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1984年東京大学法学部卒業後、三菱銀行に入行。1995年5月為替資金部に異動し為替アナリストとして活動を開始。企業の抱える為替リスク実態や債券投資・金利動向に詳しい為替アナリストとして活躍。2004年6月に経済調査部チーフエコノミストに就任。2007年1月に三菱東京UFJ銀行を退職した後、ドイツ証券、クレディ・スイス証券にて為替ストラテジストを務める。2012年8月に独立。オフィスFUKAYAを立ち上げ、為替アナリスト活動を中心に企業および個人投資家へのコンサルティング、コーチングを開始。同年12月株式会社マーケットリスク・アドバイザリー、フェローに就任。さらに2013年3月FPG証券・代表取締役に就任。同社の経営にあたりながら為替アナリスト活動を継続。メディアでの為替コメント多数

1984年東京大学法学部卒業後、三菱銀行に入行。1995年5月為替資金部に異動し為替アナリストとして活動を開始。企業の抱える為替リスクの実態や債券投資・金利動向に詳しい為替アナリストとして活躍。2004年6月に経済調査部チーフエコノミストに就任。2007年1月に三菱東京UFJ銀行を退職した後、ドイツ証券、クレディ・スイス証券にて為替ストラテジストを務める。2012年8月に独立。オフィスFUKAYAを立ち上げ、為替アナリスト活動を中心に企業および個人投資家へのコンサルティング、コーチングを開始。同年12月株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー、フェローに就任。さらに2013年3月FPG証券社長に就任。同社の経営にあたりながら為替アナリスト活動を継続。メディアでの為替コメント多数

予測の3つのポイント

・ドル高・円安のトレンドが続くが、そのペースはかなり緩慢。130円への到達は来年およびその先を見通しても難しいのではないか。

・2016年の相場環境を考えるにあたり、まず考慮するポイントはグローバル経済の動向、肝心なのは中国経済の見方だ。

・市場全般の動向として、小規模のリスク回避局面はあるとしても、基本的にやや楽観的な状況は続くだろう。

2016年のドル円相場は

2016年のドル円相場の予想は上下に割れている。ドル安円高予想は少数派ながら、ここにきて数を増しているようだ。2016年の年末は115円、110円、あるいは極端な80円台を見込む向きもいる。

一方、なお多数を占めるのがドル高・円安予想だが、130円あるいはそれよりもドル高・円安を見込む向きは少なくなった。

では自分の予想は、というと、なおもドル高・円安のトレンドが続くが、そのペースはかなり緩慢。130円への到達は来年およびその先を見通しても難しいのではないか、との見方だ。

2015年のレンジは115円台後半から125円台後半のほぼ10円幅だった。2016年はほぼ120円台で推移し、2015年よりもさらにレンジが狭くなる可能性がある。上値は128円程度と見込んでいる。125円台の2015年の高値を抜けても、ドル高・円安が加速しないのではないか。

下値は120円割れにとどまる可能性、あるいは時間が2015年よりも少なくなると考える。すでにトレンドとしてドル安円高に反転したとはみていない。ただし、2016年末から2017年にかけては、ドル高・円安が中長期的に天井を打つ可能性に留意したい。

ドル安円高説には無理がある

ドル安円高派の論拠はおおむね次のようなところだろう。

・日本の貿易収支がほぼトントンまで改善し、経常黒字がコンスタントに計上されるようになったため、これが需給面から円高圧力となる。

・これまで米国が利上げを開始した局面ではドル安になっていたため今回も同様にドル安円高となる。

・ドル買いポジションが積み上がっており、その巻き戻しでドル安となる。

・日銀の追加緩和はなく円高となる。

まず経常黒字については、引き続き対外直接投資が活発であることから、需給は相殺され円相場に対して中立と考えられる。また原油など商品相場の大幅下落により輸入金額が減少していることも対外収支の改善に寄与しており、これは不安定要因。裏を返せば原油価格が上昇すれば輸入金額が増えて貿易収支が悪化する。

円安や海外景気の拡大を受けて輸出数量・輸出金額の増加がみられなければ円高圧力が高まっているとは言いにくい。

米国の利上げ開始でドル安、との見方は、今までそういうことが多かったから、ということでしかなく根拠は薄弱だ。それを言うのであれば、急速な利上げは景気鈍化につながりやすい、あるいは長期金利の急上昇=債券価格の急落が生じることで米債売却などがドル安につながる、という方がまだ説得力がある。

