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金融庁、「製・販」の情報連携促す 顧客本位原則に補充項目
長澤 敏夫株式会社 日本資産運用基盤グループ - 主任研究員 主任研究員
もともとFD原則の6(注3)には、「金融商品の組成に携わる金融事業者は、商品の組成に当たり、商品の特性を踏まえて、販売対象として想定する顧客属性を特定・公表するとともに、商品の販売に携わる金融事業者においてそれに沿った販売がなされるよう留意すべきである。」とあり、想定顧客層を販売会社に伝え、想定通りの販売がなされているか留意するという建付けになっています。また、その情報を受け取った販売会社は、「重要情報シート」を使い、顧客に「商品組成に携わる事業者が想定する購入層」として説明する流れになっています。しかしながら、仕組み債や外貨建て一時払い保険などで、必ずしも相応しい顧客に販売されてこなかった実態を見て、こうした仕組みがワークしていないと金融庁は考え、今回プロダクトガバナンスという切り口で、組成会社・販売会社間の情報連携の強化を求めています。
顧客本位の金融商品開発を 金融庁が原則策定を検討 - 日本経済新聞
長澤 敏夫株式会社 日本資産運用基盤グループ - 主任研究員 主任研究員
「顧客本位の業務運営に関する原則」の対象者は「金融事業者」とされ、もともと金融商品の組成会社、販売会社等広く業態横断的にカバーしているものですが、内容を見ますと販売会社の態勢整備に関するものが多かったという点は否めないかと思われます。これは、当初の金融庁の問題意識が、投資信託の回転売買やテーマ型投信に偏った販売が、国民に資産形成が根付かない要因の一つとなっているのではないかという点にあったためと思われます。今般、原則の改訂を行い、組成会社に関連する事項を加え、さらに、組成会社と販売会社の連携強化を求めるとのことですが、議論の行方に注目したいと思います。
広島銀行、ライバル支店で連携も 業績評価制度の廃止で - 日本経済新聞
長澤 敏夫株式会社 日本資産運用基盤グループ - 主任研究員 主任研究員
以前より広島銀行が支店の業績評価を廃止したことには注目しておりましたが、営業担当者の動きが変わるだけでなく、支店間競争がなくなり、逆に支店間の連携が強化されているというのは、大変興味深いことだと思いました。
自分が銀行の営業店にいたころは、似たような属性を持つ近隣店舗はライバルであり、特に年配者には合併行特有の旧行意識も強く、協力どころか顧客が転居しても他店に移管させず遠距離訪問など非効率的な営業活動を続けていたりして、こんなことをしていて顧客のためになっているのか、顧客が喜んでいるのか疑問に思うことが度々ありました。内部での競争より如何に顧客から選ばれる金融機関になるかの視点での競争が重要かと思います。
ウェルスリードの浜島氏「投資助言も商品仲介も」 IFAの流儀 - 日本経済新聞
長澤 敏夫株式会社 日本資産運用基盤グループ - 主任研究員 主任研究員
ウエルスリードの濵島さんには、昨年弊社でもインタビューさせていただきました。(https://www.jamplatform.com/news/2023/06/09/3933/)
多くのIFA会社がなかなかコミッションビジネスから脱却できないなか、投資助言によるフィービジネスに拘り、商品ではなくアドバイスを売るビジネスを確立させたお話はそこに至るまでの経験談も含め、大変興味あるものでした。
記事にある「いきなり商品を勧めてくる場合は要注意」というのは、全くその通りだと思います。金融商品はあくまで人生の様々な目標を達成するための手段、ツールであって、どのような人生を送りたいのか、そのためにはどのような資産運用プランがふさわしいのかを飛び越えてしまっているからです。
「国が勧めている新NISAには裏があるのでは」お金のプロがいつまでも資産を増やせない人からよく受ける質問
