ギャップ、H&M、ユニクロを尻目に独走
時価総額1000億ユーロに。ZARA、圧倒的強さの理由
2015/8/11
社長は長者番付世界2位
成功を遂げつつある。
8月5日、インディテックスの時価総額が1000億ユーロに達した。過去12カ月の間に、同社の株価は3.6倍も増加している。この業績で、インディテックスはスペインで最も時価総額の高い企業になるという。ちなみに、1000億ユーロの時価総額を達成している企業は、世界でも80社しかない。
インディテックスのアマンシオ・オルテガ(Amancio Ortega)社長は、世界長者番付で2位の人物だ。同社の重要な子会社は、ザラ(ZARA)やザラ・ホーム(ZARA HOME)、マッシモ・ドゥッティ(Massimo Dutti)、ベルシュカ(Bershka)などである。
ザラは、独立したビジネスモデルで成功したと考えられる。そのモデルとは、在庫を備蓄せず、常に最新コレクションにアップデートすること。ファッションショーで発表された一流メゾンのスタイルをまねし、2週間以内にデザイン・製作をし、店舗で売る。
ニューヨーク・タイムズのスージー・ハンセン(Suzy Hansen)記者は、このビジネスモデルの成功を支えている理由を2つ挙げている。
1つ目は、顧客ロイヤルティを促すこと。なぜなら、アップデートが早いので、顧客が最新在庫を見ようとする気持ちになり、自然と店舗に足を運ぶようになるからだ。
2つ目は、常に在庫が不足していることもあり、顧客が気に入る物はすぐに売り切れる懸念がある。そのため、消費者は「即買い」の決断をしやすいのだ。
いくらコピーとはいえ、ザラの“デザイナー”は、競合企業であるエイチ・アンド・エム(H&M)やフォーエバー トゥエンティーワン(FOREVER 21)などより質のいいデザインを製作している。
そして、その競合企業より頻繁に新アイテムをリリースしている。時には、インスパイアを受けているデザイナーより早くリリースするケースも珍しくないという(つまり、コピーするほうが本家を追い抜いている)。
「ファッション・ミス」は致命傷に
ところで、ザラが巨大小売店とうまく対抗している理由に対し、ゴールドマン・サックス証券のリポートはこう語っている。
「アパレルのメーカーのトレンドをフォローし、そのトレンドと合わせたデザインを製作するチームを持つザラなどのファストファッション企業と違い、一般的なSPA(製造小売)事業者は、リリースより12カ月も前にデザイナーがデザインしたものを販売している」
同リポートによると、1年も早く次年のファッショントレンドを予想するリスクは現在、ギャップやアバクロ、アンテイラー、アメリカンイーグルの業績に悪影響を与えているという。もし、「ファッション・ミス」をしてしまうと、即、セール品として売り叩かれることになり、利益が悪化する。
圧倒的に店舗数が多いにもかかわらず、インディテックスの成長は今なお続いている。今年1月には、最もファッション店舗競争が激しいマンハッタンにおいて、年内に8店を追加で出店すると発表した。
ギャップやH&M、ユニクロなどのライバルを尻目に、インディテックスの独走状態は今後も続きそうだ。