「格差社会」韓国。野球は裕福な子がするスポーツ
2016/05/12, NewsPicks編集部
韓国野球超エリート主義 第2回
「格差社会」韓国。野球は裕福な子がするスポーツ
2016/5/12
「韓国では学校でスポーツをしない」
「体育の授業では整列や行進か、用具をあまり必要としない綱引きくらいしかしたことがない」
筆者はこれまで、多くの韓国人からこうした話を聞いてきた。
しかし、それは昔の話で、今の事情は以前と異なるようだ。
父に言われ、野球を始めた30代
プロ野球・ハンファ・イーグルスの投手シム・スチャン(35歳)に野球を始めた動機を聞くと、いわゆる古き韓国のイメージらしい答えが返ってきた。
「父にやれと言われて無条件に始めることになった」
さらに、「そういう選手は周りにも多い」とも語っている。
一方、現在高校3年生でプロ入りを目指しているパク・ソンユン(大邱商苑高校)は、同じ質問にこう答えた。
「自分で野球をやりたいと思って始めました。仲間でも70%ぐらいが自分の意思で、残りの30%が親の勧めだと思います」
以前に比べて、野球を自発的に始める子どもが増えている。その背景としてあるのが、前回述べた野球人気を後押ししたリトルリーグのチーム増加と、ティーボールの普及だ。
韓国の行政機関、文化体育観光部が発行した「2014体育白書」によると、小学1~2年生が週2時間、小学3~6年生は週3時間、体育の授業がある。
年間にすると小学3~6年生の場合、34週で102時間の体育の授業があり、日本の35週で105時間(小学2~5年生。文部科学省・小学校学習指導要領)と大差ない。
体育白書には過去の授業時間数も掲載されているが、その数自体は今も昔も大きく変わっていなかった。
プロが野球普及活動を実施
小学校での授業内容について、今の韓国の体育では「ティーボールやバドミントンをやることもあります」とソウルに住む小学1年生男子の母親は話す。
ティーボールとは野球やソフトボールに似た球技で、それらと大きく異なる点はホームベース後方に置かれたバッティングティーにボールを乗せ、打者が打撃するという点だ。
ティーボールはピッチャーのコントロールを必要とせず、バッターも止まっているボールを打つことから、多くの子どもが気軽に楽しむことができる。日本でも「ベースボール型ゲーム」として2011年から全国の小中学校の体育授業で必修化されている。
韓国プロ野球のコミッショナー組織である韓国野球委員会(KBO)は野球の底辺拡大の一環として、ティーボールの普及を進めている。全国の教育機関にティーボールセットを寄付し、ティーボール大会も開催。
また、教育大学に通う学生を対象に指導者講習会を行うなどの地道な積み重ねによって、子どもが野球に触れる機会は以前より増えている。
日本の野球少年がうらやましい
しかし一方で、日本のように子どもの遊びとしての野球は、まだ広まっていないという現実もある。
プロ野球チームの球団職員として働くソク・チャンヒョンさんは、小学生の子を持つ父親としてこう話した。
「日本の漫画を見ていると、仲間たちでチームをつくって、公園で野球をやっている姿をうらやましく思います。わが子にも野球をやらせたいと思いますが、子どもたちだけで気軽に野球をやることはありません。リトルリーグに入れようかと考えましたが、野球を習わせるのはおカネがかかるんです」
前回、韓国のリトルリーグには「趣味組」という、野球を遊びとして楽しむグループを設けているチームがあると記した。その趣味組の場合でも、月10万ウォン(約9800円)の会費が相場になっている。
もし中学以降も野球を続ける意思がある場合には「選手組」というグループに入るが、月会費に20万ウォン(約1万9600円)程度が必要だ。
newspicks.com
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コメント
注目のコメント
5回連載の2回目です。
韓国プロ野球の球場では試合中に、売店前の通路などでキャッチボールをしている小学生を時折見かけます(場内係員が注意しないあたりは、韓国らしい大らかさですね)。その彼らの投球フォームが以前に比べて様になっているように感じます。やるスポーツとしての野球が浸透しつつあるのかな?と思う瞬間です。
※前回、スペースの都合で記さなかったのですが、以下参考として。
韓国のサッカーU18(高校生)男子のチーム数:172 登録選手数:5,685人(2016年1月現在。大韓サッカー協会)韓国に住んでいると、日本以上に経済的な格差が大きいのを感じる。その影響はスポーツだけでなく、教育にも如実に表れている。例えば、韓国の優秀な理系の高校生は自然科学系の学部ではなく工学部を目指す(医学部は除く)。理由は高給を得られるサムスンやそれに類する一流企業が工学系の人材を優遇するからだ。基礎科学をおろそかにする姿勢は長期的に見ると国家戦略的にもよろしくないが、目の前の経済的格差にみんな戦々恐々としている現実があるのだ。
韓国人の知人もスポーツ組と勉強組に別れるって言ってました。
文武両道という考えはないのでしょうか(^^;?
アメリカだとハーバードからMLBやNFLに行くし、日本でも東大からプロ野球やJリーグに行った人もいるんだけどなあ。