年、国際平和映像祭でグランプリほか受賞)などがある。

奥田愛基(おくだ・あき)
1992年生まれ、福岡県出身。明治学院大学国際学部卒業。東日本大震災の支援活動を経て、政治運動について考える学生団体「TAZ」、「SASPL」などを設立。2015年5月に、「SEALDs」を結成した。同年12月、政党への政策提言などをおこなう一般社団法人「ReDEMOS」を設立し、2016年夏の参議院議員選挙をもって「SEALDs」は解散すると発表。現在は、大学院で政治学、政治活動などについて研究している。著書に『変える』(河出書房新社)、共著に『高橋源一郎×SEALDs 民主主義ってなんだ?』(同前)、監督・製作した映像作品に『生きる312』(2013年、国際平和映像祭でグランプリほか受賞)などがある。

奥田さんは、なんであんなに頑張れたの?

椎木:SEALDsみたいに活動をしていると、心が折れそうになることがたくさんあると思うんですけど、奥田さんは何をモチベーションに頑張ってたんですか?

奥田:いや、もう心は折れまくりで。テレビでは僕が超絶叫してるところとか、もしくは国会でしゃべっているところしか報道されないけれど、普通に学校やバイトに行ってたし、毎週デモをやるのは本当にしんどいんですよ。多いときは10万人ぐらいが集まって、その人たちに見られてしゃべるって、めちゃくちゃ体力を使う。毎週、「俺、来週は行かないから」って思ってました。

椎木:ええ〜。それは意外でした。

奥田:何をモチベーションにしていたのか、いまでも不思議な感じ。でも、若者は無関心だとか言われるのって、くやしいじゃないですか。誰か代わりにやってくれよって思ったりもしたけど、当時はそんなことをやる人なんて全然いなかった。文句言うぐらいなら、まず自分がやるかって始めたので、「俺は何でやめないんだろう」って考えることでかろうじて続けられたというか。

逆に、「私はこういう志を持っているので、絶対にあきらめません!」って言っている人のほうが、心が折れやすいのかもしれない。

ところでデモって、終わったんですか?

椎木:ところで、安保法制のデモって終わったんですか?

奥田:デモ自体は、いまだに全国各地でおこなわれていて、安保法制が実際運用されて、自衛隊が海外に派遣されるとなったら、また大規模なものになると思います。いまは、昨年の夏に動いた人たちが7月の参院選に積極的に関わりだしていますね。デモと選挙の話がつながってきている感じです。

たとえば、野党がバラバラの候補者を出していると、投票する側も分散して困るじゃないですか。そこで、各地の参議院の一人区では野党の候補者を一人に絞るような動きが出ていますが、その中心にはSEALDsを含め、多くの市民団体の人が関わっているんです。

椎木:そういう方向で、事前に選挙に関わることもできるんですね。

奥田:それに、選挙結果も重要だけど、デモのスタイルを変えたように、選挙自体のカルチャーも変えていきたいなと思っているんです。選挙のやり方って、昔から全然アップデートされてないんですよね。候補者の人が街宣車の上から一方的にしゃべって終わりとか、名前を連呼するだけとか。広報物も読みにくいものが多いし。

そうじゃなくてもっと気軽に選挙のことを知る場をつくったり、候補者を応援している人もスピーチする場をつくったりするとか。そういう試みを全国で進めています。「選挙に行こうよ」と正面から呼びかけるのも大事ですけど、投票箱に投票するだけなら数分で終わってしまうから。

椎木:安保だけじゃなくて、別のデモも始まっているんですか?

奥田:このあいだも保育園の待機児童問題に抗議して、お母さんたちが国会前に集まっていましたよね。あんまり知られてないですけど、SEALDsは安保法制や憲法問題だけに特化した団体ではなくて、ほかにも自分たちの世代に身近な「生活」に関するイシューも大事だと思っているんです。

メンバーにも、奨学金をトータルで800万円借りている人もいるし、みんな生活が楽なわけじゃない。奨学金を借りている人は大学進学者の半数だと言われています。

それじゃ大学を卒業して就職するとなったら、自分のやりたいことをやろうっていうよりも返済のために年収のいい会社に入らなきゃってなっちゃうじゃない? 借金抱えた状態で社会に出ると、結婚や子どもなんて遠い話になるよね。借りたくないなら「行くなよ」って言う人もいるけど、大学に行かなければ行かないで就活も難しいと言われてしまう。

