日本のクリエイティブは不振なのか
2015/08/02, NewsPicks編集部
カンヌライオンズ2015報告(5)
日本のクリエイティブは不振なのか
2015/8/2
本連載の第1回の記事で、「広告のカンヌ」の変化が加速し、「仕掛け重視」へと移行していることを伝えた。そして今年、もうひとつの理由で、日本勢の作品が不振だという声が聞こえてきた。「不振」と騒ぐほどではないが、「日本の不振」と感じることも確かにある。今回は、その理由や背景を読み解きたい。
「受賞数の減少が3年続いたら、相談に乗るよ」
今年の日本の受賞数は、ライオンズヘルスとライオンズイノベーションを除いた「カンヌライオンズ」だけで見ると28作品。昨年よりかなり少なく、「日本の不振」を懸念する声もたくさん聞かれた。
この点について、現地でテリー・サベージ会長に直接質問する機会があった。「今年、日本は不振のようですが、その点について何かアドバイスはありますか」との質問に、「みんなにそう言われて困ってるんだよね」とでも言わんばかりに苦笑しながら、テリー会長はこう答えた。「いいときもあれば、悪いときもあるよ。1度だけの不振で一喜一憂する必要はない。もし3年不振が続いたら、相談に乗るよ」。
確かに、過去5年間の日本の受賞数を並べてみると、2010年から順に、29、26、50、33、44。ここに今年の28が加わっても、ことさら「不振」には見えない。さらに世界100カ国にもおよぶ応募国での順位を見てみると、2010年から昨年まで、8位、10位、6位、9位、7位。毎年、そんなに大差はない。
テリーが言うように、今年だけの結果で「不振だ、不振だ」と大騒ぎする必要は、今のところはなさそうだ。
それでも日本の参加者が「不振」を強く感じた理由
しかし、それでも、現地で日本の参加者の皆さんから「不振だね、不振だね」との声が聞かれた。それは、複数の部門で受賞した「話題作」の多くが、自分にとって身近に感じられなかったせいではないだろうか。そのことをもってして、今年だけではなく今後の日本の成績に対しても「暗雲」を感じたというのが現状だろう。
では、なぜ、そう感じたのか。そのポイントは、大きく2つある。
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コメント
注目のコメント
不振ではないけれど、カテゴリの変遷を見ても、ゲームが大きく変わっているんだなとは感じます。
ブランドそのものの声の大きさが問われているという指摘はその通りで、その点、日本はやや不利な気もします。主観ですが、日本って製品やサービスの細かな違いへのこだわりが強い一方で、欧米に比べて「ブランド買い」が少ないんじゃないかと思う時があります(もちろん、京都のゲーム会社のように、世界に通用するブランド力を持つ企業もあると思います)。
外資系メーカーの人に話を聞くと、「日本は消費者の眼が厳しい」と言います。こだわりが強い日本人に対して、1個の商材単位、1回のキャンペーン単位で差別化すれば、短期的には売上は伸びるかもしれません。でも中長期的には、その企業のファンを作ること、そのためにはブランド強く一貫した自己主張していくことが必要なんでしょう。日本に合った「自己主張の仕方」を、考えていきたいです。記事中にあるように、受賞作品数や国別順位といった量的な観点では、そこまで日本のクリエイティブは不振と嘆く必要はないかも知れないですね。
ただ、質的な違いを見ると歴然とした差を感じてしまいます。
アイディア中心で統合ソリューション的な作品が少ない、テクノロジーの先進性が強調され、"Beyond the screen"化されたものが少ない、ブランテッドなコンテンツはあるが社会課題に紐付いたものが少ない、など。
クリエイティブの場合、コンテクストに合わせたローカライズは重要なためそれでもいいんじゃないのと思う反面、やはり日本企業がグローバル化していく中で、国別にローカライズするだけでなく、グローバル共通で刺さる骨太なクリエイティブも諦めないで追求してほしいと思います。ブランド側の強い自己主張が、コミュニケーションの形や仕掛けを変えれば受け入れられるようになっているというのには驚いた。ブランド側の言いたいこと、伝えたいことと、生活者が受け取りたい、動かされたいと思うことがしっかりマッチすればアリなんだな。ブランド側はいっそう、自社のブランドとは何か? を突き詰めていくことが必須だなぁ。
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