BBCの過去と今を見れば、NHKの未来が見える

2016/3/19
世界の最先端を行く、テレビ局。そのひとつが英国の公共放送BBC。ネット戦略でも先頭を走るBBCは、NHKがお手本とする存在だ。BBCの過去と今を振り返りながら、NHKのこれからを考える。  
1958年生まれ。1981年成城大学文芸学部芸術学科(映画専攻)を卒業後、米投資銀行ファースト・ボストン(現クレディ・スイス)勤務。読売新聞の英字日刊紙「デイリー・ヨミウリ」(現ジャパン・ニューズ)の記者・編集者を経て、2002年、渡英。英国をはじめとした欧州のメディア事情、政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。最新著書に『フィナンシャル・タイムズの実力』。

競合はネット企業

放送と通信の融合──英国ではこれがすでに現実化している。
2003年に設置された「オフコム(情報通信庁)=Office of Communications」が放送業、通信業の規制監督を行っており、両業界はひとまとまりとして認識されている。
テレビ番組は放送局側が決めた番組表に沿ってテレビ受像機でのみ見るものではなく、いつでもどこでも、多様なデバイスで視聴するものとなった。「放送局=デジタル・メディア」であり、動画・音声コンテンツのプロバイダーとして、オンデマンド・サービスを提供する米ネットフリックスやHulu(フールー)、あるいはアマゾンと競争する位置付けだ。
日本から見ればすでに「未来図」となっているように見える英国の放送業界で大きな存在感を持つのが英国放送協会(BBC)。そのデジタル戦略や今後について、日本のNHKとの比較を交えながら、記してみたい。