この場合は、今回の利上げが極めて緩慢に実施される、景気鈍化につながりにくい、長期金利の上昇が緩慢、という従来と異なる点を考慮する必要がある。米国景気の拡大が腰折れしにくい、信認が維持される、という点も含めて、ドルは下落しにくい状況が続くのではないか。

ドル買いポジションの積み上がりの反動というのは、ドル安要因というよりも、一時的なドル高の調整でしかない。ドル高トレンドそのものを転換するものではなく、ドル高が持続するなかでの一時的なドル安にとどまるだろう。

ファンダメンタルズや資本市場の相対的な魅力が維持されるならドルへの資金流入は続くはずだ。最後に、日銀の追加緩和見送りは、さらなる円安を抑制する要因ではあるが、大規模な量的緩和は継続されることから、円安圧力を失うものではない。総じてドル安円高説には無理がある。

考慮するポイント

2016年の相場環境を考えるにあたり、まず考慮するポイントはグローバル経済の動向だ。米国経済の緩やかな景気拡大に変化はなくまずまずとなろう。景気動向を主要因としてリスク回避が高まることはなさそうだ。一方、米国の利上げが進捗(しんちょく)し、米長期金利が上昇するなか新興国経済への根強い懸念は残るだろう。そのドル円相場に対する影響は中立とみられる。

肝心なのは中国経済の見方だ。減速傾向が続いており、人民元は対ドルでさらに下落が見込まれるが、金融政策格差からみれば自然なことで、2015年の夏のようなショックは生じないだろう。不安感がさらに増大することはなく、むしろ安心感が生じる可能性もある。

この場合、商品市況が下げ止まり反発することとなろう。原油価格の低迷は、中国景気とは別の要因もあるが、商品市況全般がすでに大きく下落しているだけに、2015年に比べればさらに下落する可能性は小さく、反発する可能性は大きいのではないか。

こうしたことから、市場全般の動向として、小規模のリスク回避局面はあるとしても、基本的にやや楽観的な状況は続くと想定する。

米国の利上げは淡々と四半期に1回、0.25%のペースで実施されると予想される。足元金利の上昇と継続的なドル金利先高感がドルを支えるだろう。緩やかな利上げは米債投資への妨げとはならない。

米国株は利上げや長期金利上昇、ドル高のプレッシャーを受け上昇力こそ削がれるが、良好な景気動向、米国経済への信認から本格的な調整局面は回避されると想定する。

グローバルな株価の安定、堅調地合いはなお維持され、リスク選好の悪化は防がれるとみる。ドルは全般的に堅調推移しよう。

ただし2016年末にかけては、利上げペースがその先2-3年も同様なペースで続くかどうかに疑念も多くなることからドル高圧力も緩和する可能性がある。

足元ではゼロである政策金利が2年後に2%になることを想像することは難しくない。しかし2016年末に1%に上昇していたとして、そこから2年後に3%になることを想像するのは難しくなる可能性がある。ここは米国経済の拡大持続力・インフレ率の動向に依拠することになる。

一方、日本においては、なおも根強い日銀の追加緩和期待が次第に後退する可能性がある。さらに2016年末や2017年を見通した場合、消費増税の実施が控えるなかではあるが、2017年央以降の量的緩和縮小が話題となることも想定され、その場合には円先安感が弱まる、あるいは失われる可能性もある。

その結果、2016年末にかけて中長期的なドル高・円安トレンドにピーク感が台頭するリスクを視野に入れたい。

ドル円相場は堅調も130円には届かず、120円台の狭いレンジで推移する可能性が大きいとみる。ユーロは、景況格差・金融政策格差を主要因に対円でも軟調。135円近い水準は維持困難で、購買力平価からみた中長期的な均衡水準である120円台半ばに下落すると想定。

リスク関連通貨は中国懸念の一巡、商品市況の底打ち・安定、などを背景に同様に底打ちないし安定推移と予想。対円ではやや持ち直し傾向とみる。

(写真:Kenishirotie/iStock.com)