ファーストリテイリング傘下のユニクロが、3月12日から全商品を一律約9.1%値下げすることが、日経ビジネスの取材で明らかになった。2016年以来5年ぶりの値下げとなる。同じファストリ傘下のジーユー(GU)も、ほぼすべての商品を同様に約9.1%値下げする。

 消費税率引き上げに伴う特例措置が3月末に終了し、4月から小売業は消費税を含む価格を明示するよう義務付けられる。ファストリは現在、税抜き価格で表示している値札を変えず、本体価格自体を変更することで対応する。その結果、消費者の支払総額は現在より約9.1%安くなる。2000年代前半には「デフレの勝ち組」と言われたファストリが一斉値下げを決めたことは、ほかの消費関連企業にも影響を与えそうだ。

ユニクロの全商品は実質、約9%の値下げとなる(写真:栗原克己)
ユニクロの全商品は実質、約9%の値下げとなる(写真:栗原克己)

 消費税率の引き上げに伴い、2013年10月に施行された消費税転嫁対策特別措置法は、特例として税込み価格の非表示を認めている。だがこの措置が今年3月末で終わることから、小売り各社は4月以降、消費税相当額を含む支払総額が一目で分かるような表示を義務付けられる。

 ユニクロとGUは現在、値札を税抜き価格のみで表示している。このため、例えば現在「3990円」としている商品は、4月以降、消費者が実質支払う「4389円」を表示する値札に付け替えなければならない。「3990円(税込み4389円)」など税抜き価格との併記は認められるが、ファストリは、本体価格を値下げすることで値札に付けた金額を変えず、そのまま税込み価格にした方が消費者にとって分かりやすいと判断したようだ。

 ユニクロとGUでは以前、個別商品の値札は「○○円+消費税」と表示していた。ところが最近、多くの商品は「+消費税」部分の表記がない値札に切り替わっていた。総額表示への対応は水面下で進められていたようだ。

以前の値札では「本体価格+消費税」を表示していたが(上)、最近は金額表示だけになっていた(下)
以前の値札では「本体価格+消費税」を表示していたが(上)、最近は金額表示だけになっていた(下)

業界問わず低価格競争が再燃

 強気の値下げを決めた背景には、新型コロナウイルス禍で広がる景気や雇用の先行き不安がある。加えて、既存店とEC(電子商取引)を合わせた国内ユニクロ事業の売上高が、2020年6月から21年2月まで9カ月連続で前年同月比プラスを維持するなど、ファストリ自体の業績は好調。在宅勤務との相性が良いことや下着などの消耗品を手掛けることが追い風になっており、値下げすることでさらなる取り込みを図る狙いがあるようだ。

 総額表示への対応とは別に、GUは昨年12月、21年の春夏商品を値下げすると発表。全商品の6割を占める女性向けが中心で、例えばワンピースは20年比で最大3割値下げした。総額表示を取り入れている良品計画の「無印良品」は昨秋、衣料品を値下げしたほか、今春、生活雑貨を2~3割値下げすると表明。カインズやコメリなどのホームセンターも昨秋以降、広範な品目で値下げを実施するなど、業界を問わず、低価格競争が再燃している。

 総額表示の義務化を機に、ファストリ以外にも値下げの動きが出るのか、注目が集まりそうだ。

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