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ビジネスエリートたちのお金の使い方には法則がある。それは、お金を使って、使った額以上にお金を増やすということ。そのためのルールは5つあり、「時間を買う」「ノウハウを買う」「人脈を買う」「希少性を買う」「お金を生む資産を買う」だ。黒木陽斗氏の最新著書『シリコンバレーのビジネスエリートたちが実践する使っても減らない5つのお金のルール』から一部を抜粋・要約し、数回にわたってお届けする。

お金を生む資産。それは例えば、株式や不動産などのことです。

「資産運用して、給料以外の収入源を確保しよう」
 「経済的自由を手にしよう」

そんな議論の際に語られるものです。お金持ちになる最短ルートは、このお金を生む資産を手に入れること。それは長者番付に起業家や投資家たちが名を連ねていることからも、明らかだと思います。

ビジネスエリートたちもまた、お金を生む資産を買うことに熱心です。若いうちから現金をさまざまな「お金を生む資産」に変え、増やしています。

資産に稼いでもらえば、アーリーリタイアが可能

そもそも、なぜそんなことをしているのかといえば、究極的には自分で働くのではなく資産に稼いでもらうためです。自分が働いた対価として得た収入を資産に置き換え、その資産にお金を稼いでもらえれば、「アーリーリタイア」も可能です。

特にアメリカでは、アーリーリタイアが一つの成功の証しになっており、30代でリタイアする人も珍しくありません。では、どのようにしてアーリーリタイアを実現するのか。

それは、証券や収益不動産など、定期収入が得られたり、将来の値上がりが期待できる資産を増やしていく、という方法です。

私の知り合いには、ベンチャー企業のストックオプションでゴルフ場を購入した人やワイナリーを購入した人もいました。また、ベンチャーを起業して、IPO(株式公開)で自らが保有する株式を売却して巨万の富を得るというパターンもありますし、大企業に自分の会社を売却してしまうというパターンもあります。

そうして、売却益を手にアーリーリタイアしていくのです。もっとも、それが簡単だとは、とても言いがたい。私自身が、シリコンバレーのベンチャー企業の初期メンバ—だったことがありましたから、その厳しさは肌で感じています。

まず、起業しても成功まで持ち込むことが至難の業。資産を増やすはずが、逆に会社を潰して借金を背負うことがあるくらいです。それほどに自分の力で稼ぎ続けるということは、難しいのです。

不動産という生き金の使い方

そこで、ビジネスエリートたちの多くは「不動産」という選択肢に注目します。自分で稼ぐのではなく、不動産に稼いでもらうという作戦です。これは、いくつかの理由から、ビジネスエリートにとって非常に有効な選択肢なのです。

1つ目の理由は、投資というより、ビジネスを開発する感覚に近いこと。すでに稼働してお金を生み出しているビジネスを精査して購入する点が、M&Aにとても似ているので応用しやすいのです。

2つ目は、節税効果があること。高い賃金を得ているビジネスエリートたちですが、稼げば稼ぐほど税率が高くなる所得税は悩みの種。彼らはもれなく節税対策に熱心です。ここでは詳しい説明は省きますが、現金を不動産に置き換えることで、節税できる場合があるのです。

3つ目は、定期的にお金を稼いでいる人が有利に始められる投資であること。不動産を買うには、数百万〜数億円の予算が必要です。もちろんビジネスエリートといえども、現金でポンと出せる金額ではないでしょう。いや、たとえ出せても、できるだけ自分のお金は使いたくないと彼らは考えます。

給料のような定期収入があれば、銀行が融資をしてくれるからです。ビジネスエリートであれば、自分のお金を減らさず、積極的に銀行融資を活用して資産を購入していきます。

こうした背景から、アーリーリタイアを目指すビジネスエリートたちは、早くから不動産を買い集めています。彼らにとって最良の「生き金」の使い方の一つが不動産投資といってもいいでしょう。

