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今から17年前の1999年。ゴールドマン・サックス上場で得られる数十億円の報酬を捨てた伝説のトレーダーがいる。松本大氏だ。オンライントレードという金融改革を起こすために、マネックス証券を創業し、日本・米国・香港で、グローバルにオンライン証券を展開するマネックスグループへと成長させた。その松本氏に立ち上げのエピソードと、今後のビジョンについて話を聞いた。

「新しい金融の仕組みを創る」という強い信念

1998年秋、私はゴールドマン・サックスを去りました。1999年5月まで在籍していれば、上場により、数十億円の報酬を受け取れることがほとんど確定していたのにもかかわらずです。

1999年当時は、電話回線をインターネットに流用するダイヤルアップ接続が一般的で、インターネット接続は面倒で費用も高いものでした。そんな時代でしたが、私は「個人がインターネットを使って株式をはじめとした金融商品を売買する時代が必ずくる」という強い信念を持っていました。

そんな私にとって、株式委託売買の取引手数料が自由化される1999年10月のタイミングで、金融の専門家として何もしないという選択肢はありませんでした。莫大な報酬が得られるのを半年間待つのではなく、オンライントレードという金融革命を起こす道を選んだのです。

そうして創業したのがマネックス証券です。当時、個人金融資産の行き先が銀行と郵便貯金に異常に偏りすぎていて、日本経済が歪んでいるという強い問題意識を持っていたことも、私の創業を後押ししてくれました。

マネックス証券は、今では日本・米国・香港で、グローバルにオンライン証券を展開するマネックスグループへと成長しています。

マネックスグループ 会長兼社長 松本大 1987年ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社に入社。1990年にゴールドマン・サックス・証券会社に転じ、94年、30歳で同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、マネックス証券を設立し、2016年4月現在、グローバル金融グループであるマネックスグループの会長兼社長、マネックス証券の会長を務める。

マネックスグループ 会長兼社長 松本大
1987年ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社に入社。1990年にゴールドマン・サックス・証券会社に転じ、94年、30歳で同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、マネックス証券を設立し、2016年4月現在、グローバル金融グループであるマネックスグループの会長兼社長、マネックス証券の会長を務める。

世界のボーダレス化を目指す、グローバル・ビジョン

現在、株式委託売買の取引手数料の自由化やインターネットの普及により、オンラインでの取引は進んでいるものの、金融サービスは本当の意味でインターネットの恩恵にあずかっているとは言いがたい状況です。たとえば、日本のお客様がオンラインで海外の投資商品を購入したいと考えても、心理的にもシステム的にもまだ大きな壁があるからです。

そんな状況を打破し、オンライン金融サービスを真に国際化する、それが私たちの掲げる「グローバル・ビジョン」です。『世界中にお客様を広げる商圏のグローバル化』と、『経営やアイデアを世界水準にしていく人員のグローバル化』の2つを同時に達成したいと考えています。

このグローバル・ビジョン実現のために、私たちは海外企業のM&Aを積極的に進めてきました。アジア12カ国でビジネスを展開する香港の「BOOM証券グループ」、最先端のトレーディング技術を誇る米国のオンライン証券会社「トレードステーション」を傘下に収め、日・米・亜を網羅する事業基盤を手に入れています。

同時に、米国トレードステーション社の優れたテクノロジーを日本に導入して展開していく日米共同プロジェクトも複数進めています。海外のグループ企業といっそう連携を深め、グローバルでひとつの大きなプラットフォームを築きあげることで、日本を含め世界中のお客様が自由自在に金融取引できるオンライン金融サービス企業へと進化を遂げていきます。

まだまだ道半ばではありますが、国籍や言葉を超えたエキサイティングな金融の未来に挑みます。

「できる」「変えられる」という姿勢を貫ける仲間と

私は、創業以来抱き続けている使命があります。それは「日本のお金の流れを変える」ということです。

かつて日本における資産運用は「貯蓄」が中心でした。そして、銀行や郵便局に預けられた大量のお金は、国債や財政投融資を通して、政府が必要だと判断した事業分野に資金供給されていました。いわば、人々の金融資産の使い方を国が決めていたわけです。

戦後の成長期においては、そうした国家主導のファイナンスが十分に役割を果たしていました。

しかし社会が成熟して複雑になり、多様な資金ニーズが生じている現代においては、国が大量の資金を集めて使い道を決めるという方法はもはや馴染みません。いま求められているのは、世の中の人が「投資」によって自らの意思で自らのお金の使い道を決めることです。

資本市場のプロセスを通して、いま日本の社会が抱えている多様な課題に、お金というリソースを再配分する仕組みを実現しなければ、我が国の経済、ひいては我が国そのものが強くならないと思っています。

そうした仕組みをつくり上げていくというのは、本当に壮大な目標です。もしかしたら、そこに確かなゴールはないのかもしれません。それでも、私たちは「世の中を変えたい」と挑み続けます。常に新しいことに挑戦する姿勢を持ち、金融の未来を創造するために。

物事に対して、どんなに困難であろうとも、「できる」「変えられる」という姿勢を貫ける方、自身がマネックスという媒体を使って世の中の金融常識を変えていくという意欲のある方と、ぜひ一緒にこれからのマネックスを創っていきたいと思います。