超レア遺伝子が可能にするゲノム創薬最前線
2015/09/15, Bloomberg Businessweek
骨粗しょう症治療薬など巨大市場で競争激化
スティーブン・ピートは、真っ赤に熱した電気コンロに手を置いても、ガラスの破片を踏んでも、まったく痛みを感じない。世界にも数十人しかいないとされる先天性無痛症なのだ。
南アフリカのヨハネスブルグに住むティモシー・ドレイヤーは、骨密度が異常に高く、ほかの人なら骨折するような事故に合ってもへっちゃらだ。こちらは硬結性骨化症と呼ばれ、同じ症状を持つ人は世界に100人ほどとされる。
ピートやドレイヤーの持つ超人的な特質は、極めて珍しい遺伝子の突然変異が原因となっている。そこに目をつけたのがアムジェンやジェネンテックなどの大手製薬企業だ。彼らの遺伝子を調べて、新しい鎮痛剤や骨粗しょう症治療薬の開発に役立てられないか――。
病名が付いていることから察せられる通り、痛みを感じないことや、丈夫な骨を持つのはいいことばかりではない。ピートの両親が息子の異常に気付いたのは、生えたての乳歯で舌を噛み切りかけたときだ。
急いで病院に運んだが、先天性無痛症と診断されるまで数カ月かかった。原因は、両親がひとつずつ持つ突然変異遺伝子を受け継いでいたからだった。この種の遺伝子はひとつだけなら良性だが、2つ組み合わさると異常をもたらす。
ドレイヤーの場合は、1歳9カ月のとき突然顔面が麻痺して病院に運ばれた。当初は軽い麻痺だと診断されたが、レントゲン検査により頭蓋骨の過形成が判明。それが硬結性骨化症の診断につながった。やはり両親がひとつずつ持つ突然変異遺伝子が、ドレイヤーの体で組み合わさったのが原因だった。
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コメント
注目のコメント
他にもレア遺伝子の話として有名な例は「HIVにかからない人」ですね。
http://goo.gl/UnWjMI
昔からこのようなレア遺伝子ハントは世界中で行われきましたが、近年ゲノム解析技術が飛躍的に発展したことにより、単純に一つの遺伝子だけでなく、複数の要因が重なって起きる症例の原因遺伝子も大規模な配列解析で明らかになってきました。日本は遅れを取っていますがSCRUM-Japanという産学連携組織が先月にゲノム創薬のプロジェクトを立ち上げています。
http://goo.gl/0wvXQI
余談です。記事の絵のDNAはらせんが左巻きになっていますが、本当は右巻きです。これはプロでも今だに間違えて使っていることがあって、ネタにされています。こういった絵を見る度にチェックしてみてください。Deep learning版ワトソンを使うと、超レア遺伝子も簡単に見つかるのかな?もう既に取り組んでるんだろうけど。
より強い遺伝子を入れ込んでいくことで、サイボーグ人間への道が開けるのか?
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