そして、彼らにとって最悪の「死に金」とは、大金を出して「お金を生まない資産」を買うことで間違いありません。「お金を生まない資産」にお金を出したら、ときに数千万円、数億円の損失を被ることもあります。これは絶対に避けなければならない事態です。

定年時に「なぜかお金がない」を避けたいなら

しかし、その「絶対に避けなければならない事態」に、知らず知らずのうち陥っている日本人が、いかに多いことか。大学卒業から定年を迎えるまで働き続けたサラリーマンの生涯年収は、2億〜3億円に達するといわれています。

ビジネスエリートならもちろんもっと多く稼ぎますが、サラリーマンとて決して少ない額とはいえないでしょう。それなのに、「なぜかお金がない」のです。

私は、外資系企業から日系企業に転職してきて、本当に驚きました。同僚、それどころか定年間際の人であっても「お金がない」と言うのです。一部上場企業で役職付きまで出世している人が、どうしてお金がないのか、すごく不思議でした。

皆、平均的サラリーマンの年収以上の高給取りで、企業年金も手厚いはず。定年後は悠々自適といくはずのところでしょう。それなのに、住宅ローンで苦しみ、このままではリタイアできない、再就職先を探さないといけないと嘆いている。

なぜ、そんなことになるのか。彼らの話を聞いているうちに、私にはその理由がわかりました。それは、お金の使い方の違い―「死に金」を使っていたからだったのです。

例えば、5000万円で買ったマイホーム。それをいざ売ろうと思っても、場合によっては2000万〜3000万円程度の土地の値段しかつかないこともあるのです。

お金が増える「生き金」どころか、「最悪の死に金」です。にもかかわらず、購入後に数千万円を失っていることに気づかないのです。そして、いざ定年となり、資産の棚卸しをして、住み替えなど定年後の生活を経済的に考えたときに、初めて気づく人がなんと多いことか。資産に関する知識がないと、誰でもそうなってしまうのです。

こんな人もいました。現役時代は、がんばった自分へのご褒美に自動車は新車をバンバン買い替え、家は郊外に6000万円で購入。人もうらやむ、勝ち組サラリーマンの生活です。

でも、量産される大衆車は5年もすれば価値が激減してしまいます。自宅は、20年もすれば大規模修繕の費用がかかりますし、建物が古ければ売ろうと思っても土地代ぐらいの値段でしか売れないでしょう。

いや、土地値でも売れたらまだいいほうです。都会の喧騒から離れてのんびりしたいと言って、需要の少ないローカルな土地に家を買ってしまったら最後、非常に売りにくいのです。しかも、賃貸需要が低ければ、賃貸用アパ—トに建て替えるなどということもできません。

そんな物件に、20年、30年もローンを払い続けることで、一体いくらの損失になるのでしょうか。人生最大の支出で、死に金を使ってしまうなんて、考えるだけで恐ろしくなります。

不動産だけではありません。車や貴金属、人脈など、お金を使うところにはすべて、生き金と死に金があります。

「定年が近いのにお金がない」。その根本原因は、こうしたお金の知識を知らずに、価値が減ってしまうものに大金を使ってしまったせいだと私は思います。お金を生む資産を買わなければ、サラリーマン人生の決算期である定年時に、そんな結果が待っているのです。

せっかく一生懸命稼ぐ、2億〜3億円のお金です。有効に使いさえすれば、定年を迎えるまでに5億円にも10億円にも増やすことが可能です。私が言いたいことは結局、「価値のないものを買ってしまうと人生の最後で大損する」ということに尽きます。どうせ使うなら、使うほどにお金が増えていくような「資産」を購入したい。

ビジネスエリートは、お金を生む資産を増やすことにこだわります。価値のないものは、絶対に買いません。一見無駄遣いをしているように見えても、その裏には、お金を増やすための緻密な計算があります。

繰り返しになりますが、人生をかけて稼いだ3億円が定年時にわずかの金額しか残っていなかったとしたら、あなたが30年かけて稼いだお金の大半はどこに行ってしまったのでしょうか? どこに消えたかわからない……では、あまりに悲しすぎます。

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(写真:Catherine Lane/iStock)