進撃の中国IT

Uberが中国で展開する「リビング・ライブラリー」

中国新興ITメディアの創始者がUberで車を走らせてみた

2015/6/23
Uber(ウーバー)は中国でもさまざまな話題を提供している。このほど、この「進撃的中国IT」の情報元であるITメディア「愛範児 ifanr.com」(以下、ifanr)の創始者、ウィルソン・ワン(王偉興)が、ウーバーが提唱するキャンペーン「真人図書館 リビング・ライブラリー」にドライバーを務めるというかたちで参加した。「リビング・ライブラリー」とは、人と人との交流を推進することを目的としており、今回のイベントは広東省広州市の著名メディア関係者を集めて行われた。新興メディア創始者であるウィルソンは、その12時間の活動で何を得たのだろうか。

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メディアとウーバーに共通する、「つなぐ」というビジョン

──ifanr.comの設立から7年、公の場にはあまり姿を見せないあなたが、リビング・ライブラリーに参加したのはなぜ?

ウィルソン:ウーバーの経営方法はとても独特だ。ifanrは今、「熱愛するものをつなぐ」というビジョンを掲げており、ウーバーが進めようとしていることもある種の「つなぐ」ことでよく似ている。参加したのは、ウーバーの活動を通じてifanrが、これまで読んでいなかった人も含めて多くの読者に届いてくれれば、と思ったから。

リビング・ライブラリーはメディアと読者をつないで、身近にいる、見知らぬ人をよりストレートに知ろうという、とても面白い企画。ここもわれわれが持っているビジョンと一致する。

──リビング・ライブラリーは、読者に思想のぶつかりあい、人と人の知的交流のチャンスを提供することを価値としている。そこに協力ドライバーとして参加する前に、あなたは乗客との間にどのようなものを期待していたか、そしてその目標は達成できたのか。

ウィルソン:最も知りたかったのは、リビング・ライブラリーというイベントに対する、乗客の感想だった。ウーバーの経営方法にはとても興味を感じており、そのウーバーが大衆にもたらす影響に関心があった。

また、われわれifanrのような新興メディア・ブランドがウーバーのユーザーに影響を与えているのかどうかも知りたかった。さらに、一般消費者がネットの新興メディアをどう見ているのかも聞いてみたかった。

その日はドライバーとして5件のオーダーを担当、自分の目標は達成できたと思う。乗客の1人はハイテク製品が大好きなメイクアップアーティストで、ifanrをよく読むと言っていた。

ガジェット紹介コーナーやモバイルアプリ紹介コーナーの「WeChat」公式アカウントをフォローしてくれているそうだ。コンシューマー製品が大好きで、われわれのターゲットユーザーでもある彼と、その関連話で盛り上がった。

昔ながらのIT業界で働いているカップルも乗せた。彼らはインターネットのエコシステムには参加していないものの、インターネット体験にはとても興味を示したので、毎日新しい物事に触れることができるインターネット業界の人たちを羨ましがっていた。彼らにインターネットに関する情報を提供しておいた。

生活を変えることができるサービスとは

──特に印象に残った乗客は?

ウィルソン:最初に乗せた、エミレーツ航空の乗務員。彼はウーバーをとても気に入っており、日常の外出は完全にウーバー頼みだと言っていた。彼は、生活を変えることのできる、こうしたインターネット関連のブランド活動に積極的に協力したいと話してくれた。

私は、ウーバーは一般ユーザーの生活に溶け込んでいるとはいえ、そのブランドにそこまでの影響力があるとは思っていなかった。結局のところ、ウーバーはただの外出手段だろうと。だが、その手段によって彼の生活はとても便利になった。だから、彼は非常に熱くウーバーを支持していた。

──あなたも以前からウーバーのサービスを利用している。そのあなたが、今回のイベントでウーバーの協力ドライバーになるという体験をした。そんな役割転換でウーバーに対して何かイメージが変わった?

