(ブルームバーグ):三井不動産グループが販売したマンションで建物の傾きが見つかった問題で、担当していた旭化成建材が杭(くい)打ちをした建物に関するデータが全国に約3000棟分あることが明らかになった。親会社の旭化成はこれらのデータで書き換えがなかったかなどについて、調査を行うとしている。旭化成の広報担当、奥ひかり氏がブルームバーグ・ニュースの電話取材で語った。

旭化成はまた、今回の問題の背景についても、人手不足がなかったかどうかを含め、当時の状況を調べる方針だとしている。

問題が発覚したのは、三井不動産レジデンシャルが2006年に販売を始めた横浜市都築区の大型マンション。施工会社の三井住友建設は14日夕、不具合を認めるとともに、「杭工事を担当した下請け業者が一部の杭に関して支持層到達についての施工データを転用・加筆して弊社に提出していたという事実も確認されている」と発表した。下請けした旭化成建材について、旭化成は同日夜、杭打ちの不具合とデータ加工があったと発表した。

旭化成によると、このマンションでは一部の杭が硬い地層である支持層に到達していなかった。また、杭のデータについて、重複した部分があったり、書き直しが認められたという。

富士通総研の上席主任研究員・米山秀隆氏は、今回の問題の背景について「建設現場で必要以上にコストダウン圧力がかかり、現場のモラルの低下につながった可能性があるかもしれない。発覚した後のリスクは、評判、販売の面で非常に大きい」と述べた。

15日の旭化成の株価は前日比13.6%安の792.7円で取引を終了。下落率は1999年8月の14.6%以来の大きさだった。

構造問題


このマンションが販売された06年当時は、低金利下で不動産のミニバブルが発生し、新築マンションの供給が多い時期だった。不動産経済研究所のデータによると首都圏の新築マンション発売戸数は06年は約7万4000戸と、リーマンショック後の09年の3万6000戸の倍以上の水準。首都圏の平均価格は06年以降値上がりが鮮明となり、06年の4200万円から13年は4900万円に上昇した。

日本建築家協会の筒井信也専務理事は、個社の事情についてはコメントを控えながらも、「当時の建設市場はひっ迫していたので、それがトラブルの背景にあったかもしれない」と指摘。「人手不足や工期まで時間が足りないといった問題はどこかでミスを生む可能性がある」と話した。ゼネコンだけでなく、1次・2次の下請けや専門業者が関わってくるため、個々の業者以外には事情が分からない領域があり、「問題があっても見逃される可能性もある」という。

現在はアベノミクス効果で再び建築ラッシュになっており、同氏は「建築資材が値上がりしたり、20年に東京五輪を控えていることから、工期厳守の圧力がある。デベロッパーにせっつかれる中で、トラブルの可能性が大きくなっているのは確かだ」と警告する。

国土交通省がまとめた建設労働需給調査によると東日本大震災が発生した11年の半ば以降、労働者不足が長期化している。最も不足したのは14年4月だった。

対応


施工した三井住友建設は先週から、マンション住民に対し、説明会を開いていることを明らかにした。広報室長の平田豊彦氏によると、どの程度の補修が必要なのかを見極めるため、問題箇所の精査を行うとしている。

旭化成の奥氏は、「杭に関して補修・改修することについては全額負担する」と話したが、「建物すべての費用を負担するということではない」としている。三井不動産や三井住友建設とも責任を認めており、費用負担の割合は関係者間で今後、話し合われることになる。

--取材協力:Kathleen Chu.

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