合言葉は「ゲーム・チェンジ」、デザインでも
2015/07/30, NewsPicks編集部
カンヌライオンズ2015報告(2)
合言葉は「ゲーム・チェンジ」、デザインでも
2015/7/30
今年のカンヌで最も聞かれたのは「ゲーム・チェンジ」という言葉だ。デザイン部門も、メディア部門も、サイバー部門も、モバイル部門も、審査委員長たちはこぞって、この言葉で審査基準を語った。広告の役割は、商品の機能や価値を伝え拡散することにとどまらず、人々の生活や行動を変え課題を具体的に解決する「アクティベーション」「ソリューション」へ──。「広告」祭から「クリエイティブ」祭に名前を変えて4年。拡張する広告やデザインの世界をカンヌで追った。
「人の導線や文脈もデザイン」、人を動かすかに焦点
「ゲーム・チェンジ」が際立つ中でも、特に日本の広告関係者が衝撃を受けたのが、デザイン部門の受賞結果だ。
グランプリに選ばれたのは、自動車メーカー・ボルボ(VOLVO)の「LIFE PAINT」(制作:GREY LONDON)。洋服や靴、ヘルメット、自転車などに吹き付けると、車のヘッドライトに反射して白く光るスプレーをメーカーと開発し、ロンドンの自転車店で2000本を試験配布。6万件の問い合わせがあったという。
安全を掲げるボルボは、イギリスで年間1万9000人以上のサイクリストが事故に巻き込まれている現状に対し、車の性能改善だけでなく、自転車に乗る人も巻き込むキャンペーンを展開してメッセージを伝えた。
従来のデザイン部門のような、クラフトマンシップや美しさといった視点から、体験のデザインや人を動かすこと、人々の暮らしを変えることに焦点が移ったことの端的な表れだった。
動画:「LIFEPAINT」 VOLVO UK/GREY LONDON
グランプリを競ったのは、バーガーキングの「PROUD WHOPPER」(制作:DAVID Miami)も同じだ。サンフランシスコのLGBTイベントに連動して限定販売されたバーガーは、虹色の包装紙。食べ終わると、包み紙の内側に「WE ARE ALL THE SAME INSIDE」と書かれている。
審査委員長のアンディ・ペイン(Andy Payne、INTERBRAND)氏は「スタイルにとどまらず、『問題を解決し、社会を良くするのがデザインの役割』という基本に戻り受賞作を選んだ」と説明した。
日本関係者に衝撃、体験に重きが置かれたことへの驚き
だが、日本の広告関係者は落胆を隠せなかった。ここ数年、日本はデザイン部門で良い成績を残してきたが、今年は2409のエントリー中、受賞は11作品。ゴールドは3作品。
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コメント
注目のコメント
モノでの差別化が難しくなり、体験を変える、人を(本当に)動かす。ということが大事になっていることを感じます。「問題を解決し、社会を良くするのがデザインの役割」という審査員長の言葉が印象的でした。
NewsPicksでも「ゲーム・チェンジ」をテーマに連続イベントや連載をしていますが、広告のイベントだと思っていたカンヌでも、今年は「ゲーム・チェンジ」を何度も聞くこととなりました。記事にあるように、今年のカンヌでは「ゲームチェンジ」が重視されていたが、それ自体が目的ではなく、あくまで「手段」の話。広告やクリエイティブ業界も、この数年シビアにビジネス面でのインパクト(収益貢献)を求められるようになり、大きなインパクトを生むには、必然的に小手先の差別化ではなく、「ゲームチェンジ」が求められるようになった、という印象を受けました。
http://biz-journal.jp/i/2015/07/post_10912.html流行る言葉が、IT業界でも、広告業界でも、エレキ業界でも似てきていますね。それぐらい業界の融合が激しいということですしょうか。それにしても、Volvoのクリエイティブ力はなぜかくも高いのか。ぜひ担当チームを取材したいものです。
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