SEALDs的には、こういう状況の中で次の世代の生き方を探ることもやっていきたいと思っているんです。

椎木:いまの10〜20代は「貧困世代」とも言われているし。

奥田:マイホームを建てて子どもが2人いるのが普通だと思えてた時代って、もう来ない。ニュースでもたまに見るけど大企業に入ったとしても千人規模でリストラがあったりするし、将来に何の保障もない。自分自身で生き方を探っていかなきゃいけないんだけど、次の一手がなかなか見えない時代だよね。

逆に言うと、見えないから何でもありで、大企業に入らなくても、田舎に帰るのもいいし、勇気出して独立してビジネスやるのもいい。従来の生き方に縛られないぶんシリアスなんだけど、それが社会を変えていかなきゃっていう原動力にもなる。

椎木:ちょうど私たち世代って、転換期にいるんだと思う。

椎木里佳(しいき・りか) AMF代表 1997年生まれ、東京都出身。中学3年生(15歳)で株式会社AMFを創業し。以来、全国70名からなる女子中高生マーケティング集団『JCJK調査隊』の企画運営や、スマホアプリの開発などを手がける。現在、慶應義塾大学在学中。著書に『女子高生社長、経営を学ぶ』(ダイヤモンド社)、『大人たちには任せておけない! 政治のこと 18歳社長が斬る、政治の疑問』(マガジンハウス)がある。

椎木里佳(しいき・りか)
AMF代表
1997年生まれ、東京都出身。中学3年生(15歳)で株式会社AMFを創業し。以来、全国70名からなる女子中高生マーケティング集団『JCJK調査隊』の企画運営や、スマホアプリの開発などを手がける。現在、慶應義塾大学在学中。著書に『女子高生社長、経営を学ぶ』(ダイヤモンド社)、『大人たちには任せておけない! 政治のこと 18歳社長が斬る、政治の疑問』(マガジンハウス)がある。

やっぱり意識高い系なんですか?

椎木:SEALDsって、よく「意識高い系」って呼ばれてるじゃないですか。奥田さんって、やっぱり意識高いんですか?

奥田:久しぶりに意識高い系って言われてしまった(笑)。何だろう、そう考えたかったらそう考えてもいいですよって感じだけど。

でも、24時間いつも意識高いわけないっていうか。SEALDsも切り取り方によっては「政治のことを考えてる人たち」に見えるんだろうけど、おのおのに日常生活があって「政治のことも」考えてるって感じですよ。

椎木:私も本来、そうあるべきなんじゃないかと思う。生活がまずあって、政治のことも考えてちゃんと意見を言うっていうのが、いまっぽい。

奥田:SEALDsのメンバーでも、超大事な安保法制のデモの日に「今日はゼミが長引いちゃいそうだから無理」とか、「じゃあ、いまからバイトなんで帰ります」とかよくある(笑)。昔のデモだったら、士気を下げるって怒られそうだよね。

椎木:それいい、すごくいい!(笑)。

奥田:だから、とくべつ意識高い系じゃなくて、自分と同じような人がデモに行ったり、政治について考えたりしてるって考えてもらえたらありがたいかな。

自民党にもコンタクト取ってくれる人いたんです

椎木:私も学校に行きながら仕事をしていて、経営者としては学校を辞めて仕事をしたほうが、会社がうまくいくんじゃないの? ってよく言われたりするんです。

でも、私は学校があって経営以外のことをする時間があるからこそ、バランスが保たれてる。経営者は経営のことしかやっちゃいけないとか、政治を勉強してからじゃないと政治を語っちゃダメなんて感覚は、もう古いんじゃないかな。

奥田:古いですよ。政治のことしか考えてない人の政治の話ってつまらないし、ひとつの仕事だけで収入を得る時代でもない。考え方を柔軟にしておかないと、自分自身が苦しくなるよね。笑ってるときもあれば、泣いてるときもあるっていう人間の在り方をあんまり否定しすぎないほうがいい。

椎木:SEALDsの活動を経て、政治への考え方って変わりましたか?

