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要約で読む『世代論の教科書』

異世代との会話に困っている人へ。各世代の価値観がわかる1冊

2016/2/9
時代を切り取る新刊本をさまざまな角度から紹介する「Book Picks」。毎週月曜日は「10分で読めるビジネス書要約」と題して、今、読むべきビジネス書の要約を紹介する。
今回は、博報堂で長らくマーケティング活動に関わってきた阪本節郎氏、原田曜平氏による、世代の特徴を論じた書籍を紹介する。団塊世代、新人類世代からさとり世代まで、6つの世代の価値観や行動特性を明らかにする。
どうも異世代との会話が続かない、異世代が何を考えているのかわからない……そんな悩みを持つ方にぜひ読んでほしい1冊だ。

【Flier】世代論の教科書.001

団塊世代 1947~51年生まれ

団塊世代の時代背景と特徴

団塊世代は、同世代の数が多いので競争意識が強い。終戦直後に生まれたため、前時代の封建性と新しい時代の革新性の両面を持つ。

幼少時から戦後民主主義教育や欧米文化に触れて成長し、「戦争の呪縛」から解放された最初の世代だ。戦争に対しても公然と「反対」と主張することができることも特徴である。

一方で、当時の世界情勢から「思想」が重視され、「保守」「革新」の2つの立場が生まれ、選択を迫られた。こうした「思想の呪縛」からは自由になり切れなかった側面もある。

また、初めて日本に「私生活」を持ち込んだ世代だ。勉強ばかりしている人は「ガリ勉」と嫌われ、音楽やファッション、車などに詳しい人が一目置かれ、後に若者文化や反体制へとつながっていく。

子どもの頃にテレビが普及

1959年の皇太子ご成婚を機にテレビが普及。団塊世代が小学校高学年の頃にテレビが家庭に入った。

『月光仮面』『赤胴鈴之助』『鉄人28号』『鉄腕アトム』などの実写版が放映されて人気となり、それが現在のアニメにつながっている。開局したばかりの民放では、『名犬ラッシー』などアメリカのドラマが放送されていた。

新しい若者文化を創造した団塊世代

欧米文化を自分のものとして受け入れた最初の世代

アメリカの生活文化を知る体験は、アメリカ東部の学生ファッションであるアイビールックの大流行につながる。

1962年にはアメリカのザ・ベンチャーズが来日し、中高生だった団塊世代はその音に魅せられた。やがてイギリスからビートルズが来日。米英のバンドが多く来日し、それらを受け入れていった。

「モテたい」を背景に生まれたモノ

「モテたい」という気持ちを背景に1964年に「平凡パンチ」「週刊プレイボーイ」が創刊。「バイタリス」「MG5」など男性化粧品も出始める。日産スカイラインの広告で「女の子と二人で車に乗ろう」というキャンペーンも展開された。

男女合同ハイキング(合ハイ)を始めたのも団塊世代で、それが後の合コンにつながる。

以前の世代はフォーマルな装いでダンスパーティをする「ダンパ」だったが、団塊世代から男女の付き合い方がカジュアルになっていった。

若者文化を最初に始めた世代

1960年代から1970年代にはボブ・ディランやピーター・ポール&マリーなどがフォークソングでベトナム反戦を歌い、日本でも関西フォークが出て、それがニューミュージックにつながっていく。

ポップスやロック、ストリートライブ、シンガーソングライター、男の長髪、ジーンズなど、今まで日本になかったものが登場した。

団塊世代はそれまでの大人文化を払拭(ふっしょく)し、本格的な若者文化を最初に担っていった。

団塊世代の女性たちが日本で初めてミニスカートとジーンズをはいた。ファッションに敏感な団塊女性を対象に「anan」「nonno」が創刊され、小物や雑貨、新しい旅のスタイルにも触れた。

漫画雑誌の登場

「週刊少年マガジン」と「週刊少年サンデー」が1959年に創刊。専門書を抱えて図書館に行く大学生のスタイルが、小脇に漫画を挟んで喫茶店に行くスタイルに変わった。

団塊世代の卒業時には「ビッグコミック」、中間管理職になりかけた頃には「モーニング」などの漫画雑誌が創刊され、子どものものだった漫画を上の年齢層に持ち上げていった。

団塊世代の家族のかたちと消費スタイル

恋愛婚が主流に

団塊世代は、初めてデートをした世代でもあった。デートをしてしばらくすると同棲するようになった。

戦中派の母親は、「自分には青春がなかった」という思いが強く、自分が母親となって娘が男性と出かけるのを認めるようになっていく。

団塊世代は自分の意志で恋愛し、結婚相手を選択した。見合い婚と恋愛婚の割合が逆転し、同年齢婚が増加した。

専業主婦になったが、家庭で「革新」

1960年代後半にアメリカで起こった「ウーマン・リブ」(女性解放運動)が日本でも広がり、団塊女性たちも共鳴したが、彼女たちは能力が高くても男性と同等の仕事をするのは難しく、多くは専業主婦になった。

団塊女性は、1970年代の公害問題や合成洗剤問題に声を上げ、それが「無リン洗剤」や「詰め替え洗剤」の発売へとつながった。

新しい生活のつくり方を提案する雑誌「クロワッサン」やシンプルな暮らし方を実現する「無印良品」を支持。

男性がサラリーマンとして前の時代に同化したのとは対照的に女性は生活者として革新を続けた。

団塊女性は社会現象を起こし、個人消費のカギも握る。

若い頃、グループサウンズブームを起こした彼女たちは子育てを終えて再びパワーを爆発させ、韓流ブームを起こす。さらに、石川遼や羽生結弦を応援し、錦織圭を見て自分もテニスを頑張るという姿につながっていく。