ウィルソン:サービス提供者の喜び、そしてその苦労を身をもって理解した。ウーバーに協力してドライバーを務めた後、より近い距離で人と交流でき、彼らの求めるところを満たすことができるようになり、忍耐強く、また人に気を使うようになったと思う。

ただ、他人にサービスを提供するということは非常に大変なことだった。あの日、一番遠くまで送り届けた乗客は、白雲区の万達広場でピックアップする約束だった。でもその日、広州は豪雨だったために、私が万達広場に着いたときには約束の時間を30分も過ぎてしまっていた。

生計ではなく、人と交流する窓口としてのウーバー

──最近では、余暇に別の人生体験をしたいとウーバーの協力ドライバーに加わるインターネット業界関係者、さらには企業幹部が増えている。今回のイベント参加後に、ウーバーの相乗りサービス「People’s Uber 人民優歩」に参加しようという気になった?

ウィルソン:ええ、そうすれば普段の生活や仕事では出会わない人ともっと近い距離で接触できるから。

──そこでは、一般の協力ドライバーとしてよりよいサービスを提供する? それとも、新興メディア創始者という肩書きで乗客と交流し、関係を深めて事業パートナーを探すのに利用する?

ウィルソン:私にとってのウーバー協力ドライバーという立場は、生計を立てるためではなく、人と交流する窓口。ドライバーとして参加する場合は、自分の会社の価値観や状況を乗客に伝え、もっとたくさんのファンや読者と触れ合えることを期待している。

──ウーバーは広州に上陸して以来、創意あふれるイベントを多く開催してきた。新しいビジネスモデルと新しいマーケティングの典型的な現象となっているが、そこからヒントは得た?

ウィルソン:ウーバーのイベントはハイヤー業務に限られていない。どれも自社サービスをもとに各分野のパートナーと業界を超えたムードづくりや、影響力の拡大を進めている。いつも注目の話題をフォローし、まったく新しい視点を試みようとしていて、SNS上で大きな影響力を持っている。そして、多くの人が喜んで彼らの活動を拡散する。

ITメディアとして、われわれifanrの報道ももっと大衆に近づき、注目の話題に近づけば、さらに多くの共感を呼べるはずで、さらに多くの人たちがそれを喜び、拡散してくれるようになるはず。

また、こうしたブランドのパートナーとして一緒にイベントを行うことで、両者の影響力が拡大する。われわれifanrがウーバーのイベントを受け手に伝え、ユーザーもウーバーの伝播を通じてさらにifanrを知る。ブランドの共同構築とリソースの交換とはこういうことなのだ。

シェアリングエコノミーとクラウドソーシングをさらに活用すべし

──これまで、メディアによるウーバー経営チームについての報道が、ウーバーのネット上のイメージを形成してきた。たとえば、「1都市に3人チーム運営」といった話などがそう。ウーバー広州チームと実際に接触して、ネット上のそんなイメージが実際とは違うと感じたことは?

ウィルソン:今回のイベントでウーバー広州のマーケティングマネージャーにお会いし、またウーバーで働くたくさんのインターン生とも接触した。ネット上でのウーバーの評価は良好で、現実の運営チームも大変前向きにイノベーションを起こしている。それはネット上で伝わるイメージと一貫していた。

──ウーバーは共有経済モデルを利用して、多くの都市で交通効率の向上推進に成功した。あなたがよく知る新興メディア分野で、ウーバーに似た共有経済モデルがネットメディアの運営に与えるヒントとは。

ウィルソン:インターネットが発展するにつれ、新興メディア全体が細分化してしまった。同時に個人個人の時間もさらに細分化している。シェアリングビジネスと同じく、ネットメディアは目下、十分にクラウドソーシングの力を利用できるはずだということ。誰もが細切れの時間を差し出せば、コンテンツのクリエイターとして、より大きな社会価値をつくり出せるはずだ。

(執筆:麦偉琪/ifanr.com、翻訳:古川智子)

*本連載は毎週火曜日に掲載予定です。

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