長澤 敏夫株式会社 日本資産運用基盤グループ - 主任研究員 主任研究員
仕事がらみで付き合いのある人と違い、プライベートの場合は、その多くが投資未経験者であり、投資に対する漠然とした思いを、本音で率直にぶつけてくることも多いというのは、非常に共感いたしました。だいぶ前になりますが、同窓会に出席した際、証券会社に勤めていると言ったところ、何か儲け話は無いかみたいなことを聞かれ唖然としたことがあります。記事にあるように全体儲かる投資法なんて無いし、インサイダー情報など仮に知っていても話せる訳がないけど、世間一般の認識は「証券投資=儲け話」のレベルなのだと思い知らされた経験でした。
資産運用立国実現プランの重要な柱として、金融経済教育が国家戦略として進められていますが、興味がない人に対して如何に伝えていくか、自分事として考えてもらうか、というのはなかなか難しいことだと思います。新NISAが始まったことによる投資への関心の高まりを受け、様々なセミナーが開催されているが、中には怪しいものも見受けられるそうです。金融経済教育により投資に踏み出すことも当然重要ですが、怪しいものを怪しいと思い、近づかない、騙されないという行動ができるようになることも併せて重要なことだと思いました。
外貨建て資産の運用、長期視点でコストに目配り 為替と外貨運用(下)金融商品を選ぶ - 日本経済新聞
長澤 敏夫株式会社 日本資産運用基盤グループ - 主任研究員 主任研究員
記事の最後の方に外貨建て保険について書かれていますが、先日金融庁が公表した報告書によると、外貨建て一時払い保険において利益確定の中途解約が増加しており、こうした中途解約した保険の契約期間は平均2.5年で、利回りは解約コストが利幅を押し下げ年率3.6%(円換算後)だったとのことです。本来長期運用が前提の保険ですが、それほど長い運用をしないのであれば、米ドルベースですが外貨定期預金1年で5%前後、外貨建てMMFも足元4%台後半の金利のようですので、こうした商品の方が、仕組みもわかりやすく、流動性に富み、手数料も一般には安いと思われます。
生保協、外貨保険ガイドラインを説明 来週にも全銀協会員各行に
長澤 敏夫株式会社 日本資産運用基盤グループ - 主任研究員 主任研究員
今回のガイドライン改正は、金融庁の外貨建て一時払い保険に関するモニタリング中間報告と同日に公表されたことから、金融庁と擦り合わせを行い、その問題意識を反映したものになっています。
内容を見ると、「顧客の最善の利益の義務化」といった最近の法律改正の反映、想定顧客の明確化や販売後の事後検証並びに他の金融商品とのリターンやコスト等の比較情報の提供などのプロダクトガバナンス関連事項のほか、最近金融庁が問題視しているターゲット型保険におけるフォローアップの際の留意事項、手数料体系と提供役務の合理性などが盛り込まれています。
従前は販売金融機関に対する指摘が中心であったものが、今回の改正は組成会社である保険会社にも拘束力はないものの取組みを促す形となっており、販売・組成の両面から切り込んでいったことが特徴かと思われます。
預金60兆円 大都市が吸引 相続で移動、大手銀争奪 試練の地域金融 - 日本経済新聞
長澤 敏夫株式会社 日本資産運用基盤グループ - 主任研究員 主任研究員
昨年の死亡数は159万人で大相続時代とも言われていますが、それに伴い家計資産の世代間移転と同時に地域間移動が増えているとのことです。地域金融機関としても色々な対策を考えていることかと思われますが、相続人としては生前に親の取引金融機関と面識やコンタクトが全くない場合は義理もないので、解約して自分の取引金融機関に持っていってしまうのはある意味当然かと思われます。また、相続時に親の保有する金融商品を見て、高齢者になぜこんな商品を販売したのだという疑念を抱いた場合も取引の継続は難しいでしょう。
