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65-74歳の増える街

2040年、あなたはどこに住むべきか?

2016/2/11
高齢化の進む地方。しかし、65〜74歳の高齢者は大幅に減る都道府県と、逆に増える都道府県があります。「30年後はどこに住むか?」を考えるのも30年後に備えた資産運用を考える場合には大切なことではないでしょうか。

先日出張で松山に行ってきました。1泊2日だったのですが、抱えている原稿の締切もあって、ホテルに籠ることが多く、残念ながら観光があまりできませんでした。

ところで、このところ地方の都市に出張に行くといつも聞かされることがあります。「この街は高齢化がずいぶん進んでるんですよ」。

一般論としては、『高齢化は困る』ということでしょう。しかし、金融ビジネスで考えてみると、「それじゃもっと若い方々に投資を考えてもらうようにしましょうよ」と提案すると、「若い人はなかなか投資ができなくて、やっぱり高齢者がお金持っているんですよ」と答えが返ってきます。

いったいどっちが本当の言葉なんでしょう。「高齢者」、この言葉は“地方のお荷物”ではあるが“お金を持っている”ということなのでしょう。

高齢者が増える都道府県

ある金融機関に高齢者と金融ビジネスについて話をしてほしいと頼まれた折に、この2つの高齢者に対する見方をどう考えたらいいかを少しまとめることにしました。

高齢者といっても、使うときに定義が少し違っているのではないでしょうか。高齢化率を計算するときには65歳以上を使います。65歳以上人口が全人口に占める比率、これが高齢化率です。
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しかし、一律に高齢者とくくらないで、65歳〜74歳までの人口と、75歳以降の人口で2つに分けてみます。2040年、今から25年後。このコラム、『30年後に備える資産運用』の主な読者が高齢者にカウントされるときに、65歳〜74歳までの人口と、75歳以降の人口のばらつきを都道府県別にみたのが表です。

国立社会保障・人口問題研究所が推計した人口予想をもとに2040年の都道府県別高齢化率と、65歳から74歳までの増減をマトリックスにしました。

すべての都道府県で高齢化率は上昇しますが、65歳から75歳までの人口の動きは大きくばらつきます。10%以上減る都道府県、一桁の減少にとどまる都道府県、そして増加する都道府県。

皆さんが首長だったら、どの都道府県を目指しますか。いや、あなただったらどの都道府県に住みたいですか。

これが資産運用とどうつながるのか。

私はいつも、60歳から95歳までの生活設計を考えてから、30年後のための資産運用を考えるべきだと伝えています。その生活設計に、60歳からどこに住むか、は大きな問題です。

松山にみる地方都市移住

松山を例に、なぜ地方都市移住が必要かを考えてみます。消費者物価地方差指数(2013年)を使って東京都区部を100とした指数をみると、松山の消費者物価は93.4、小売物価統計(2013年)でみると、家賃はなんと37.5です。

残念ながら愛媛県は65〜74歳人口が10%以上減る県ですが、都市としては松山に注目しています。人口50万人強と四国最大にもかかわらず、人口密度は高く、非常にコンパクトにできています。

日銀の支店があり、高島屋や三越などの大きなデパートもあります。道後温泉、海の幸も豊富で、来るたびに何か楽しいことが見つかります(今回は残念だったのですが)。

物価や家賃などをみると、退職後に移り住むにはいい街の一つではないかと思います。生活水準を下げないで、生活“費”水準を下げることができるならば、日本でも「退職したら移住する」という考え方も必要なのだと思います。

同じ生活水準を維持できる環境のもとで、生活“費”水準がほんの少し減らせるならば、用意しなければならない退職後の生活資金を大きく減らすことができます。

アジアの良い前例に

各地の自治体もこうした事態をどう考えるのか対策を早めに練っていく必要があります。日本の高齢化をとめられないのであれば、いかにうまくそれと付き合っていくかは大事なことです。

アメリカにはもうずいぶん前から55歳以上でないと住めないいわゆるリタイアメント・コミュニティがたくさん存在しています。

その中から自分にあったコミュニティを探すための指標として、雑誌などでは、犯罪率、物価の変動率、税率の違いなどを使ってランキングにします。

日本では地域ごとに税率が変わるということはありませんが、もし道州制が導入されれば地方ごとに税体系を変えて特色を出せるようになるかもしれません。マイナンバーの普及で移り住むことも容易になるはずです。

日本でもアメリカのようにリタイアメント・コミュニティを探して、移り住む時代になるかもしれません。

超高齢社会では医療ネットワーク、公共サービスネットワーク、コミュニティの環境などが多岐にわたって求められ、社会インフラの集合体として高齢者にやさしい街づくりが求められます。

もし高齢者とうまく折り合うことのできる街づくりが地方都市でつくり上げられれば、将来大きなビジネスモデルに広がるかもしれません。

アジア諸国は日本に次いで高齢化がかなり進むと言われています。韓国、台湾、シンガポールは、世界で最も高齢化のスピードが速い国と言われています。中国も一人っ子政策を長く続けたことで、一気に高齢化が進む可能性があります。

これらアジアの地域は、日本でつくり上げられた「高齢者とうまく折り合うことのできる社会システム」を輸出する大きな市場として見ることができます。ものづくりの日本からシステムづくり、システム輸出の日本へと変わっていくことができるかもしれません。

個人の資産運用から少し離れた議論になりましたが、久しぶりに地方都市の中でも好きな松山に訪れて、改めて地方都市移住と30年後に備えた資産運用を考えてみました。

*本連載は毎週木曜日に掲載予定です。