奥田:政府の意見に反対するには知識も要るし、政府が何を言っているのかっていうのを逐一チェックする。この部分はたしかに一理あるんだなとかいろいろ見えてくる。

椎木:ちゃんと知ることが、変わるってことなんですよね。

奥田:うん。だいぶ変わりましたね。国会議員の方とお話しする機会もあって、実際に法律がどのように議論をされて制定されるかを知ると、思ったよりしっかりしているなと思う部分と、ふわっとしている部分があるとわかった。

椎木:思ったより「ふわっとしてる」ってどういうところが?

奥田:人間関係や雰囲気の世界で決まっていくというか。最初はね、自民党の人でも「奥田くん、ちょっと話そうよ」ってコンタクト取ってくれる人がいたんです。話をしてみると、「なるほどね。僕もこれはあんまよくないと思ってる」と言う人もいた。

逆に野党の人で、「いや、じつは俺、賛成なんだよ」と言う人もいたし。でもSEALDsの活動が盛り上がってきたら「ごめんね、もう会えないんだ」って。で、投票になると、みんな同じ意見になってしまう。

椎木:自民党の人でも全員が安保法制賛成ってわけでもなかったんだ。

奥田:そう。政治家も一人の人間だし、本当は思ってることも抱えている葛藤もあると思う。それをもっと見せてほしいんだよね。僕は国会の公聴会ではそういうことを言いたかったんです。

椎木:そういう部分はメディアでは報じられないじゃないですか。すごくもったいないなあっていう感じですね。

奥田:政治のパワーゲームの中では何か弱みを見せると攻撃されるんです。実際はもっと意見に揺らぎがあったはずなんですよ。

椎木:与党でも野党でも、ひとつの意見では本当はない、と。

奥田:それが、党首討論なんかでもすごく単純化されちゃった気がする。でも、それは僕らの反省もあるけれど。

だから、安保法制のときみたいに100回も審議が止まってしまうような国会運営じゃなくて、実りある話し合いを国民に見せてほしい。そういう政治の多様性も、こちら側から求めていかないといけないなと思いますね。だってそうじゃないと国会で議論する意味ないじゃないですか。

ネットのネガティブな意見についてどう思っていますか?

椎木:奥田さんに「殺害予告」があったじゃないですか。

奥田:うん、あれはつらい。若いくせに国会行って何なんだって鼻につく人もいるんだろうけど、お願いだから殺さないでほしいよね(笑)。

ネットでは一説によると俺はCIAの手先で、中国共産党が送り込んできたやつだとか書かれているけど、実際は普通に大学行って普通にバイトして、デモに行ってるだけだから。
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椎木:メディアの切り取り方がよくないんですよね。

奥田:去年の夏、一番メディアに出ていたときも、電車に乗って国会議事堂前駅まで行って、また電車で帰ってた。毎週金曜日はすれ違う人に、「国会行くんですか?」「頑張ってください」って小声で言われたり(笑)。

渋谷を歩いていてキャッチの兄ちゃんに捕まったときに、「お、SEALDsじゃん!」って声かけられたり。居酒屋で絡まれるっていうのも多い。60歳ぐらいの中小企業のいい役職ふうの男の人に「おじさんもな、昔はデモとか行ってたんだよ、でもな……」って話しかけられたり。

最終的に「憲法変えてもいいけど、国民投票したほうがいいよな!」「そうですね!」って盛り上がって、「おまえの話分かりやすいね、最近SEALDsの奥田とかっているじゃん? ああいうの、ホントよくない!」とか言われたこともある。

椎木:(笑)。どういうリアクションしたんですか?