相続資金のつなぎ止めは難しい課題かと思いますが、親の存命中に、例えば金融商品販売時の家族同席の際のアドバイスや、金融ジェロントロジーの知見を活用した見守りサービスの提供などを通じて、安心して取引ができる金融機関として認められ、選ばれるようになれるかがポイントかと思います。
みずほ銀行、業績目標をボトムアップ型に 顧客目線徹底 - 日本経済新聞
長澤 敏夫株式会社 日本資産運用基盤グループ - 主任研究員 主任研究員
トップダウン型の業績評価体系の場合、銀行全体の収益目標額を商品・サービス毎、さらにそれを支店毎に振り分けることになりますが、翌年にはさらに上乗せの販売目標が示されるのが常です。営業現場では、その商品が相応しいと思われる顧客に売りつくしてしまっても、毎年販売目標が来るので、回転売買をするか、本来は売ってはいけないような投資初心者などに販売対象を拡げてしまうことが起きやすく、その一例が仕組み債かと思われます。
現在、金融商品の想定顧客層を明確化して適切な顧客への販売をと当局は求めていますが、記事にあるような業績評価体系の見直しを併せて行わないと、さらに言えば、自行の顧客層に合わせたビジネスモデルの変革が伴わないと、絵に描いた餅になりかねないと思われます。
地銀、「想定顧客」記載方法で苦慮か 外貨保険の重要情報シート 生保協が4月に指針改正
長澤 敏夫株式会社 日本資産運用基盤グループ - 主任研究員 主任研究員
外貨建て一時払い保険の「重要情報シート」における想定顧客層の記載について、設定次第で販売ターゲットが絞り込まれることになると、「自らの首を絞めかねない」(地銀関係者)懸念があるので悩ましいとのことですが、販売対象を絞るための想定顧客層の記述ではなかったのかという疑問が湧いてきました。
生命保険協会では、想定顧客層の記載例として、「まとまった資金を長期にわたり運用しながら、保障を準備したい方」を示したとのことですが、購入後4年以内に約6割が解約となっている販売実態(金融庁調べ)では、そのような記載さえ難しいのでしょうか。
国民の「金融リテラシー」向上のための機構、政府が設立--学びの場を提供へ
長澤 敏夫株式会社 日本資産運用基盤グループ - 主任研究員 主任研究員
昨年「金融経済教育推進機構」の創設に関する国会での議論を見ていましたが、野党は官僚の天下り先とならないかといった質問が中心で、それはそれで牽制という意味はあるのかもしれませんが、如何に国家戦略として国民の金融リテラシー向上を官民挙げて取り組んでいくのか、といった本質的な議論が十分なされていなかったような気がしました。
今回同機構が正式に設立されましたが、金融経済教育については、20年以上その重要性が指摘され様々な取組みがなされてきたものの、国民の間に十分浸透しているとは言えず、多くの無関心層に自分ごととして関心を持ってもらえるような取組みが行われることを期待したいと思います。
外貨建て保険、満期前に6割解約 銀行各行が対応加速へ - 日本経済新聞
長澤 敏夫株式会社 日本資産運用基盤グループ - 主任研究員 主任研究員
外貨建て一時払い保険が購入後4年以内に約6割が解約となっていたとのこと。通常早期解約をすると、解約控除というペナルティが課せられるので、それを上回る評価益が発生していたので解約したのだとは思いますが、運用商品として捉えるのであれば、それほど短期で解約するのであれば果たして保険である必要があったのか、外貨建て債券などと比較した上での保険だったのか、販売姿勢に対し疑問を感じざるを得ません。
2019年8月に金融庁が公表したモニタリング結果では、「18年度の中途解約の比率は全体の2%程度に留まっている」とされ、その後に広まった「目標到達型」の商品設計が乗り換え販売を加速する要因になったと思われます。金融機関ごとに「目標」の設定水準の分布状況を比較出来たら、販売スタンスが明確になるので興味があるところです。
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