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SNSにおけるFoMO(Fear of Missing Out)を克服する方法

SNSにおけるFoMO(Fear of Missing Out)を克服する方法

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森山 沙耶
デジタルウェルビーイングな社会を心理学から考える森山 沙耶

SNSですぐに反応しなくてはいけないという気持ちや、自分だけ置いていかれていないかという不安に駆られたことはありませんか。こういった気持ちや感覚によってSNSを頻繁に開いたり、使いすぎしまうこともあるのではないでしょうか。

近年の研究では、こうしたSNSにおける取り残されることへの不安として「FoMO(Fear of Missing Out)」が取り上げられています。「SNS疲れ」という現象も日本ではよく話題になっていますが、SNSと適度な距離感を見つけるためのヒントとして今回は「FoMO」に焦点を当て解説したいと思います。

FoMO(Fear of Missing Out)とは

FoMOは2つの構成要素で定義されています(1)。

①自分がいないときに、他の人が価値ある経験をしているのではないかという不安

②ソーシャルネットワーク(SNS)の人々とつながっていたいという持続的な欲求

こうした不安を解消するためにSNSやチャットアプリを頻繁にチェックする行為も含まれます。

FoMOに関連して行われるチェック行動は、自分からスマホで積極的に閲覧しにいくような能動的なものだけでなく、SNS等の通知を通じて、反射的(あるいは受動的)であることも多くあります。

一方で、SNSの通知は自分にとって必要な情報社会の取得や、オンライン上の交流を円滑する上で生活に役立ちますが、一方で、注意力の低下や、仕事や勉強の中断など日常生活に悪影響を及ぼすこともあります。

つまり、FoMOによってSNSの通知を過剰にチェックし、反応することが促されると、本来やるべきことやリアルの対人関係などがおろそかになり、QOLや生活への満足感の低下につながる可能性が考えられます。

出典:Unsplash

不安のメカニズム

FoMOは、強迫症における、強い不安感や不快感である強迫観念を打ち消すために強迫行為を繰り返してしまうこととの類似が指摘されています(2,3)。そこで、そもそも不安はどういう役割を果たしているのか、悪循環に至るメカニズムについて紹介します。

不安な気持ちは、人にとって不快な感覚を生じさせるため、不快な感覚である不安は回避したくなるものです。一方で、不安は人が生きていく上で必要な感情であり、実際に自分にとって危険なことが起こることを知らせるサインの役割を果たし、本来は適応的なものです(4)。しかし、実際に危険がないにもかかわず過度に不安を持つことは適応的ではなく、その不安を回避するために生活に支障が出てしまうことがあります。

FoMOにおいて、SNSなどのチェック行動が維持・増幅されてしまう流れを見てみましょう(下記の図も参照のこと)。「自分だけが情報を見逃しているのではないか」「自分だけがグループチャットに入れてないのではないか」といった不安をなくす・減らすために、SNSを開いてタイムラインやグループチャットを確認します。そうすると、その場では一時的に不安が減ります。しかし、またSNSをしていないときに、不安が生じてくるためSNSを開かずにはいられない、というように悪循環になっていくのです。

不安の悪循環の例:文献(4)をもとに筆者作成

FoMOを克服するには

それでは、FoMOを克服してSNSと適度な距離で付き合うためにはどのようにすればよいでしょうか。

不安のメカニズムから考えると、不安への回避のために行うチェック行動は、SNSの通知といった「刺激そのもの」に反応しているのではなく、刺激に対する自分自身の「主観的な解釈」に反応しているのだとされます。

出来事をいかにして捉えるかは人によって異なり、その人の考え方のクセが影響します。例えば、SNSの通知を見たときに「今は自分のことを優先したいから後で確認しよう」と捉える人もいれば「今すぐ確認しないと友人に嫌われるかもしれない」と捉える人もいるでしょう。

FoMOを感じやすい人は、SNS内で仲間外れにされたり、その人の知らないところで悪口を言われたりしている事例や、新しい情報を見逃して損をした体験など、ネガティブな情報や体験に対して選択的に注目しやすい傾向があるかもしれません。

また、SNSでネガティブな投稿や発信を見ていたり、そういった発言をする人をフォローしていたりすると、タイムラインにも同じような投稿が流れてきやすくなります。そういったSNSの仕組みもさらに自分の考えが強化されやすくなると考えられます。