奥田:「あの僕、SEALDsの奥田なんですけど……」って(笑)。そしたら「ええっ?あ、すいません‼」って謝られた。

椎木:私もネットで結構ネガティブな意見をもらうんですけど、そういうのって30代、40代のおじさんからが多いんですよね。奥田さんの場合、どの世代が多いですか。

奥田:僕も同じ世代かなあ。まとめサイトや2ちゃんねるを一生懸命やってる高校生ってあんまりイメージつかない。おまえ日本人じゃないだろうとか、偏差値低いとか……ひどいことになってますよね。

政治的な意見についての批判よりも冷笑のほうが大きくて、その白けてるまなざしや嫌悪感って、カルチャーとして結構きついものがあるなと率直に思いますね。この国で政治的な発言をすることのハードルって、めっちゃ高いと思う。

被選挙権の年齢も18歳に引き下げてほしい

椎木:この本の企画のきっかけである、「18歳選挙権」についてはどう思いますか。

奥田:いいことだと思う。自分自身もやっぱり20歳のときに初めて入れた一票よりも、次の選挙のほうがもっとよく考えている。投票のときに前の選挙のことを思い出して、あのときは入れるとこなかったなとか、これが争点だったなとか振り返るよね。

18歳から行き始めると、それが早まっていいよね。選挙は行き続けることに意味があると思うから。

椎木:世論調査でも、高校生って一番信用できるメディアにテレビや新聞を挙げているんですよね。意外に高校生のほうが選挙のことを考えてるかもしれない。

奥田:大学生になったら一人暮らしになってテレビを見ない人もいるし、人によっては新聞も読まなくなるしね。

僕的には公職選挙法の問題で、未成年は候補者を応援できないというのが残念だけど。あとは被選挙権年齢も、18歳に引き下げたほうがいいと思っています。衆議院の被選挙権が25歳、参議院が30歳からで、政治家って40代、50代でも若手って言われてる。だけど10代の子からすれば、もう全然共感できないと思うんです。

椎木:わかります、超わかります。

奥田:何でクールジャパン戦略担当の大臣が50代とか60代なんだよ、みたいな。

椎木:(笑)。
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奥田:クールジャパンと言うなら、日本では最先端の面白いことがたくさんあるじゃないですか。18歳の子が政治家になってそういう主張を始めたら、それが選挙の争点になってもおかしくないんじゃないかなと思いますね。

「若者イコール無関心」みたいな空気を変える

椎木:日本の18、19歳って、240万人ぐらいしかいない。有権者全体の2%しかいないから、投票しても意味ないんじゃないかって言う人もいるけど。

奥田:SEALDsをやってみて感じたのは、若者ってそもそも母数が少ない上に、政治のことに声を上げる人が少ないから、逆に聞いてくれる人が結構いるってこと。だから、むしろチャンスだと思うな。

椎木:そういう若者の特権を考えつつ、活動しました?

奥田:僕らの場合、たった1年前は特権っていうよりも、若者が圧倒的に不利だなと思ったところからスタートしたんだよね。

最初は、「若者が100人ぐらい集まって、こういうシンポジウムやったんです」って言っても、「それは一部の若者が、でしょ」「だって、若者って政治に無関心じゃないですか」って片付けられた。

ニュース番組でも、渋谷のワールドカップで盛り上がっている若者に「安保法制、どう思いますか?」とインタビューして、「興味ないですね」って意見を引き出して、コメンテーターが「もっと考えてほしいですね」で締めくくるのが定番だったりしたし。

椎木:そんなときに聞いても、興味ないの当たり前ですよね。

奥田:「若者イコール無関心」みたいな空気を変えなきゃいけないところからスタートしたから。最近でこそ、「SEALDsって注目されていいよね」って言う人もいるかもしれないですけど、ここまで来るには大変だったんです。

でも、いまはこれだけ18歳選挙権が注目されてるわけだから、みんな思ったことに挑戦してみたらいいと思う。きっとこれまでにないような選挙のカルチャーが生まれるんじゃないかな?

社会や政治をまじめな人ばかりに任せるんじゃなくて

椎木:奥田さんが考える、こうなったらいい未来ってどんなイメージですか?

