仮面うつ病、そして「3.11」/25
毎日新聞
2021/2/21 12:00(最終更新 2/21 13:16)
有料記事
3428文字
- ポスト
- みんなのポストを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から間もなく10年になる。連載1回目に記したように、女優の木内みどりさんは「3・11」を機に政治的・社会的メッセージの発信者となる。私が木内さんに「あの日は何をしていたのですか」と聞くと、予想もしなかった答えが返ってきた。認知症のお年寄りを相手にボランティアをしていたのだという。【企画編集室・沢田石洋史】
原因不明の痛み
埼玉県和光市に和光病院という認知症専門病院(285床)がある。木内さんは2007年から毎月1回ここに通い、認知症患者を相手に詩を朗読したり、紙芝居を披露したりしていた。木内さんはこのボランティアを「言葉のパフォーマンス」と呼んでいた。きっかけは01年にさかのぼる。
当時、小指や右耳の後ろなどにチクチクした痛みを感じて検査を受けても、異常はないと診断され続けた木内さん。インターネットで調べると、「仮面うつ病ではないか」と疑った。この病気は、気分の落ち込みよりも頭痛などの身体症状になって表れるうつ病のことを指す。精神科医の斎藤正彦さん(68)が院長を務めるクリニックを訪れたのは、夫の水野誠一さんの知人がここで治療を受けたことを知ったからだという。木内さんは私のインタビューにこう話した。
「その時、診断してくれた斎藤先生はこうおっしゃった。『あなたにとって仮面うつ病という病名が必要なら、仮面うつ病です。必要なら、お薬も処方します。でも、あなたや家族にとって病名が必要ないのであれば、あなたは普通です』。私は、病名も薬もいりません、と言いました。すると、どこも痛くなくなった。本当にその先生のおかげです」
木内さんは03年、黒柳徹子さんが司会を務めるテレビ番組「徹子の部屋」に招かれた時、…
この記事は有料記事です。
残り2701文字(全文3428文字)