【最終回】LIBOR操作の銀行員ヘイズは首謀者か、当局のスケープゴートか?
2015/11/03, NewsPicks編集部
「赤信号みんなで渡れば怖くない」は通用しなかった……。
LIBOR操作の銀行員ヘイズは首謀者か、当局のスケープゴートか?
2015/11/3
ヘイズは業界のスケープゴートだったのか
調査開始から7年目となる2015年5月26日、ヘイズはLIBOR詐欺事件で最初に裁かれる人物として、テムズ川のほとりにあるサザーク刑事法院の第2法廷に姿を見せた。傍聴席は満員だ。
ノータイでチノパンツに黒いセーター姿のヘイズは、珍しく金髪をきちんと整えており、穏やかな人物に見えた。検察が主張する攻撃的なワルにはまったく見えなかった。記者席には母親の姿もあった。
男性7人と女性5人からなる陪審員は、ヘイズがアスペルガー症候群の診断を受けたことを伝えられた。この障害は、正直な行為と不正行為を区別する能力に影響を与えるものではないが、ヘイズのぶっきらぼうな言動の原因となっている可能性があると、判事は説示した。
通常、刑事事件の被告は法廷の中央にあるガラス張りの被告人席に座らなければならないが、ヘイズはアスペルガーを理由に、弁護団席に座ることを許された。隣には、彼のストレス状態を観察し、興奮したら(その場合、頭を激しく振って、弁護士に殴り書きのメモをわたすことが多い)「落ち着いて」とささやく専門家が付き添った。
SFOのムクル・チョーラ主席検事は、ヘイズの罪状を淡々と読み上げた。「証拠を見れば、動機は非常に単純だったことがおわかりになるでしょう」と、チョーラは冒頭陳述で語った。
「それは強欲です。ヘイズ氏の欲望は、少しでも多くのカネを稼ぎ、儲けることにありました。会社のために儲ければ儲けるほど、会社は彼の仕事ぶりを高く評価し、当然ながらより高い報酬を払うと考えたからです」
newspicks.com
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コメント
注目のコメント
ヘイズの話を読んで、個人の問題もあるし、そのような行動を許容した環境・風土の問題もある。1996-8年の日本の金融業界でも同じような時期があったことを思い出す。
新たな枠組みが出来ても、その新しい風土もいつかは淀み、第二、第三のヘイズが生まれる。透明性を担保していくかを相当意識していかなければ、同じことを繰り返すのが社会だ。「サブプライムローン危機で刑事責任を問われた大手金融機関の経営幹部は一人もいない」こと、さらにはLIBOR操作でも同じ結果となりそうであることを考えると、金融業界の業の深さはまだまだ改善されなさそう。
業界全体として不正が横行していたことを考えると、個人としては極めて重い罪。
1ピースにすぎない彼だが、情報の非対称性でもうける金融業者への怒りという負の感情のはけ口になったのではないかと感じる部分もあった。
本件に関する全ての関係者への裁きが終わったわけではない。
そういう意味では、LIBOR事件はまだ終わっていないのだろう。