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人間の料理を凌駕する日がくるのか?

一流シェフに匹敵? ロンドン発の「料理ロボット」

2015/8/3

有名シェフの動きをキャプチャー

最近、シリコンバレーでは、レストラン並みの食事を即日デリバリーするサービスが人気だ。

「今日は夕食をつくるのが面倒だなあ」と思えば、Webサイトから食べたいものをクリックすればいい。午後3時くらいまでに注文すれば、夕刻までに届けられる。

しかも、料金は1食あたり10ドル前後という安さ。もうピザやハンバーグで我慢しなくても、怠慢にしておいしい料理が自宅で味わえるのである。

しかし、それを凌駕(りょうが)するようなことが起きそうだ。料理をつくってくれるロボットである。残念ながらシリコンバレーではなく、ロンドンで開発されているものだが、「本当にそんなことできるの?」という構想をビデオで見せている。

それによると、このロボットはキッチンのユニットの上側に取り付けられた2本のアームでできている。アームの先にはロボット・ハンドが付いているのだが、これが5本指で滑らかに動く。そして、材料のバターをフライパンに入れたり、ソースをかき混ぜたりするのである。

モーリー・ロボティクスという会社が考案したこのロボットは、上海やハノーバーで公開され、かなり多くの人々を感心させているようだ。ビデオにあるような滑らかな動きも決して嘘ではなく、まるで人間のような手つきで料理をつくるのだという。

モーリー・ロボティクスの説明によると、この一連の滑らかな動きは、ある有名シェフの実際の料理の様子をキャプチャすることで実現しているという。

動きの一部始終を記録して、それをロボットにリピートさせる仕組みだ。そばに収められている調理器具を取り出したり、鍋の中に塩を入れたりもする。あまりに滑らかで、すっかり見とれてしまうほどだ。

滑らかな動きで調理をするロボット(出所:http://www.moley.com/)

滑らかな動きで調理をするロボット(出所:http://www.moley.com/)

後片付けはしてくれるのか

家事をしてくれるロボットなど決して実現しないというのは、ロボット業界ではもう定説だ。家の中を歩き回り、気がついたら床に落ちている服を拾って洗濯機に入れたりする。掃除もして、そのうえ料理だ。そんないろいろなことができるロボットなど、とても無理、というわけだ。

でも、そのようなロボットが無理ならば、「何かひとつはできる」ロボットからつくるしかない。そして、このロボットがまさにそんな「何かひとつはできる」ロボットということになる。

それにしても、ビデオを見ているといろいろケチをつけたくなる。アームの動きが滑らかなのはいい。だが、そもそもそこに並んでいる材料は、誰がそろえるのだ?

ロボットは、小さなガラスの容器に入れられ、横に整然と並べられた塩やクリームなどをつまみ上げて鍋に入れているだけだ。刺身を切っている画像も一瞬出てくるのだが、切る前にそこに置いたのは誰だ?

料理とは、洗ったり切ったりする下ごしらえが最も面倒なのだが、その部分はどうも人間がやっているようなのである。ロボットは、最後にそうした材料を鍋に入れて混ぜるという、一番楽しいところしかやっていない。

それに後片付けはどうだ? 料理をした後のフライパンや調理機器もロボットが洗ってくれるのかと思いきや、そうした場面は出てこない。みんなが食べ終わった皿も出てこない。どうやら、それを処理するのも人間のようだ。

2017年の製品化を目標

だが、ケチばかりつけていても面白くないので、希望的な要素も探ってみた。こういうことが本当になればいいなと思ったのは、自分の調理の様子もキャプチャしておいて、後でロボットになぞらせることができるというものだ。

先に、有名シェフの実際の調理の様子がキャプチャされて記録されていると書いたが、これは自分でもいい。得意料理をつくる様子を記録しておいて、別の日に今度はロボットにつくってもらってもいい。

モーリー・ロボティクスでは、2000種類のレシピを用意するそうだが、どれを選んでも、シェフの動きでロボットが調理する。2000種類もあれば、飽きることはないだろう。

限られたことしかできないロボットなので満足度は低いが、希望と言えば、こうしたロボット開発から、もっと役に立つロボットのヒントが見えてくることだ。

それに、ひょっとするとロボット用にパッケージ化された食材を売る会社も出てくるかもしれない。また、食洗機や冷蔵庫をアームが届くところに配置するような、ロボット用キッチンが考案されるかもしれない。こんな奇妙なアイデアも、決して頭ごなしに打ち消すべきではないのだ。

モーリー・ロボティクスは、2017年中にも製品化を果たしたいそうである。「こんなロボット付きマンションはどうですか」と、高級デベロッパーらにもアピールしている模様だ。本当に実現すると、ちょっと面白いことになるだろう。

*本連載は毎週月曜日に掲載予定です。