[東京 27日 ロイター] - 5月のロイター企業調査によると、約8割の企業が来年までにデフレに逆戻りする懸念があると回答、デフレ脱却への期待がここへきて大幅に後退している。

熊本地震で収益の悪化を見込む企業が自動車では7割にのぼり、年金債務負担や運用悪化などマイナス金利による負担増も目立ってきた。ドル円相場は110円程度での安定を望む声が6割となった。

この調査はロイター短観と同じ期間・対象企業で実施。資本金10億円以上の中堅・大企業400社を対象に5月9日─23日に実施。調査対象企業は400社で、うち回答社数は240社程度。

<デフレ逆戻り懸念 円高と消費増税で景気悪化>

今年1月のロイター企業調査では今年後半までにはデフレを脱却しているとの見方が52%に達していた。しかし、今月はその割合が30%に低下。「当面脱却はできない」との回答が48%から70%に増えた。来年の消費増税に伴う消費低迷への懸念や円高の悪影響、構造改革の遅れなどが背景にありそうだ。

企業からは「円高傾向が強まっている」(食品)として、輸入物価の下落や景気減速への懸念を挙げる声も多い。消費の悪化を挙げる企業も多く「ベースアップが伸びないため個人消費も伸びず、メーカーも値上げが難しい状況になっている」(化学)、「節約志向が強まっている」(小売)など、消費者のデフレマインドが再び強まっているとの指摘がある。このため企業は製品・サービスの値上げを躊躇している。今年値上げを予定している企業は19%にとどまり、15年2月調査の32%から大幅に減った。

また社会保障や成長戦略などで改革の遅れを指摘する声もある。「将来への不安が残り消費が活発にならない」(輸送機械)、「短期的な金融・財政政策に頼っており、希望を抱かせる改革が見えない」(その他製造)など。安倍政権が策定した今年の成長戦略や一億総活躍プランが成長力を改善するとの回答は34%にとどまり、改善は難しいとの見方が66%にのぼった。人口減少という構造問題への具体的な取り組みは不十分と見られている。

<110円程度の円高環境、半数超が好感>

1ドル110円程度で推移しているこのところの為替水準について、事業環境として好ましいとの回答が60%を占めた。

製造業では55%が「この程度で良い」としており、「より円安が望ましい」の38%を上回っている。

「絶対レベルの影響は少ないが、変動が小幅であることが経営の安定につながる」(機械)として、落ち着きを見せている現状の為替レートで安定することを望む声が多い。

より円安を望む企業からは「115円で社内レートを設定している」(複数の企業)といった指摘もあるが、「110円程度であれば日本の景気は悪い方には向かわないだろう」(精密機器)といった見方がある。

マイナス金利に伴う企業負担に関して聞いたところ、「負担が大きくなる懸念」を持っている企業が57%と半数を超えた。ほとんどが「退職引当金の増加」(鉄鋼)、「運用が難しくなる」(電機)といった内容。「1割程度の負担増になる」(化学)との回答もあった。

対策としては、「退職給付債務の再評価を進める」(不動産)との声のほか、「確定拠出型方式への変更を検討している」(機械)ところも目立つ。「資産ポートフォリオの見直し」(卸売)や「社員の投資教育」(不動産)に力を入れるところもあるが、「対策のとりようがない」(輸送機械、小売)との指摘もある。

<熊本地震で収益悪化 輸送用機器は7割>

熊本地震で生産・販売体制に影響を受けた企業は全体の3割にのぼった。中でも電機では4割、輸送用機器は8割が影響を受けたほか、サービスや卸売も4─5割となった。

今期の収益に影響が出るとみる企業は全体の4分の1を占める。輸送用機器が7割と突出しており、鉄鋼、卸売・小売、サービスで3割程度の企業が影響を受ける見通し。

(中川泉 ホワイト・スタンレー 編集:石田仁志)