富士フイルムホールディングスは古森重隆会長・CEOが退任する人事を発表した。経営トップだった21年間で多角化と業態転換を推し進め、売上高と時価総額を引き上げた。本誌に語っていた「人生最後の通信簿」にはどんな成績が残るのか。語録とともに振り返る。

<span class="fontBold">古森重隆会長・CEO(右)が6月の株主総会を経て退任し、最高顧問に就く。後藤禎一取締役(左)が社長・CEOに就任する</span>(写真=つのだよしお/アフロ)
古森重隆会長・CEO(右)が6月の株主総会を経て退任し、最高顧問に就く。後藤禎一取締役(左)が社長・CEOに就任する(写真=つのだよしお/アフロ)

 「強い組織になった。私がやるべきことは終わったのではないかと感じた」

 3月31日、富士フイルムホールディングス(HD)の古森重隆会長・CEO(最高経営責任者)は退任を決めた理由をこう語った。新型コロナウイルス禍でも、2021年3月期の連結純利益は過去最高となる見通しだ。日立製作所の画像診断機器事業の買収が完了し、富士ゼロックスが「富士フイルムビジネスイノベーション」に社名変更する節目を引き際に選んだ。古森氏は6月に取締役からも退き、最高顧問に就く。

 古森氏が社長に就任したのは00年6月。写真用フィルムの市場がピークを迎えた年だった。3年後には「会社のトップが誰なのかをはっきりさせるため」(以下、特に記載がない場合は古森氏の本誌での発言)に、元社長の大西実氏から代表権を外して古森氏自身がCEOに就任。「『人生最後の通信簿』になるとも思いました。全うできなければ、私の人生にはペケがつく」との覚悟で経営に臨んできた。

売上高5割増、業態を転換

 経営者は第一に、在任期間の業績で評価される。この点で古森氏の通信簿に「ペケ」を付ける人はいないだろう。21年3月期の連結売上高見通しは2兆1800億円と就任時から5割増え、時価総額も大きく伸ばした。写真関連が売り上げの6割を占めていたメーカーは、医薬品や先端材料などを幅広く手掛ける企業へと生まれ変わった。

 ライバルだった米イーストマン・コダックが破綻したのとは対照的だ。「うちの方が多角化における幅と深さがあった」と古森氏は語った。

富士フイルムの事業転換を成功させた
●古森氏の社長就任1年目と退任前年の連結業績
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注:01年と21年でセグメントに含まれる製品は異なる。株価と時価総額は年度末時点で出所はQUICK・ファクトセット
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