[東京 17日 ロイター] - アサヒグループホールディングス <2502.T>の小路明善社長兼COO(最高執行責任者)は17日、ロイターのインタビューに応じ、アンハイザー・ブッシュ・インベブ<ABI.BR>がSABミラー<SAB.L>を買収するに当たり売却を表明しているSABミラーの東欧事業について、買収に乗り出すことを否定した。

ただ、酒類・飲料・食品というコア事業の幹を太くするM&Aについては、常に模索しており、SABミラーの欧州事業買収後も、M&Aに向けて3000億円の借り入れは可能だとした。

<欧州4事業のPMI優先>

SABミラーの東欧事業について、小路社長は「全世界のビールビジネスは、数年前から研究・検討している。そのなかに東欧事業も入っていたが、現時点で買収に名乗りを上げたり、乗り出すことはない」と述べた。

その理由については「まずは欧州事業をオーガニックで安定させ、そこにスーパードライをどのように乗せていくかが最優先。それができなくして、東欧事業に手を出せば、二兎追うもの一兎も得ずになる」と述べ、欧州事業のポスト・マージャー・インテグレーション(PMI)を優先させる考えを示した。

同社は、ABインベブによるSABミラー買収にあたり売却される欧州4事業を約3300億円で買収することで契約を終えている。買収は今下期に完了する予定。

買収が完了した後、スーパードライの販売を開始する時期については「今すぐではない。欧州事業は、スーパードライを売るために買ったわけではない。既存事業の価値の拡大を図って、その後に、そのルートにスーパードライの生産と販売を乗せていく」とし、時期は明確にしなかった。

ABインベブのSABミラー買収が完了すれば、世界シェア30%の巨大企業が誕生する。これに対し、アサヒの世界シェアは1%強に過ぎない。小路社長は「規模を第一には考えない。プレミアム価格帯は世界のビールの2割程度ある。この価格帯でどのように規模を確保していくかだ」と述べ、プレミアム価格帯で世界市場で勝負する考えを示した。

<M&A資金、借入れ3000億円可能>

M&Aの機会については「酒類、飲料、食品という事業の幹を太くするためのM&Aは、常に研究、検討、模索をしている」とした。M&Aや投資の対象としては、メーカーだけでなく、ディストリビューター(販売代理店)や原料の契約栽培なども検討対象になってくる。

原料については「ABインベブとSABミラーが合併すれば、原料も3分の1抑えることになる。原料地の契約栽培とかも考えないといけない。契約栽培として資金投入も考えて投融資を考えないといけない」と指摘した。投資と併せて、事業の選択、資産の選択を行う考えも示した。

SABミラーの欧州事業を買収した後でも、DE(負債・資本)レシオ1倍程度をメドに3000億円の借入れが可能だとした。小路社長は「DEレシオ1倍でも格付けは下がらない。格付けが下がらなければ、投資家にあまり不安感を与えることはない」と述べた。

マイナス金利や為替の円高傾向という金融環境の変化が投資に与える影響については「今の時期は、投資に有利な状況」としながらも「為替やマイナス金利を活用して投資を急ぐ考えはない。良い案件があれば、多少金利が高くてもSB、CP、CB、借入れと調達手段はある」と語った。

国内消費については「減速が顕著になってきている」との見方を示した。そのうえで「消費増税は今やるべきではない。景気減速のなかでむち打つようなことをすれば、さらに消費は冷え込み、税収は落ち込む」と述べ、景況感が戻るまでは延期すべきと述べた。

(清水律子、浦中大我)