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「ドリームフォース」イベント・リポート(2)

ウーバーCEO「すべての自動車がウーバーの車だったら、世界はより良い場所になる」

2015/9/24

ウーバーCEOが目指す“理想郷”

配車サービス「Uber(ウーバー)」のトラビス・カラニックCEOは、サンフランシスコにあるオフィスの窓から道路を見下ろし、「なぜ、今ここに走っているすべての車が、ウーバーに登録していないのだろう?」と考える。

9月16日、サンフランシスコで開催するセールスフォース・ドットコム主催のクラウドコンピューティング・イベント「ドリームフォース2015」において、カラニックは「もし、すべての自動車がウーバーの車だったら、世界はより良い場所になるだろう」と語った。

彼によると、仮にすべての車がウーバーになった都市は、渋滞や違法駐車などに悩まされることがなく、大気汚染は減り失業率も減少するという。

セールスフォースの共同経営者マークベニオフとカラニックは、ドリームフォースの壇上で、1時間ほどウーバーの起源、社風やウーバーの自動運転車などについて基調講演をした。

今後、車の自動運転がスタンダードになれば、カラニックが目指す“理想郷”はさらに倍の魅力になるとカラニックは言う。

交通事故による怪我や死亡は、ほぼなくなる。なおかつ、運転手の人件費を払う必要がなくなるためウーバーの利用額は下がり、自動車を購入できない人や、公共交通の利用が不十分な地域の住人もウーバーを利用できるようになるという。

Uberのトラビス・カラニックCEO

ウーバーのトラビス・カラニックCEO

ロボットはわれわれの職を奪うのか?

ただし一方で、自動運転に対してネガティブな声もある。たとえば、車の自動運転が普及すると運転手の職がなくなってしまうのではないか? ロボットの普及で失業者は続出するのではないだろうか? といったものだ。

これに対しカラニックは、「過去150年に渡り、新たなテクノロジーがリリースされると一般人にとって“新たな仕事”がもたらされてきた」と語る。

その新たな仕事が、人々の労働時間が短縮したり、今までにない仕事となったりする可能性は高いとカラニックは指摘したが、具体的な職業像については、ベニオフに聞かれても明かさなかった。

一般論で言うと、創立からまだ6年しか経っていない企業が“10年先の計画”を語ることは野心的にみえる。だが、ウーバーは異常に早く成長している。配車サービスを300都市以上で展開し、世界中のユーザー数は1分間で数千人が利用するほどだとクラニックは語る。

今後は、同社が持つ運転手のネットワークを活用し、地域ごとに外食を配信するサービス「Uber Eats」や、相乗り通勤する「UberPool」などの新たなサービスに注力するという。

ちなみに、UberPoolは消費者にとって自動車を購入するより、ウーバーを利用するほうが安くつく、という大きな計画の一部だ。カラニックによると、UberPoolは同社の最も成長している事業のひとつである一方、同社にとって最も利幅の薄い事業でもあるという。

ちなみに、このベニオフとカラニックの対談は、とても友好的な雰囲気だったが、時に見え透いたお世辞も含む内容だった(たとえば、ベニオフはカラニックに「あなたは、大変共感できる人だね!」などとおべっかを使っていた)。

世界中で巻き起こる反ウーバー抗議活動や、社会保険に入れるべきだとウーバーに訴訟を起こすドライバーの存在など、論争中の問題にはいっさい触れなかった。

カラニックは最後に、「われわれは、われわれの前に交通業界の主役だったタクシー業界のように、慢心したくない。私たちはテック企業だから、常に将来を見続ける」と語った。(文中敬称略)

Jordan Krogh travelled to San Francisco as a guest of Salesforce.