そうして、SNS内のちょっとした仲間の発言や変化に敏感になり、不安が喚起され、頭の中で「こうかもしれない」「ああかもしれない」と考えてしまい、SNSを開いてチェックしたり、コメントをしたりして不安を回避するということになります。

出典:Unsplash

FoMAを克服していくためには、まずこのようなメカニズムがあることを知り、自分の考え方のクセに気づくことが大切です。普段は通知が来るから自動的に見ているだけと思っていたとしても、立ち止まって振り返ってみると、FoMA的な感情や考えが自らの行動を駆り立てているかもしれません。

そして、自分の考え方のクセは変えていくこともできます。そのための方策として、セルフトークというものがあります(3)。セルフトークは自分の心の中の声のことで、「SNSを開きたい」といった誘惑に対する抵抗力を高め、個人の目標に向けて行動することを動機づけるために有用な方法だと言われています。

例えば「私はSNSをすぐにチェックすることができない 」とつぶやくのではなく、「私はすぐにSNSをチェックする必要がない 」「私は通知をすぐにチェックしないことを選んだ 」と言うことができます。また、FoMOを経験するたびに、「私はXをしない 」と自分に言い聞かせるよう指示します。こうしたセルフトークの言葉は、自分の考え方のクセにも影響し、FoMOの軽減に役立ちます。

また、期待の管理という方法もあります(3)。期待とは、何かが起こると強く信じることです。過去に、相手からすぐに返事を受け取ったり、 「いいね」や「リツイート」を受け取ったりするなどこれまでのSNSでの交流に基づいて、「SNSではすぐに反応することで相手が好意を持ってくれる」など自分自身にとってのSNSにおける期待を形成していきます。

SNSに関わるとき、こうした期待の管理を身につけることも有用と言われています。例えば、他者からの反応を期待せずにSNSに投稿することで、FoMOをコントロールすることができるかもしれません。また、「私はすぐに反応しない」ことを仲間に宣言しておくこともできます。SNSで仲間はずれにされるかもしれないという不安を回避するための例として、SNSのプロフィール欄などに自分の現在の状況、例えば業務や試験で忙しいとか、今は時間が限られているといったことを記載しておくことも挙げられます。

他にも出来そうな対策例として下記があります。

【今すぐできそうな対策例】
●セルフトークを実践する:ソーシャルメディアに投稿するとき、他人からの反応は期待しない。
●期待を管理する:期待するような交流が得られないのは、私だけではない。他者からの交流を期待せずに投稿する、あるいは相手からの反応を期待せずに他者の投稿にリアクションすることで、自分の期待を管理してみる。
●気分を転換する:コーヒーを淹れる、家を掃除する、隣の人と話す、家の周りを歩くなど、オフラインの活動をして気を紛らわすことで、不安をコントロールする。
●考え方を広げる:同じような状況に直面した友人に、自分なら何と言うかを自問してみる。
Alutaybi et al. (2020)

いかがでしたでしょうか。SNSをすぐに開きたくなってしまう人は、まずご自身にFoMOのような感情や考え方が隠れていないか振り返ってみてください。

もし過度の不安や強迫的な考えがあって、自分ではどうにも出来ないという場合は、一人で抱えるのではなく、医療機関やカウンセリングの利用を検討してください。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

引用参考文献

(1)Przybylski AK, Murayama K, DeHaan CR, & Gladwell V. (2014). Motivational, emotional, and behavioral correlates of fear of missing out. Computers in Human Behavior, 29,1841–8.

(2)Elhai, J. D., Yang, H., & Montag, C. (2021). Fear of missing out (Fomo): Overview, theoretical underpinnings, and literature review on relations with severity of negative affectivity and problematic technology use. Brazilian Journal of Psychiatry, 43(2), 203–209. 

(3)Alutaybi, A., Al-Thani, D., McAlaney, J., & Ali, R. (2020). Combating fear of missing out (Fomo) on social media: The fomo-r method. International Journal of Environmental Research and Public Health, 17(17), 1–28.

(4)坂野雄二(2012).不安障害に対する認知行動療法 精神神経学雑誌,114(9),1077-1084.


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コメント


注目のコメント

  • 森山 沙耶
    株式会社KENZAN Digiwell事業部 部長 /JDWA代表理事 臨床心理士・公認心理師

    FoMOとは、取り残されることへの不安です。SNSに過度にのめり込む、依存する背景には、このような心理が働いているかもしれません。SNSとの距離の取り方を考える上で参考になれば幸いです。


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