2016/5/2

【池尾和人×加藤出】「失敗の本質」で読み解くアベノミクスの3年間

NewsPicks 執行役員CXO
photo by Mitsufumi Ikeda
アベノミクスの“敗戦”が濃厚だ。政府・日銀が経済成長のために「2年間でインフレ率2%を達成する」とぶち上げ、日銀の異次元緩和が開戦したのが2013年4月。あれから丸3年。当初描いていたシナリオは崩れ、終わりのない経済低迷との戦いがズルズルと続いている。経済政策に精通する2人の有識者が、第2次世界大戦における旧日本軍の敗戦を分析した名著「失敗の本質」を引き合いに、アベノミクスの問題点に迫る。

①真珠湾攻撃と黒田バズーカ

──2013年4月、黒田東彦総裁が率いる日本銀行の異次元緩和(QQE)は「黒田バズーカ」と呼ばれ、真珠湾攻撃の奇襲成功にもたとえられました。しかし、その狙いであったインフレ率は達成されていません。お二人は最近、そうした政策失敗の問題点を考えるために「失敗の本質」を改めて読まれたそうですね。
池尾:日本銀行の金融政策運営をアジア太平洋戦争と比較するのは、ちょっと唐突に思われるかもしれません。
ただ、どうも今の日銀の体質を見ていると、なんとなく旧日本軍を連想させてしまうんですね。
たとえば、日本経済新聞には当初は大きな見出しで「大勝利」とか書かれていました(※編集部注:2013年5月21日朝刊「大勝利を収めたリフレ政策」)。
これはまさに奇襲による先制攻撃で短期決戦を挑んだ、真珠湾の奇襲攻撃の成功みたいな話だなあ、と思いましたね。