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「ウェルネスとウェアラブル」- 計ると判る

座り続けるとお尻が大きくなる?

2016/6/20

日本の厚生労働省では身体活動を30分以上、週2回行うことを推奨しています。

お隣の台湾では「健康で長く生きるためには、一体どれくらいの身体活動をすればいいのか?」という質問に、1日30分、週5日で150分の身体活動が良いと研究で結論づけています。

アメリカでは「健康づくりのための身体活動推奨ガイド」という資料で、4つのグループに分けそれぞれに適した身体活動をすすめています。その中で成人(18~64歳)に分類されたグループでは、週あたり150分の中強度の有酸素運動をすすめています。

これらを平均すると、だいたい1日30分の身体活動をやれば、運動面はカバーできることになります。しかし、1日30分の身体活動だけやっていれば十分かというと、残念ながらそうではありません。

どんなに規則的に身体活動をしても、座っている時間が長ければ健康を害するからです。

僕は仕事柄、アメリカ人、オーストラリア人と毎日会話をしていますが、彼らと会話していると、身体活動を推奨することよりも、動いていない時間、つまり「座り続ける」リスクに視点が向いています。

それを裏付ける事実があります。12年間にわたって、アメリカのペニントン生物医学研究センターが実施した研究では、18~90歳までの17000人で調べた結果、運動をした時間、年齢、体重の量に関係なく、座っている時間が長い人たちは短い寿命になることを明らかにしています。つまり、座っている時間が長ければ健康のリスクが高い、ということです。(参考:Can sitting be as bad as smoking?6seemingly harmless everyday activities that threaten your health)

具体的に人はどれだけ座っているのか?というのがこちらです。

人は1日に9.3時間も座っている状態にあり、これは眠っている7.7時間よりも長いものでした。座っている時間が長いほど、脂肪を溶かす酵素の分泌が下がり、インスリン抵抗性が上がって糖尿病のリスクが高くなるとあります(参考:Too much sitting: a novel and important predictor of chronic disease risk?)

そして興味深いのが「人は、何時頃に動かない状態(つまりは座っている可能性が高い状態)なのか?」のトップ3位です。

90分以上動いていない時間帯で最も多かったのが、昼食前の10:30~11:00am、午後にやってくる落ち込み時間の2:00~3:00pm、夕食、もしくはテレビを見ている可能性が高い時間の7:30~8:30pmの3つです(参考:Sitting hurts: fitbit data suggests you should move more often)

ウエアラブルデバイスいわく、僕の動いていない時間帯は11:00~12:00の間が多く、Outlook上のカレンダーを確認してみると、確かに1週間の内、3日は仕事で定期的な打ち合わせが入っていました。

そして、動いていない時間帯を合計してみると、結局1日の85%は動いておらず、身体活動をしたと記録されていたのは、わずか15%でした。

感覚ではもっと身体活動をしていると思っていただけにショックでした。ちなみに、現在(2016年6月)は、平均値で20%まで身体活動値を上げるように意識しています。

座って仕事するのと、立って仕事するので、そんなに差があるものなのか?と、考えていたときに見つけたインフォグラフィックです。その名も「座る vs 立つ」。座る=動かないことがどれだけ悪いかを比較したものとして理解しやすかったので、ここに残しておきます。
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上から心拍数での比較として、座って仕事をすると平均で79に対して、立って仕事をすると89と、10も身体活動が高まります。次に消費カロリーでの比較として、座って仕事をすると1分間に平均で2.6に対して、立って仕事をすると3.3と、0.7キロカロリーも消費量が高まります。最後に血糖値での比較では、座って仕事をすると106に対して、立って仕事をすると60と、46も低く出ます。

サンフランシスコに出張する度に、オフィスの中で立ちながら仕事をしている人を見かけます。これは「座る時間が長い=健康を害するという意識が高い」からと思っていましたが、どうやら違う視点もあるようです。ある女性との雑談の中で出てきた妙に納得できる本音をご紹介しておきます。彼女は、ずっと座り続けていると、お尻に長時間負荷がかかり、脂肪組織が増えてお尻が大きくなるのが嫌だから立って仕事をしていると言うのです。

冗談だと思っていましたが、実はほんとうに座り続けるとお尻が大きくなると結論づけた研究がありました(参考:Sitting Down Makes Your Bottom Bigger, Study Reveals)

女性の「美」意識の強さに感心しました。

座り続けるとお尻が大きくなることはさておき、もしも、これらの研究が日本にも当てはまるのであれば、動いていない時間が長い=結果として健康問題を引き起こす危険があるかもしれません。日頃から意識して、動かない時間を減らすということは、決して他人ごとではありません。

繰り返しますが、どんなに規則的に身体活動をしても、座っている時間が長いほど健康を害します。だからこそ「身体を動かしていない」時間を明確に知ることが大切です。

そのためには「動いていない時間」とは、1日にどのくらいあるものなのかを計ることです。

(写真:iStock.com/andresr)

※本連載は毎週月曜日に掲載します。