「学歴社会」韓国で、プロを目指す中学生をむしばむ酷使問題
2016/05/13, NewsPicks編集部
韓国野球超エリート主義3回
「学歴社会」韓国で、プロを目指す中学生をむしばむ酷使問題
2016/5/13
韓国の野球少年がプロを目指す場合、中学入学の段階までに決断するのが一般的だ。
「文武両道」という言葉のある日本に対し、韓国ではスポーツと学業の両立という意識自体が薄い。それは、勉学を優先した韓国の学歴社会の表れともいえるだろう。
そして少年少女が大人に発育していくうえで必要なスポーツや体育に関しても、軽視される傾向にある。
集中履修制で問題発生
前回、韓国の小学校では体育の授業を通して、以前に比べてスポーツに触れる機会が増えたと記した。
だが、中学になると状況は変わってくる。
韓国・文化体育観光部が発行した「2014体育白書」によると、中学3年間で履修すべき体育の授業数は272時間。1年あたり約90時間体育の授業を受けることになっている。日本の105時間より少ない時間数だ。
その体育の授業に関し、2009年に改訂された教育課程により、ある問題が起きた。2011年から導入された「集中履修制」によるものだ。
体育の時間は自習になる
集中履修制は、1学期間に学ぶ科目数を絞ることで、生徒が集中して学習に取り組めるようにと定めたもの。
これによって3年間の授業編成が学校ごとの裁量でできるようになったが、高校受験に関係ない体育を1年時にまとめて実施する学校が増え、2、3年時に体育を行わない学校が出てきたのだ。
成長の過程である中学2、3年時に体育をまったく行わないことに批判が集まり、2012年から体育は集中履修制の対象科目から外され、3年間通して体育を行うように定められた。
だが、ある中学生の母親は現状をこう話す。
「時間割に体育と書いてあっても、実際はその時間が自習になることが多いようです」
そこには韓国の勉学優先の姿が表れている。
中学野球はプロへの入り口
初回記事にも書いたように、韓国では一部の学校にしか野球部がなく、中学校の場合は103校。その割合は中学校全体の3.2%しかない。
「この先、野球をやるか、やらないか」という難しい二者択一を、韓国の野球少年は12歳で迫られる。野球を続けたい小学生は野球部がある中学校を探し、進学する必要があるからだ。
元プロ野球選手の野球塾コーチ、チョ・ソンウォン氏(27)は、小学生野球部員の中学進学事情をこう話している。
「だいたいの場合は自分が住んでいる場所の近くで野球部のある中学を探して進学しますが、将来を有望視された子は強豪中学の監督からスカウトされ、遠くの学校に通う場合もあります。中学から野球を始める人はほとんどいません」
趣味として野球を始める小学生が増え始めてはいるものの、中学以降の野球は専門的な領域へと入っていく。そこはプロ野球への入り口ともいえるだろう。
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コメント
注目のコメント
5回連載の3回目です。
韓国の中高生球児と会って感じたのは、従順で日本よりも幼く見える子が多いということでした。彼らは皆、素直で素朴だっただけに、いい大人(指導者)との出会いに恵まれ続けて欲しいなぁと思ってしまいました。価値観は多様なのでこれも正しい形なのかもしれません。
でも個人的には韓国の状況はスポーツが本来持っている
「身体を動かすことによって得られる楽しさ」
「仲間と一緒にスポーツをすることによる楽しさ」
の価値を無くしてしまっていると思います。
つまりスポーツが社会的に与えることのできる価値を大きく損ねてしまいます。
そして社会に価値の与えられない文化は衰退する運命にあります。
韓国のスポーツ、このままでいいのか?文武両道は日本でも至難の業ですが韓国も同じか。その背景が勉強最優先というのが日本との違い。いや、自分がスポーツ優先にしたので日本はどちらも選択出来ると思っているだけで日本も勉強最優先なのかも。スポーツって成功するかはギャンブルの要素が強いから親の気持ち的には勉強を選ぶんだろうし勉強の方が努力に対するリターンの割合が確実ですものね。
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