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ロボットを体内に受け入れることは当然になるか

リモート手術を実現する「医療ロボット」の進化

2015/12/31

今やロボットはどんなものであれ注目を集める存在になっているが、その中でも新しいタイプの医療ロボットは期待される分野である。

医療ロボットでは、ダヴィンチという大型のロボットがよく知られている。十数年前から市場に投入されているこのロボットは、大型のロボット・アームが何本もついたものものしい姿である。

医師がコンソール内で操作をすると、患者の上でそのロボット・アームが動き、その先に付けられたメスなどの機器が実際に手術を行うというしくみだ。

これは、当初は戦場で重傷を負った兵士の手術を、遠隔地にいる医師が行うという想定で研究・開発された手術ロボットなのだが、医師と患者が同じ部屋にいる場合でも、医師の手とメスとの間にロボット技術を介在させることで手術の質や効果を向上させられることがわかった。

たとえば、医師の手のぶれを小さくするとか、手術を低侵襲性にできるとか、医師を放射線への露出からまもるといったことだ。現在は広く世界中で利用されている。

内視鏡に変わる「ヘビ型ロボット」

医療ロボットというと、これまではこのダヴィンチが何といっても有名だったのだが、最近はそれ以外にも多様な医療ロボットが出てきた。その中から、ここ数カ月の間にアメリカで投資資金を調達した医療ロボット会社にどんなところがあるかを見ながら、どういった技術が生まれているのかを考えてみよう。

マサチューセッツ州を拠点にするメドロボティクスは、極小のヘビ型ロボットを内視鏡などに利用するという技術を開発した。ヘビ型ロボットは通常でも応用がかなり期待されている。狭いところへ入って行ったり、曲がって先が見えないところへも到達したりできるからである。

これを体内に入るほどに小さくしたのが、メドロボティクスのヘビ型ロボットだ。これまで体内でカーブがきつくてリーチできなかったとか、これまでの内視鏡では痛みが伴っていたといったケースを大幅に向上させるものと思われている。

ロボットのサイズをどんどん小さくしていけば、体内でも役に立つことができるという一例だ。同社の機器は、すでにFDA(アメリカ食品医薬品局)の承認も受けている。

カナダのバイオニック・ラブズも投資を受けた。同社は、パワースーツとも呼ばれる外骨格(エクソスケルトン)を、対麻痺(ついまひ)の患者などを対象に開発している。

下半身をサポートする同社の外骨格を着けることで、起き上がったり歩いたりすることができるだけでなく、リハビリにもなる。同社は、当初はリハビリ用に開発を行うというが、これもロボット技術で注目を集める応用分野である。その後家庭用パワースーツとして売り出す予定という。

さらに多様化する医療ロボットのバリエーション

ダヴィンチのような低侵襲性の手術ロボットを開発しているのは、ヴァーチャル・インシジョンだ。大腸などの腹部の処置に利用できる。ただし、ダヴィンチと異なるのは、サイズが極小なこと。手のひらに載るくらいの2本の小さなロボット・アームが付いている。同社のサイトを見ると、これがそのまま腹部に入れられるということもあるようで、体内ロボットの一種である。

眼科にもロボットが登場する。まだステルス・モードで開発中のため、何をするどんなロボットが出てくるのかは不明だが、白内障の治療のためではないかと見られているのが、オーリス・サージカル・ロボットが取り組んでいるとされるロボットである。

同社には、数々の医療ロボットを開発してきたフレッド・モル氏も関わっており、どんな製品が登場するのか期待が集まっている。

と、最近投資を受けたものだけでも、これだけ多様な医療ロボットが開発されている。人間の身体にロボットが斬りつけるとは、と以前ならば警戒されたものだが、医師の手が届かないところにもロボットは到達し、人間の裸眼では見えないものも、ロボットならば見つけ出すことができる。そうしたロボット技術の利点が人の健康をまもるために発見され、活用されている。

ロボットが人間を助けてくれる。そんなことが、医療ではもう当たり前になりかけているのである。

*本連載は毎週木曜日に掲載予定です。