[東京 27日 ロイター] - キヤノン<7751.T>は27日、2016年12月期連結営業利益は前年比1.3%増の3600億円を見込んでいると発表した。前期に利益を圧迫した一時的な経費がなくなることなどが要因。ただ、デジタルカメラの販売減に歯止めがかからず、当面は苦しいかじ取りを迫られそうだ。

2015年12月期の営業利益は前年比2.3%減の3552億円と増益予想が一転、3期ぶりの減益となった。会見した田中稔三副社長は落ち込んだ理由について「15年は(5年に1度開催する展示会)EXPOの開発投資や開催費、アクシス社の新規連結による経費増など特殊要因がかさんだ」と説明した。

今期は「15年に発生した特殊な経費の増加要因がほとんど解消する」として増益を見込でいるが、会社予想はトムソン・ロイターのスターマイン調査がまとめたアナリスト15人の予測平均値3714億円を下回る弱い数字となっている。

売上高は前年比1.3%増の3兆8500億円と2期連続の増収を計画。「カメラ関係は相変わらず下がるが、産業機器、複写機などは伸びるので、キヤノンブランドだけでも300億円ぐらい売り上げが伸びる。加えて、アクシス社やOEM(相手先ブランドによる受託生産)などでも300億円ぐらい増える」として、前期から500億円の上積みを目指す。

部門別の売上高は複写機などのオフィス部門が前年比0.2%増の2兆1148億円、産業機器その他部門は同18.9%増の6236億円を計画。一方、カメラなどのイメージングシステム部門は同5.1%減の1兆2000億円にとどまる見通し。レンズ交換式カメラ販売は同7%減の520万台、コンパクトカメラ販売は同24%減の500万台を見込んでおり、厳しい状況が続きそうだ。

業績予想の前提となる為替レートは1ドル120円、1ユーロ130円。

<東芝メディカル入札へ>

田中副社長は、東芝<6502.T>が売却手続きを進めている医療機器会社、東芝メディカルシステムズの入札について「当社も創業以来、医療機器事業はずっと続けており、入札には一応、手を挙げている」と述べ、入札に参加する意向を明らかにした。「高収益の会社なので、非常に(買収合戦が)過熱している。医療機器が大きくなるための千載一遇のチャンスだと思うが、競争相手もいるので、対応を十分に考えていきたい」と語った。  

<真栄田専務が社長に>

決算会見に先立ち、同社は御手洗冨士夫会長兼社長・最高経営責任者(CEO)が社長職を退き、真栄田雅也専務が社長兼最高執行責任者(COO)に昇格する人事を発表した。今年から始まった5カ年の中長期経営計画の達成に向けて、経営体制を強化する。

3月30日開催の定時株主総会とその後の取締役会で正式決定する。

会見した御手洗会長は「カメラを中心とした光学部隊と複写機を中心とした事務機部隊は成熟化して成長力が鈍ってきているので、開発投資をしてシェアを拡大することで成長を図っていきたい」と説明。さらに、商業印刷、監視カメラ、半導体ナノインプリント技術を用いた半導体製造装置の「3つの新しい成長力のある部門に資本・技術を投下して、成長力を獲得していきたい」と語った。

真栄田次期社長は「私に与えられたミッションは事業強化だ」と述べ、「強いプロダクトを継続的に投入し、最先端の生産技術で確実に原価低減を継続することに頑張りたい」と抱負を語った。

*内容を追加しました。

(志田義寧 編集:吉瀬邦彦)