奥田:デモみたいに声を上げるのが普通になったらいいなと思う半面、つねに声を上げなきゃいけない社会って結構きついよね。政治のことなんか考えなくても済むような社会になりゃいいけど、経済を見てももっと困難になるかもしれないし、人口も減っていく。

困難だらけだけど、それでもちゃんとその問題に向き合えて、声を上げたり、まじめにやろうということがばかにされない社会。そういうふうになってほしいと思います。

椎木:本当にそういう未来になってほしいですね。

奥田:椎木さんがいまの時代をどう見ているかわからないですけど、僕は1992年、バブルが崩壊した年に生まれたんです。

椎木:失われた10年が20年になって、社会がよくならないってずっと言われてきた世代だよね。

奥田:若者は昔に比べて大変だ、不幸だとか言われていて。その大変だって訴えることを、「意識高いね」で片付けられずに、本当に大変だよね、どうしたらいいのかなって普通に話し合っていたいというか。

椎木:意見を言うのが当たり前で、意識高い系ってくくりにされない社会がいい。

奥田:一生懸命やってるやつ、いいじゃん! みたいなね。「意識高い」って腐すのは、反対の意見をぶつけるよりもひどいなって思うんですよ。

椎木:うん、きつい。

奥田:「ま、頑張って」という神様目線で見てるんじゃなくて、僕もあんたもこの社会で生きているし、この国に生きているんだし、一緒に考えようよ、と。そしてそれをばかにしないでねって思う。

あと、社会や政治のことをまじめな人ばかりに任せるんじゃなくて、少しでもいいから自分が関わってみるとか、参加の入り口がもっとたくさんあってもいいと思うな。就職とかどう考えているんですか?

椎木:将来、就職とかするんですか?

奥田:どうなんだろう(笑)。いや、本当どうなるんだって感じです。もともと映像やデザインにも関心があったし……。幸い、何かやるなら一緒にやろうって誘ってくれる人もいるけど。とりあえず、あと1年は大学院で勉強ですね。

椎木:政治家にはならないんですか?

奥田:それは全然考えていないかな。SEALDsのメンバーで政治家になりたいやつはいるかもしれないけど。

僕自身はいまは大学院で、政治のことを考える場所や、提供できる情報のプラットフォームみたいなものをつくれないかなと考えています。それがビジネスになるかどうかはわからないですけど。

椎木:それは、先日設立を発表した「Re DEMOS」の活動にもつながるんですか?

奥田:そうですね。「Re DEMOS」はSEALDsのメンバーを中心に立ち上げた市民参加型のシンクタンクです。自分たちの生活に関わる憲法や法律、政策の問題を考えていくための、知識や材料を提供していけたらと思っています。それを、ロビーイングという形式で国会議員に届ける。

「Re DEMOS」は、「民衆(DEMOS)」への「応答(Re:)」で、再生という意味もある。日本は終わったとあきらめずに、また何度でも始めて行こうよ、という希望も込めて。
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椎木さんには、壁を乗り越えていける人であってほしい

椎木:ちょっと先輩で、すでに社会に対してばりばりに行動してきた奥田さんの立場から、いまの18歳の子たちに期待することって何でしょうか。

奥田:僕の友達でも大学を出て会社を経営しているやつもいるし、SEALDsのメンバーでも中卒でiPhoneアプリをつくる仕事をやっている子もいる。

一方で、大学に行けない子もいるし、その日の生活が苦しい子もいる。お金を持っているかいないか、意識高いか低いか……同世代でもいろんな層がいるけれど、次の世代ではそれを分断しないで一緒に考える寛容さがほしいなと思う。

椎木:格差で分断するとかじゃなく。

奥田:たとえば、生活が苦しくて困っている友達に寄り添いたいんだけど、何て声をかけていいかわからないまま放置されちゃうようなことも多いと思うんだよね。

椎木:そこをどう乗り越えていけるかっていうのは、これから深刻な問題になりそう。 

奥田:だから、椎木さんみたいに、15歳から経営をしたりしていて、同世代のロールモデルになるような人にはぜひ、自分の周りにいる人たちだけじゃなくて、ちょっと外側にいる人たちに対しても関心を持っていってほしいな。

今日こうやって僕と話してくれてるのもうれしいし、怖がらないでいろんな壁を乗り越えていける人であってほしいなと思いますね。

椎木:ごちゃまぜな感じで、一緒に考えられたらいいなと私も思います。

(写真:神藤 剛)

※Pickerの皆さんから、二人の対談内容はもちろん、各自の活動に関する質問を募集します。コメント欄に寄せられた声を中心に、近日二人が改めて対談を行います。お寄せいただいた質問は、対談でお二人に投げかけるほか、記事化の際に引用する可能性があります。
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