団塊世代から「子育て・孫育て」が変わる

現在、団塊女性たちは、親の介護をしながら団塊ジュニア世代の娘が仕事をするのを応援している。自分たちは仕事をしたくても家庭に入らざるを得なかった思いからである。

団塊世代の孫たちは、今、小学生から中学生ぐらい。それまでの祖父母はよくわからないまま孫にモノを買い与えていたが、団塊世代の祖父母は、孫のファッションコーディネートをするなど、「おカネも出すが、口も出す」存在になっている。

仲間意識が強く、時代の先端を担いたい

夫が定年退職する際の団塊女性へのある調査によれば、複数の人が「家カフェ」が夢だと答えた。自宅の1階を友人や近所の人がお茶を飲めるカフェにし、商売としてではなく、「みんなが集まれる場」をつくりたいと考えている。

最初のテレビ世代である団塊世代はマスメディアとの親和性が高い。ラジオのオールナイト放送、深夜放送は団塊世代とともに始まり、FMでイージーリスニングやニューミュージックを聴くことも始めた。

仲間意識が強く、「仲間消費」や「仲間消費+夫婦消費」が期待できる存在だ。

仲間好きの価値観は団塊ジュニア世代、さらにその子ども世代にも受け継がれ、世の中の流れにもなっている。

アメリカ文化を生活に吸収してきた世代のため、「新発売」「日本初」「世界初」というフレーズが好きで、新しいものは仲間が使い始めると一気に広がる。団塊世代が時代の担い手であり、消費もリードしてきているという事実を認めると満足し、消費につながりやすい特性もある。

団塊男性は引退後、妻をビジネスクラスで海外旅行に連れていくなど、デートしていた時代を思い出し、「妻に喜んでもらうこと」を考えるため、日本に「新しい大人文化」や「大人消費」が生まれようとしている。

パソコンは定年後の武器

団塊世代は会社員生活の終わりにパソコンを使っていたため、定年後も仲間とのメールのやりとりや情報収集にパソコンを利用している。ネットショッピングも活用し、購入単価も高い傾向がある。

団塊女性は、友人というヨコの回路、母娘というタテの回路があり、「T字型のコミュニケーション」が特徴だ。つまり、ヨコはお友達同士、タテの母娘で、携帯メールでどんどんコミュニケーションをしている。

彼女たちに使いやすい端末やSNSが登場すれば、コミュニケーションツールとして爆発的に広がるだろう。

新人類世代 1961~65年生まれ

新人類世代の時代背景

高度経済成長を支えた「モーレツ社員」の子どもが新人類世代である。急激に豊かになる日本の空気を感じて幼少期を過ごした世代とも言える。

1980年代半ばに入社してきた新入社員を指して、当時の管理職が「一風変わった若者」「よくわからない若者」ということで「新人類」と呼ばれた。

共通一次試験を初めて受け、男女雇用機会均等法が施行された世代でもある。

1989年にはベルリンの壁が崩壊して米ソ冷戦が終わり、日本でも「保守」と「革新」の対立は意味を失っていった。

新人類世代の特徴

新人類世代からは、思想が決定的な意味を持たなくなり、「自由で軽やか」、悪く言えば「薄っぺらく」なった。軽いサブカルチャーがどんどん出てきて、それを楽しんだ。

「楽しいことが一番」であり、新人類世代では、「楽しく遊べるセンス」が何より大事だという風潮になった。

また、「封建的な感覚が消滅」し、上下関係が希薄である。上の人を立てるとか立てないということは、新人類世代にとっては重要ではない。

消費と文化を軽やかに楽しむ新人類世代

ハナコ世代の女性がバブルの胎動を起こす

新人類世代の時代の空気感や世の中の流れ、消費の中心は女性が担い、女性の力が強くなって、どんどん外に出てきた。

情報ファッション雑誌、情報文化雑誌の両方の要素を持つ「Hanako」が創刊され、おカネに余裕のあるOLである女性たちが街歩きやグルメを楽しんだ。

1981年にボートハウスのトレーナーが女子大生を中心に流行し、いわゆる「女子大生ブーム」が生まれた。ファッションは「ハマトラ」(横浜トラッド)の系譜を引くお嬢様系スタイルが主流だった。

新人類世代はブランド好きで消費好きといわれ、バブル期にヤングサラリーマンとして消費をリードした。ブランドをしっくりと馴染んで着こなせるようになった世代でもある。

中高生でウォークマンを手にする

1979年に発売されたウォークマンは、新人類世代の象徴的商品だ。音楽に対する感度が最も高い中高生時代にウォークマンを手にしている。

新人類世代が成人する1980年代にはアイドルブームが発生し、キャンディーズ、ピンク・レディー、チェッカーズ、たのきんトリオ、松田聖子、中森明菜、小泉今日子、少年隊などが活躍した。

また、アニメや漫画に情熱を注ぐマニアックなファンを指す「オタク」がサブカルチャーの担い手として存在感を増し、市民権を得ていった。こうした現象が今の「アキバ」につながっているといえるだろう。
 一読のススメ

「団塊」から「さとり」までの6つの世代のうち、上記は「団塊」「新人類」の章で構成した。ほかの世代の章や、最終章の「クロスジェネレーションで見れば」を読むと、各世代とそれぞれの関係性や対比がよりよくわかるだろう。

個人的な興味を満たすだけでなく、ビジネスでの雑談にも役立ちそうな一冊だ。

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<提供元>
本の要約サイトflier(フライヤー)
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