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「人間の意識」をダウンロードする

中国の大手テクノロジー企業ファーウェイ(華為技術)は、ブロードバンド・ネットワーク機器とスマートフォンの分野で、世界でも上位を争うメーカーとして知られている。しかし、同社の携帯電話部門プレジデントであるケヴィン・ホーは5月、上海で開かれた家電見本市「CESアジア」でこう明言した。

「我が社は『マトリックス』のようなSF映画から未来のトレンドを知り、新しいビジネスの着想を得ている」

「2035年、いや今から25年後には飢えや貧困、病気、死さえもが、たいした問題ではなくなっているかもしれない」とホーは言う。「将来はコンピュータの機能に金を払い、代理母にすることも可能かもしれない。物質の世界からデジタルの世界にバトンを渡すことになるかもしれないのだ」

将来、人間の意識をコンピュータにダウンロードする技術が実現すれば、子どもたちが「WeChat」のようなアプリを使って亡くなった祖父母と交流することができるかもしれないという。そして、こうした技術は膨大なデータストレージを必要とする。ファーウェイにとってはビジネスになるわけだ。

ホーは、『マトリックス』で登場人物がヘリコプターの操縦技術を自分の脳にダウンロードする場面を引き合いに出した。

「あのようなデータをダウンロードするには、今の容量では足りない」とホーは話す。「将来、ストレージ容量は1万5000ゼタバイトを超える必要がある。相当増やさねばならない」

SF映画がチームの発想を刺激

シリコンバレーでは、グーグルのようなハイテク企業がポスト人間社会のための長期計画を議論している。

キャリコ社やベンチャー投資家のピーター・ティールは、不死の可能性を取り上げている。また、スペースX社を設立したイーロン・マスクは以前から、人類をほかの惑星に入植させるという目標を掲げている。

しかし、ファーウェイのように名の通った中国のテクノロジー企業が「人類に関わるつかみどころのない可能性をもとにビジネスを考える」というのは稀なことだ。しかしホーは、新しい製品を考えるうえでSF映画が自分のチームに刺激を与えてくれるという。

「私がこうした考えを持つに至ったのは、たくさんのSF映画の影響だ。SFでは、テクノロジーが人間社会を破壊するという恐ろしい世界を見てきた」と語るホーは、ある映画の話をした。本体が人工知能であるらしい登場人物が、書籍からアイデアを吸収して人類に攻撃を仕掛けるというストーリーだ。

「本をダウンロードしたり印刷したりする任務をもつミスター・ウォンが、やがて人間を殺すようになるというとても興味深い映画だ。そうならないように、より安全なテクノロジーが必要だ」

「認証機能や優れた技術的プロテクション、遠隔操作による防御機能が必要だ。我々は今、これらすべてを開発中だ」

原文はこちら(英語)。

(原文筆者:Bloomberg News、翻訳:浅野美抄子/ガリレオ、写真:wildpixel/iStock)

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